欧州からの風#January 2025 「EU、深層岩石層で重要原材料を探査する新プロジェクトを開始」
欧州委員会はこのほど、EUの支援プロジェクトでの下、ヨーロッパおよびその他の地域での深層原材料探査を進める新研究イニシアチブ「UNDERCOVER」を開始したことを発表した。
同プロジェクトは1月1日付けで開始され、期間は3年間の予定だ。参加国は16カ国と多数で、深層地下における重要な原材料の特定に向けた検証を実施する。
フィンランド地質調査所(GTK)が主導するUNDERCOVER(Unified Novel Deep Exploration for Critical Ore Discovery)は、先進的な地下情報と鉱床システムの解析を活用し、鉱床探査の効率化を図ることを目的とし、「EUの責任ある原材料供給への貢献」を目指すものだ。
この共同研究には、フィンランド、フランス、ドイツ、チェコ共和国、ポルトガル、ナミビア、カナダなど欧州だけでなく他大陸からの参加者も含まれており、地質サービス関連業界、大学、研究機関、産業クラスターが名を連ねる。また、フィンランド、ポルトガル、ナミビアでは、ケーススタディが計画されており、他のEUプロジェクトとの協力にも重点を置く。
なおこのプロジェクトでは、従来の探査手法の規模と深さの限界を克服するために、新技術を導入し、リソスフェアスケールの低コスト調査(MTや地震探査(パッシブ)など)、革新的な航空技術を用いた地域規模のマッピング、高解像度の深部浸透性地震および電磁探査手法(圧縮センシングやドローンなど)のコスト効率向上が図られる。
さらに、AIなどの適用により、マルチスケール・複数手法から得られる地質、地球化学、地質年代学データを統合した4Dマルチスケール鉱床システムモデルも作成することになっている。
UNDERCOVERは、2024年に採択されたEU重要な原材料法の要件に対応するため、官民パートナーシップを通じて、ヨーロッパ全域の地域データおよびリソスフェアデータの収集を想定している。これにより、企業は探査プログラムのリスクを低減し、資金調達の可能性を高めることが可能になる。フィンランド、ポルトガル、ナミビアでのケーススタディでは、複数の新たな深層探査ターゲットの特定や、既知の鉱床を持続可能な採掘プロジェクトに転換するための「戦略」を実証することになっている。
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SCHANZ, Yukari
オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。
趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。
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