2月の世界経済 米中政策見極めで様子見、金属は足踏み続くか・野村証券の高島氏
2月の世界経済は様子見姿勢を強いられそうだ。米国はトランプ大統領が関税政策を打ち出しては延期するなど政策が定まらない。一方、中国は3月に全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の開催を控え、新たな景気振興策は打ち出しにくい。野村証券金融経済研究所経済調査部コモディティ調査の高島雄貴エコノミストに見通しを聞いた。
■米中の関税応酬、電話会談の余地残す
米国は2月4日からカナダとメキシコに25%、中国に10%の輸入関税をかけるとしたが、カナダとメキシコについては実施を30日間延期した。一方、関税が発効した中国は報復関税として、米国からのタングステン、テルル、モリブデン、ビスマス、インジウムの輸出を規制し、米国原産の石炭と液化天然ガスに15%、原油、農業機械、ピックアップトラックに10%の追加関税をそれぞれ課すと発表した。
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トランプ米大統領は中国の習金平国家主席との電話会談の機会を探っているとも伝わり、こうした関税合戦の行方は見極めにくい。高島氏は「多くの国や機関が様子見の姿勢を取っている」と説明する。
中国の景気動向も見極めにくい。春節(旧正月)の影響で2月は一部経済指標が発表されないため、経済の実態がつかみにくい。高島氏は「政策が発表されるなら3月の全人代でとなるため、2月中に大型の景気振興策を発表することは考えづらい」とし、内需振興などの政策面で2月中に大きな動きは期待しにくいとみる。
■銅金ニッケル足踏み、アルミのみやや反発か
金属相場も多くは足踏みが続きそうだ。中国景気に改善の兆しが見えない中、「中国需要の多い銅や鉄鋼補助剤であるニッケルなどは下押し圧力が続く」(高島氏)。電気自動車(EV)の販売失速も重荷で、コバルトなども需要の先行きは見通しにくい。高島氏は「コバルトの生産国であるコンゴ民主主義共和国(DRコンゴ)で内戦が激化しているが、これはコバルトの生産地からはやや離れているようだ」と話し、供給への影響は薄いとの見方を示した。
過去1年間のLMEでの銅とニッケル価格の推移($/ton)
唯一、値上がりが予想されるのはアルミニウムという。高島氏は「ボーキサイトが足りなくなっているようだ」と指摘した。実際、アルミは銅やニッケルに比べ堅調が目立つ。
過去1年間のLMEアルミニウム価格の推移($/ton)
一方、足元で最高値更新が続く金相場については高島氏はやや慎重な見方だ。同氏は「金はインフレとドル相場が価格変動要因になり、ドルとは逆相関関係にある。米ドルが高ければ投資資金は好調な米経済に流入し金の下押し圧力となるが、現時点では米ドルはまだ他国通貨に対して高値圏にある」と説明し、「2月中に節目の$3000/tozを突破するほど、短期に急激な値上がりはしないのではないか」と話した。
過去1年間のNY金相場の推移($/toz)
(IR Universe Kure)
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