レアメタル系スクラップ市場近況2025#3 全体的に下落継続、米中対立にも注視を
原料相場下落の影響を受けて、下げ幅は少ないものの下落傾向にあるアイテムが多くみられた。チタン類をはじめ、さらなる下降が見込まれるものもあり、動向を注視していく必要がある。また、トランプ政権の動きも気になるところだ。中国政府はアメリカの関税への対応措置として、関税上乗せとともに重要鉱物の輸出規制強化を2月に発表した。今後、米中対立が激化すれば、中国は鉱物の輸出をさらに制限する可能性があり、日本企業の経営に影響が及ぶ可能性も否定できない。
【チタン】
・純チタン板スクラップ(新断)「⤵」:340~360円/kg。前月から10円下げ
・合金6-4チタンダライ粉「⤵」:120~140円/kg。前月から20円下げ
・合金6-4チタンスクラップ「⤵」:170~180円/kg。前月から20円下げ
・フェロチタン「⤵」:実勢はキロ当たり5.6ドル/kg前後。前月から約0.1ドルの下げ
全体的に相場が続落したが、依然として弱含み状態にある。合金6-4チタンスクラップでは前月に比べ下げ幅が10円増となったが、直近1カ月以内でさらに一段階下落する可能性も高いようだ。
【工具類】
・ダイス鋼MIX「→」:25円/kg。前月から横ばい
・SKD61「→」:55円/kg。前月から横ばい
・ハイス(ミックス)「→」:360~390円。前月から横ばい
・ハイス(一品もの)「→」:290~320円。前月から横ばい
・超硬スクラップ「→」:3000~3400円。前月から横ばい
工具類は軒並み横ばい傾向が続いている。流通筋によれば「市場が全然動いていない」という。1月上旬に200円の上昇をみせた超硬スクラップも以降は継続して横ばい状態にある。
【モリブデン系】
・酸化モリブデン「⤵」: ポンド当たり21ドル前後で推移するも下げ含み。仲値は前月から0.2ドル下落して20.85ドルが目安。
・フェロモリブデン「⤴」: 50ドル/kg前後で推移。仲値は50.75ドルが目安。前月上旬から比較してやや上げ含み。
・モリブデン新切れスクラップ「→」:3350~4350円/kg。前月から横ばい。
酸化モリブデンは前月から比べるとやや下降、フェロモリブデンは若干の上げ傾向に。モリブデン新切れスクラップも前々月からの横ばい状態が続いている。
【タンタル】
・タンタライト「⤴」:84~86ドル/lb。前月から8ドルの上げ
・金属タンタル「⤴」:301~311ドル/kg。前月から5ドルの上げ
・五酸化タンタル「⤵」:253~279ドル/kg。仲値は前月から約15ドルの上げ。
・タンタルスクラップPIN「→」:高値28,000円/kg、安値26,000円/kg。前月比横ばい。
・タンタルターゲットスクラップ「→」:20,000円/kg前後。ほぼ横ばい。
全体的には大筋で横ばい傾向にある一方、五酸化タンタルは1月上旬に大幅に下降した相場がプラス転換。復活の兆しがみられる。タンタライトも2月中旬から上昇傾向にある。
【ステンレス 、耐熱系】
・SUS304「⤵」:150~160円。前月から5円下げ
・SUS310「⤵」:380円/kg前後。前月から10円下げ
・SUS316「⤵」:235~285円。前月から5円下げ
・SUS330「⤵」:495~445円/kg。前月から5円下げ
・SUS430「→」:66~74円/kg。前月から5円下げ
・42アロイスクラップ「⤵」:640~700円/kg。前月から30円下げ
ニッケル相場の影響を色濃く受け、全体的に下落した。関係筋によれば、304はさらに下がる見込みとのこと。モリブデンを含む316は304と比べると今後の変動は少ないとみられる。
【ハイニッケル合金系】
・インコネル718「⤵」:660~890円/kg。前月から10円下げ
・インコネル625「⤵」:930~1030円/kg。前月から10円下げ
・インコロイ800「⤵」:475~515円/kg。前月から5円下げ
・ハステロイX「⤵」: 695~775円/kg。前月から5円下げ
・ハステロイC「⤵」: 880~980円/kg。前月から10円下げ
下落幅は縮小したもののマイナス傾向が続く。その中でもインコネル625やインコロイ800、ハステロイXなどの需要は堅調で、モノが入れば捌ける状況にあるという。
【その他】
・キュプロニッケル(9/1)「⤵」:650~720円/kg。前月から10円下げ
・キュプロニッケル(7/3)「⤵」:720~760円/kg。前月から10円下げ
・コバール「⤵」:265~325円/kg。前月から10円下げ
・カーペンタ―「⤵」:325~385円。前月から5円下げ
・ステライト(Co50%他)「⤵」:315円前後。前月から5円下げ。
銅やニッケル相場の影響を受けて、5~10円の下げとなった。LMEコバルト(US$/ton)相場をみると、1月末に大幅に下落したが、2月25日付近からプラス転換。上昇傾向がみられており、コバルトを含むアイテムの相場回復も期待される。
(IRuniverse K.Kuribara)
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