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ニッケルブログ#19 ニッケル・ラテライト鉱の高圧酸浸出処理

 

 電池市場に混合水酸化物(hydroxide)やニッケル・コバルト混合硫化物(mixed sulphide precipitates)などのニッケル中間製品を供給するためその生産能力を増強している高圧酸浸出法(HPAL)を見て行きます。この中間製品は電池生産に必要な純硫酸ニッケルを製造するのに使われます。

 

 HPALの起源は70年ほど前にさかのぼりますが、この技術はニッケルベース電池の需要に応えるためますます広く普及しています。

 

 HPALの概念はシンプルです:硫酸を加え、温度を上げて鉱石全体を溶かします。余分な硫酸を中和し、不要な金属を除去し、目的とする金属を回収します。

 

 

浸出工程

 浸出は約250℃の高圧の下で行われ、鉱石中の鉄及びアルミのほとんどは残渣中に残り、一方有価金属は溶液中に溶け出します。この浸出工程は高温で酸性が強く、極めて激しいものであり、例えばチタンと炭素鋼を爆着(この方法により、腐食に対する耐性を持つ高価なチタンの薄い層と、強度を確保するために比較的安価な炭素鋼の厚い層が組み合わさります)したような高性能な素材が必要とされます。

 

 湿ったラテライト鉱は水と混ぜられ粗い物質を除去するスクリーンにかけられた後、粘性はありながらもまだポンプ輸送可能な流体になるように濃縮されます。それからこのスラリーは反応温度まで加熱されます(加熱エネルギーの90%以上はスラリー中の固形物ではなく水分に使われます)。加熱のコスト削減のため排出されるスラリーは大気圧まで徐々に減圧され、発生するフラッシュ蒸気(再蒸発蒸気)はこの工程の予熱源として再利用されます。

 

余剰酸の中和

 金属回収の前に余分な酸は粉砕石灰石を添加して中和し石膏残渣とします。残渣の混合物は通常向流デカンテーション(CCD)により洗浄し尾鉱として堆積されます。標準の操業基準では、尾鉱は加工工場の隣接地にある技術的管理された尾鉱管理設備に濃縮スラリーとして堆積され、固形物の沈殿により分離された流体がリサイクルされます。

 

 向流デカンテーション(CCD)洗浄とは複数の連続するシックナーでの洗浄により残渣から有価物を含む溶液を洗い流します。各々の段階で前のシックナーから来るスラリーは次のシックナーの洗浄液と混合され,濃縮されて次に送られます。

 

 最終段階では水または貧液で洗浄され溶液は工程をさかのぼり固形物はさらに下工程に行きます。

 このプロセスでは有価物の濃度が各段階で約50%ずつ減少するため、6または7回の洗浄が終了した時点では97%以上の有価物が回収されます。

 

金属の回収

 

 酸が中和された溶液にはニッケルとコバルトが主に含まれ、亜鉛及び銅が少量、またかなりの量の鉄、アルミ及びマンガン、さらに高濃度のマグネシウムが含まれます。銅及び亜鉛は経済価値はそれほどない(通常総価格の2%以下)ため除去され、廃棄物または副産物として処理されます。ニッケル及びコバルトはいくつかの方法で回収可能です。

 最初のHPALプラントは1950年代後半にキューバのモア・ベイに設置されました。そのプラントとその後に続くいくつかの施設では、水素硫化物を使用して混合硫化物中間生成物(MSP)を沈殿させ、これを精製してクラス1ニッケルにする方法を採用しました。MSPは約50~55%のニッケルとコバルトを含む湿った粉末として、そして、非常に純度が高く、密度が大きく、沈降性にも優れているため、輸送するのに適しています。

 この10年でニッケル・コバルト混合水酸化物(MHP)の人気が非常に高まりましたが、このプロセスは苛性ソーダまたは水酸化マグネシウムを使用して低品位中間体を沈殿させます。この中間体はニッケルとコバルトを約40%含みますが含水率が非常に高く(重量で約50%)、そのため出荷製品のニッケルとコバルトの重量は約20%に過ぎません。

 

排水処理

 有価金属すなわちニッケル・コバルトが回収された後は、かなりの廃水が残りますが、これには多量のマグネシウムと一定量のマンガンが硫酸塩として含まれます。節水のため一部はリサイクルされますがこれによりマグネシウムのレベルは上昇し、最終的にはマグネシウムを生産工程から除去するために排出する必要があります。

 乾燥した気候ではこの廃水は蒸発し、蒸発池で金属硫酸塩は結晶化されますが、一方熱帯気候では廃水は海に放出されます。放出前に、クロム、マンガン、ニッケル及びコバルトなど規制の対象となる金属は許容レベルまで除去する必要があります。

 

新世代HPAL

 HPAL設備は操業開始時期にかなりの問題に直面することがあり、その多くはチタンのライニングされたHPALオートクレーブや、ゴムやレンガのライニングの容器といった多層構造材料を必要とする過酷な条件や、複数の工程がすべての段階で同じ速度で作用する必要があるなどに起因しています。新世代のこれら設備がインドネシアで始まっていますが、今まで一連の設備の建設を通して得られた各社の経験が、ついに初日からうまく稼働することに繋がったように見えます。

 HPAL施設の環境問題は、ロータリーキルン電気炉(RKEF)とは大幅に異なります。

 HPALは、特に現場で硫酸が製造される場合には温室効果ガスの排出が比較的少なくなります。しかし恒久的な貯蔵を必要とするかなりの量の処理工程の残渣が生じるのは事実です。貯蔵はリスクを最小限にとどめる方法でできますが、HPALの残渣の影響を完全に無くすには処理工程に対しサーキュラーアプローチ(循環手法)を採用し残渣を鉄鉱石や骨材など異なる材料に再加工することしかありません。これは既に検討されていますが化学反応が複雑なためなかなか困難です。

 

 

ニッケル協会とは

https://nickelinstitute.org/jp/

 ニッケル協会は、全世界の一次ニッケル生産者から成る世界的な団体で、会員全てを合わせれば中国を除く世界の年間ニッケル生産量のおよそ85%を占めます。協会の使命は適切な用途でのニッケルの利用を促進、及び支援することです。ニッケル協会はステンレス鋼など現行及び新規のニッケル用途の市場を成長・支援を行うと共に、公共政策と規制の基本として、健全な科学、リスク管理、社会経済的便益を促進しています。ニッケル協会の科学部門であるNiPERA Inc.を通じて、人の健康と環境に関係する最先端の科学研究も実施しています。ニッケル協会はニッケル及びニッケル含有材料に関する情報を集約する拠点であり、オフィスをアジア、欧州、北米に設置しています。

 

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