ファナック(6954) 25/3Q3決算電話会議メモ ややネガティブ継続
25/3期予想を再増額0.4%減収7.3%営利増に増額、26/3期2ケタ増益期待
株価4695円(1/27) 時価総額46705億円 発行済株995418千株
PER25/3期DO予(31.2X)PBR(2.6X)配当還元率60% 配当利回りDO予1.9%
要約
・25/3Q3は0.4%減収、14.6%営利減と在庫評価で未実現利益減が影響、受注は21.5%増
・25/3期予想を受注回復から再増額し0.4%減収7.3%営利増予想、受注もQ3比Q4増予想
・26/3期FA中心に売上拡大、ロボットも回復期待で増収増益期待も収益性向上は限定的
25/3Q3は0.4%減収、14.6%営利減と在庫評価で未実現利益減が影響、受注は21.5%増
1/27に25/3Q3決算発表、同日電話会議が開催された。25/3Q3は売上高1971億円(同期比0.4%減、Q2比2.2%増)、営業利益349億円(同14.6%減、同18.1%減)、受注高2011億円(同21.5%増、同8.3%増)と、利益が在庫評価、円安も影響し未実現利益が減少し2ケタ減益に。但しBBレシオは1.02と1を回復、緩やかな回復の展開に。
地域別売上をみると、同期比で欧米が減少、日・中・アジアが増加に。米国は526億円(同期比12.5%減、前期比4.2%増)。主力のロボットが359億円(同期比18.9%減、前期比6.5%増)と調整が継続もボトムは脱した模様。欧州は323億円(同期比24.0%減、前期比11.0%減)とロボットが155億円(同期比29.0%減、前期比18.4%減)と低迷した。一方、中国は472億円(同期比28.5%増、前期比8.3%増)。NC化率を高める政策実行に伴い古い設備の廃棄奨励などで補助金政策の実行が寄与もQ2ピークに一服しFAが170億円(同期比80.3増、前期比9.1%減)、ロボマシンは147億円(同期比83.0%増、前期比13.6%増)と盛り上がりが継続した。一方でロボットは150億円(同期比18.2%減、前期比33.4%増)と在庫調整が進捗し、Q2をボトムに回復。日本は291億円(同期比9.9%増、前期比0.6%減)とロボマシンが35億円(同期比16.1%増、前期比24.4%増)と回復も、その他は同期比増、前期比減と力強さにかける。
製品別売上では最大部門のロボットが793億円(同期比18.8%減、前期比0.4%増)と在低迷が続くものの、在庫の適正化でQ2がボトムとなっている模様。地域別では米国が359億円(同期比18.9%減、前期比6.5%増)、中国150億円(同18.2%減、同33.4%増)、一方で欧州155億円(同期比29.0%減、前期比18.4%減)とEVなどの不振もあり厳しい状況が続いている。
FAは480億円(同期比16.3%増、前期比6.7%減)と、24/3Q3ボトムに回復も、テンポは緩やかで、Q2比減で再度500億円割れに。中国は170億円(同80.3%増、同9.1%減)とNC化促進政策の効果などで上伸もその効果が薄れつつあり、日本も116億円(同11.6%増、同0.7%減)と工作機械受注ボトムうちも力強さがない。ロボマシンは359億円(同期比39.5%増、前期比29.3%増)と50%弱を占める中国が147億円(同83.0%増、同13.6%増)と中国のNC工作機械化促進が寄与、但し効果は一時的の懸念もあるまた中国以外アジアが111億円(同53.9%増、同73.3%増)と、低迷からの回復が寄与している。
受注面では、地域別に欧州を除き同期比増加も前期比では日本だけ減少。中国は496億円(同期比47.3%増、前期比7.0%増)と、24/3Q3ボトムに回復、同期比ではNC化促進などでFA、ロボマシンなどが伸長、EVの伸び悩みなどでロボットの不振が影響で伸び悩みも。ただBBレシオは1.05と3四半期1を上回っており、政府の支援策もあり大きく落ち込む状況にはないとみられる。米州は533億円(同期比12.7%増、前期比18.3%増)と、 23/3Q4以来のBBレシオ1回復となり、省人化需要の強さ、トランプ政権の国内回帰などのプラス影響も多少あるかもしれない。欧州は332億円(同13.2%減、同2.9%増)と、設備投資の伸び悩みが影響、BBレシオは23/3Q3以来1を回復したが低水準にとどまっている。日本は275億円(同期比8.7%増、前期比23.3%増)、BBレシオが23/3Q4以来の1超えに。省人化投資などで同期比受注増となっているが力強さにかけ、再度300億円割れに。
