週刊バッテリートピックス 「ノースボルト米破綻」「ホンダが全固体電池ライン公開」など
2024年11月18日~11月24日のバッテリー業界では、北欧電池ノースボルトの米国での経営破綻が大きなニュースだった。欧州電池の旗手的存在だっただけに、とん挫は欧州自動車や電池産業の危機をも浮き彫りにした。同社は経営も混乱している。日本国内ではホンダや東芝、旭化成などの新たな試みが目を引き、比較的明るいムードがあった。
<国内>
●京都で第65回電池討論会開催 BASCの就職フェアも
公益社団法人の電気化学会・電池技術委員会は11月20日-22日、国立京都国際会館(京都市)で、電池技術の学会「第65回電池討論会」を開催した。
会場では、電池業界団体の電池サプライチェーン協議会(BASC)も11月20日-21日に電池産業に特化した就職フェアを開催したBASCとして就職フェアを開くのは初めてだった。
●ホンダ、全固体電池のパイロットラインを初公開
ホンダ全固体電池パイロットライン外観
(出所:Honda 公開資料)
本田技術工業(ホンダ、Honda)は11月21日、栃木県さくら市の本田技術研究所(栃木Sakura)内に建設中の全固体電池のパイロットラインを初公開した。
パイロットラインの延床面積は約2万7400平方メートル。2024年春に竣工し2025年1月の稼働を目指す。電極材の秤量・混練から、塗工、ロールプレス、セルの組み立て、化成、モジュールの組み立てまでの各工程の検証が可能な設備を備えており、バッテリーセルの仕様開発と並行しながら、各工程の量産技術や量産コストなどの検証を行う。
プレスリリース:栃木県さくら市にある全固体電池のパイロットラインを初公開 | Honda 企業情報サイト
●東芝エネ、米社と水素燃料電池を共同開発
東芝傘下の東芝エネルギーシステムズは11月21日、自社ホームページ上で、「米燃料電池システムのニンバス・パワー・システムズ(Nimbus Power Systems、本社:米コネチカット州グロトン)との間で、次世代型純水素燃料電池スタックに関する共同開発契約を締結した」と発表した。バスやトラックなどの大型モビリティや定置用などを対象に、純水素燃料電池スタックの共同開発を行う。
プレスリリース:次世代型純水素燃料電池スタックの共同開発契約を締結 | ニュースリリース | 東芝エネルギーシステムズ
●住友金属鉱山、車載電池用ニッケル正極材工場を1月ごろ稼働へ 中期決算説明会
住友金属鉱山は11月19日、2024年4-9月期決算についての投資家向け説明会を行った。
愛媛県新居浜市で建設中の車載用ニッケル系正極材の新工場について、2025年1月ごろの稼働を予定していると明らかにした。新工場の稼働により、車載用正極材の生産能力を現状の月間約5000トンから2025年度に7000トンに引き上げる。2027年度には1万トンまで拡大することを目指す。
関連記事:住友金属鉱山:25/3期中間決算経営戦略進捗状況説明会 | MIRU
●三井金属、マンガン系正極材量を開発
三井金属は11月19日、レアメタル新溶液を活用したマンガン系正極材料を開発したと発表した。リチウムイオン電池の生産過程でのマンガン溶出やガス発生を克服した。
関連記事:三井金属、レアメタル新溶液材料を活用したLIB材料を開発 | MIRU
●旭化成バッテリー、カナダに新工場
旭化成は11⽉18⽇、電池子会社の旭化成バッテリーセパレータが11月14日にカナダ工場を起工したと発表した。
関連記事:旭化成バッテリーセパレータ 加・ポートコルボーンで湿式セパレータ新⼯場起⼯式開催 | MIRU
<海外>
●ノースボルト米で経営破綻
スウェーデン新興電池のノースボルトは11月21日、自社ホームページ上で、「米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を米国の連邦破産裁判所に申請した」と発表した。
破産申請により、ノースボルトは新たに2億4500万ドルの資金調達が可能になる。同社には現在、手持ち資金約3000万ドルと1週間分の運転資金しか残っていない。
さらに、ノースボルトは翌11月22日、破産法申請に伴うリストラの一環として、創業者のピーター・カールソン氏が最高経営責任者(CEO)を辞任すると発表した。トム・ジョンストン氏が暫定CEOに就く。カールソン氏はシニアアドバイザーとして後見し、取締役としては残る。
関連記事:欧州からの風:November 2024「北欧電池大手Northvolt、米の会社更生法の適用を申請」 | MIRU
プレスリリース(破産法申請):Northvolt files for Chapter 11 reorganization | Northvolt
プレスリリース(創業者辞任):Peter Carlsson steps aside as CEO of Northvolt | Northvolt
●中国、動力電池の鉄道輸送を開始 需要拡大で
中国は11月19日、動力リチウム電池の鉄道輸送を始めた。これまでは海運と自動車輸送だったが、拡大する電池需要に対応した。中国国債放送局(CGTN)日本語版が同日伝えた。
●中国、電池の輸出税還付率を引き下げ 13%から9%に
中国財政省は11月15日、ホームページ上で、「アルミニウムや銅の輸出税の還付を撤廃する」と発表した。太陽光発電製品や電池の還付率は現在の13%から9%に引き下げる。税関申告書に記載の輸出日記載で、12月1日付で発効する。
関連記事:中国、輸出税の還付を撤廃へ 12月1日から、アルミや銅など 電池は還付率引き下げ | MIRU
(IR Universe Kure)
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