日本製鉄、グリーンスチールのルール整備で健全な市場形成を―経産省研究会

先日シンガポールで開催されたBIRの鉄鋼部門セッションで「グリーンスチール革命」を焦点とした議論が行われたが、国内でも同様の動きがみられる。経済産業省は7日、「GX推進のためのグリーン鉄研究会」をオンライン併用方式で開催し、日本製鉄や大同特殊鋼などの関係企業からのヒアリングを実施した。日本製鉄でグリーン・トランスフォーメーション推進本部長を務める折橋英治常務は、グリーン鉄(グリーンスチール)の市場確立には、「CO2削減価値の見える化」や「ルール面の整備」が必要だと強調した。
(参考記事) 「グリーンスチール」の認知度向上とグローバルな普及の必要性――BIRシンガポール2024 鉄鋼部門
SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みの普及も追い風となり、現在、各国鉄鋼メーカーは独自のグリーンスチールブランドを展開している。グリーンスチールに明確な定義は定められておらず、大きく分けると、①製造プロセスの改善などによる排出削減量を製品に割り当てる方式②脱炭素化技術などで製造された製品の製造プロセスの排出量を表示する方式③電炉で使用する電力に係る排出量を電力証書などで削減する方式――の3方式が挙げられる。
世界各国のグリーンスチールブランド(研究会事務局の提出資料から引用)
同研究会は現在広がりつつあるグリーンスチールの販売に関し、需要家への情報発信の在り方や市場拡大に向けた課題を検討し、今後の政策方針を整理するために設立されたもので、今回で第2回の会合を迎えた。今回のヒアリングを経て、現状を整理するともに今後の会合で検討すべき課題を限定していくことになる。ヒアリングには、日本製鉄や大同特殊鋼のほか、JFE条鋼と住友商事が招かれた。
鉄鋼業界で売上高トップを誇る日本製鉄の折橋常務は、「CO2削減価値を有するも鉄鋼製品の機能自体は変わらないため、削減価値を認めない顧客からの購買行動変化は期待しにくい」と見解を示したうえで、「CO2削減価値」の対価が支払われる健全な市場が形成される政策誘導が重要」と述べた。
市場形成のためのルール整備については、▽「削減実績量」のGX製品評価尺度としての確立▽鉄鋼マスバランス方式を鉄鋼製品のCFP(カーボンフットプリント)に活用できるルールの具体化――などを今後の議題とすることを要求した。また、需要サイドの購入助成をプロセスに含めた政策全体のロードマップの必要性も訴えていた。
一方、大同特殊鋼の丹羽哲也執行役員ESG推進統括部長は特殊鋼ならではの特徴に言及し、「は多くの鋼種、形状で構成されており、原料・製造工程が多種多様である」ことや素材ごとにCO2の排出量単位差が大きく異なることを理由とし、「製品のCFP算定が公平に行われるよう製品別算定ルールが必要」と提言した。
(IRuniverse K.Kuribara)
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