タングステンモリブデン工業会 再び中国からの供給リスクに備える時代

タングステンモリブデン工業会は16日、大手町で令和7年新年賀詞交歓会を開催した。工業会の山縣一夫理事長(アライドマテリアル代表取締役社長)は年頭挨拶で
「今年は例年よりも眺めの年末年始休暇を過ごされたのではないでしょうか?皆様それぞれ英気を養い、新年の揮毫や抱負を胸に本日はご参集くださっているものだと存じます。
昨年の世界経済については、米国は個人消費が安定し好調に推移しましたが、欧州は停滞が続いており、中国も不動産不況から成長が鈍化しています。
国内経済は設備投資が増え、物価上昇の影響を受けつつも、ゆるやかな回復基調と言えるのではないでしょうか。
年始からのお客様のお話を聞いている中では、25年の回復に期待する声が非常に多いと思いますけれども、現時点ではまだら模様で、相対的にあまり景気のいい話は飛び込んで来ないという印象を持っております。
その中で、先週の機工会の発表がございまして、今年の日本工作機械工業会の売上は、昨年比9%増の1.6兆円という心強い予想が出ています。
景気の回復に期待をしたいと思います。
また、9月から大阪関西万博が開催され、国内外から多数の来訪者でにぎわい、景気回復につながるのではないかと期待しています。
当工業会の主要原料であるタングステンやモリブデンは、御存知の通り中国がタングステンの8割強、モリブデンの4割強をシェアを握っています。
中国は米国が打ち出す先端半導体や製造装置の耐久規制の対抗を意識し、圧倒的なシェアを誇る重要なレアメタルなどの鉱物の輸出規制を次々と行っております。
現時点ではタングステンやモリブデンに関しては、日本に対しては大きな規制対象とはなっていませんが、先行きを注意していく必要があります。
米国ではトランプ大統領の二期目がスタート致しますが、関税を武器に中国をはじめとする各国との摩擦が拡大するリスクがあります。
変化に対する対応力と柔軟性が今まさに求められていると言えます。
一方で変化はチャンスとも捉えられます。
一例を挙げれば、脱炭素や資源対応といったものに対しては、リサイクルの推進というものが新たなビジネスチャンスになるのではないでしょうか。
変化をいとわず常に先を見据え、会員企業の総合力や、今日ご来賓の経済産業省をはじめとした皆様のご支援を頂きながら、変化を乗り越えていきたいと考えています。
当工業会が集計致しました令和6年アミティエの実績では、タングステン、モリブデンとも昨年同期比で重量べースでは100%を超えましたが、製品ではいずれも90%台にとどまっています。用途によりまだら模様となっております。先行きは不透明な状況でございますが、中国、米国、日本など各地域での半導体生産能力の増強は進んでおり、当該用途ではタングステン、モリブデンの需要を牽引する可能性が高いというふうに考えております。
ここで昨年の活動を振り返ってみますと、新たな取り組みとして2つの事を実施致しました。
1つ目は昨年の11月に、約20年ぶりに当工業会のホームページをリニューアル致しました。
会員企業各社のユニークな製品に関する説明や、環境への取組みに関する広告など、盛り沢山な内容となっています。
なにより、当工業会の今後を担う若手や経験豊富なベテランが一緒に議論しながら作り上げる試みとなり、とても良かったという声を聞いております。
2つ目は経費削減の一環として、セミナーと理事会・総会を同時開催した事です。
メリット、デメリットともにあるかと考えますが、それらの検証と今後の進め方についてまた皆様と議論させていただくとともに
このような新たな取り組みを今後も継続していきたいと考えています」と述べられた。
その後に工業会の功労賞、技能賞、技術賞それぞれの表彰式が行われ、OBの方々がかつて仕事で苦労したエピソードを披露した。
会場でも聞こえてきたのは、やはり中国からの供給リスク、トランプ関税で変わる世界市場。何が起きても不思議ではないという予測のつかない現在の混迷を口にされていたのが印象的であった。
(iruniverse yt)
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