東急 鉄道事業で発生する使用済みケーブルリサイクル研究開始
~銅と被覆材の循環により、廃棄物を減らす仕組みの確立を目指す~
国立大学法人東北大学(以下、東北大学)、東急株式会社(以下、東急)、東急電鉄株式会社(以下、東急電鉄)、三菱マテリアル株式会社(以下、三菱マテリアル)の4者は、3月17日、鉄道事業で発生する使用済みケーブルのリサイクルに関する研究開発を2025年4月1日(火)から開始すると発表した。なお同研究開発は、独立行政法人環境再生保全機構(ERCA)の令和7(2025)年度環境研究総合推進費に採択され、2028年3月までの3年間実施するもの。
同研究開発では、現状廃棄されている東急電鉄の電気設備のケーブルや線路脇の信号ケーブルをモデルケーブルとして、東北大学が主導して三菱マテリアルと共に開発してきた湿式剥離法の剥離原理(溶媒膨潤+衝撃付与)※を応用し、銅線と被覆材に剥離する新たな湿式剥離法を開発する。今回対象となるケーブルは、鉄道独自の外環境に耐えられるよう強度に優れている一方で、被覆線は細く、既存の被覆線処理技術では銅線と被覆材それぞれを高純度に選別することが困難なため、使用済みケーブルからのリサイクル可能な資源として回収できる素材は限定的だ。東急電鉄では、このような使用済みケーブルが年間で平均約10t発生している。同技術により回収した銅線と被覆材を使用して、東急電鉄をはじめとする、鉄道業界で使用する再生ケーブルとしてリサイクルすることを目指し、さらには、リサイクルによるCO2排出削減量および経済効果を定量化することで、将来の鉄道業界への波及効果を検証する。
同研究開発は、被覆線の湿式剥離法に関する研究・技術開発を先導してきた東北大学、脱炭素・循環型社会の実現に向け2022年3月に「環境ビジョン2030」を策定し、2030年までに廃棄物量10%削減を目指す東急、鉄道事業を通じて脱炭素・循環型社会の実現に向け、事業特性を活用した新たな価値創造・貢献などにより環境・社会課題の解決を目指す東急電鉄、銅をはじめとする非鉄金属の高度な製錬およびリサイクル技術を有する三菱マテリアルの、4者連携により実現した。
同研究開発を通じて、鉄道事業のケーブルが再生ケーブルとしてリサイクル可能となり、将来的には鉄道業界、さらには他業界にも展開することで、廃棄物を減らし循環する仕組みの確立を目指す。
※ 湿式剥離法の剥離原理(溶媒膨潤+衝撃付与):有機溶媒にケーブルを浸漬すると被覆材が膨張(膨潤)。その状態で金属などの小さなボールで衝撃を与えることで、銅線および被覆材を損傷させることなく、分離・剥離させることを「湿式剥離法」と呼んでいる。
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■本研究開発 詳細
(1)研究開発ステップ
期間:2025年4月1日(火)~2028年3月31日(金)
(2)目的
現状廃棄されている東急電鉄の電気設備のケーブルや線路脇の信号ケーブルをモデルケーブルとして、東北大学が主導して三菱マテリアルと共に開発してきた湿式剥離法の剥離原理(溶媒膨潤+衝撃付与)を応用し、銅線と被覆材に剥離する技術の確立と、同技術により回収した銅線と被覆材を使用して、東急電鉄をはじめとする、鉄道業界で使用する再生ケーブルとしてリサイクルすることを目指す。
(3)各機関の役割
■湿式剥離法の剥離原理 概要
東北大学ではこれまでに、自動車由来のワイヤーハーネスに使用されている細い電線を対象に、湿式剥離法を開発してきた。ワイヤーハーネス(WH)に使用されているケーブルの被覆材には主にポリ塩化ビニルが使用されている。同技術では、被覆材を適切な有機溶媒かつ適切な条件下において浸漬することで膨潤させ、銅線と被覆材の間に隙間を形成する。
続いて、膨潤したケーブルに対して、ボールミルなどにより適切な衝撃力を与えることで、銅線および被覆材の過度な破砕を抑制しながら銅線と被覆材を高精度に剥離することが可能になる。湿式剥離法はこれまでに、膨潤処理後に乾式ミルにより剥離する2ステッププロセス、膨潤と剥離を湿式ミルにより同時に行う1ステッププロセス、の2種類のプロセスを確立している。同技術により回収された銅線および被覆材には、それぞれの破砕物の混入が抑制されるため、回収される銅の高品位化、回収された被覆材のリサイクル活用が期待できる。
(IR universe rr)
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