製品別受注ではロボットが817億円(同期比8.7%増、前期比23.3%増)と在庫調整が進展、中国でのEV投資の減退影響、欧米でも自動車向けの受注一服などの中で在庫調整も遅れていることが響いている模様も、ボトムは確認できた模様。なおロボット工業会の統計で業界との比較では、ファナックは業界数字を下回って推移、7~9月では工業会受注が同期比9.4%増に対し劣後、10~12月も工業会33.2%増に対し8.6%増でしかなく、同社は生産調整の影響が依然として出ているとみられる。FAは473億円(同期比33.5%増、前期比4.3%減)とQ2に早くも伸び悩み、Q3も状況が変わっていない。中国のNC化推進特需が一服、国内工作機械受注も伸び悩みがみられるなどが影響している模様。またBBレシオも25/3Q2で再度0.96と1割れとなり、Q3も0.99と、回復の遅れが気がかりな状況にある。
利益面では円安に折り、在庫調整の影響が長引き未実現利益による減益影響が116億円減となっており(内訳で約半分とのこと)これが全体に大きく響いているが、この影響を除くとQ2とQ3の総利益率はQ2が22.1%に対しQ3は23.6%と収益性が改善している。これは収益環境の厳しい中で効率化アップや固定費抑制などの効果が出ていることなどが寄与したものとみられる。
25/3期予想を受注回復から再増額し0.4%減収7.3%営利増予想、受注もQ3比Q4増予想
会社側では受注の回復状況などを考慮、上期段階では下期を7/29のQ1時予想で踏襲していたものを見直し、再上方修正した。具体的に25/3期予想を売上高7919億円(7/29予想比41億円増額、0.9%減)、営業利益1523億円(同15億円増額、7.3%増)予想とした。部門別、市場別予想の開示はないが、ロボットは中国での在庫調整の進展で緩やかな回復、FA、ロボマシンは中国の政策支援効果などが継続するとみられる。利益面では増収効果に加え、下期に新製品投入効果もあるとみられ、在庫調整の進展もあり25/3期収益は多少の再増額での着地が期待される。
26/3期FA中心に売上拡大、ロボットも回復期待で増収増益期待も収益性向上は限定的
26/3期は自動車ではEVに対する設備投資の見直しなどの影響が懸念される一方で、HEVや高効率エンジン車等への投資が期待でき、緩やかな設備投資増が見込まれる。加えて半導体設備投資の本格回復、米国ではトランプ政権によるアメリカファーストでの省人化投資が高まる期待もあり、ロボット需要の回復が見込まれる。FAは中国の工作機械NC化率75%への推進特需が一巡も、国内の工作機械受注の回復が下期には見込まれ、欧州は 低調懸念も、全体では拡大基調となろう。ロボマシンも工作機械受注の回復が期待され、全体では増収となろう。なおFAの拡大は汎用機クラスについて新興国中国メーカーなどの国産化影響などもあり急回復は見込みにくく成長の中心は米国を中心とするロボット事業となる見通し。同社ではロボットについて新機種、新機能の製品をこの1年でも多数投入、特にシェアの高い米国ロボット事業での更なる拡大を目指しており、工業会2025年予想の4.8%増以上の伸びを確保しよう。また FAについては日本の工作機械工業会の2025年工業会予想が7.9%増としており、回復を見込むも、力強さにかけると見られる。利益面ではロボットは多品種投入となることもあり、ロボットの売上高比率が高まりでMIX改善は進まないとみられる。売上拡大は見込めるものの、総利益率の改善は小さいとみられ、売上増に伴い収益拡大が期待も、収益性の向上は限定的となろう。
株価は7/29の25/3Q1決算発表時に通期増額としたことで7/30に4549円まで戻したが相場急落で8/5に一気に3624円まで暴落、その後、10/25での増額修正を受けて上昇、1/27の再増額で昨年高値4745円を抜いたところにある。現在、会社再修正25/3期予想EPS148.47円に対しPER31.6倍は、同社高値平均PER33.8倍に近く、プライム電機平均PER23.7倍に対し割高であり、ロボットの安川電機の19.2倍、FA総合の三菱電機17.6倍と比較しても割高感がある。日本を代表するハイテク株ではあるものの、CNC装置で稼ぎ出した高収益体質から、ロボット売上構成比の高まりでMIX変化から収益性の大幅回復は期待しにくい。同社の成長スピードは半導体製造装置メーカーの成長スピードに劣後すると判断、25/3期再増額修正もややネガティブとする。
*安川(6506)、三菱電機(6503)、東京エレク(8035)との比較
(H.Mirai)
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