ダイセキ(9793) 25/2期WEB説明会メモ ニュートラル継続
25/2期単独は最高益更新もダイセキ環境ソリューション反動減で2.7%減収3.3%営利減
株価3640円(4/14) 時価総額1856億円 発行済株51,000千株
PER(26/2期DO予18.6X)PBR(2.08X)配当(26/2予)72円 配当利回り:2.0%
要約
・25/2期単独は最高益更新もダイセキ環境ソリューション反動減で2.7%減収3.3%営利減
・26/2期4.0%増収9.6%営利増で最高益予想もトランプ関税問題等で収益未達懸念
・中計目標として28/2期に売上高810億円、営利180億円目指す
25/2期単独は最高益更新もダイセキ環境ソリューション反動減で2.7%減収3.3%営利減
産業廃棄物処理総合大手で廃液・廃油の中間処理、リサイクル事業が柱で、子会社に土壌汚染除去、鉛バッテリーリサイクル等を子会社で事業展開。4/8に25/2期決算が開示され、4/9にWEB決算説明会が実施された。25/2期は、売上高673.04億円(期初計画比17.04億円上振れ、1/6修正予想比13.04億円上振れ、2.7%減)、営業利益143.18億円(同3.18億円上振れ、同2.82億円未達、3.3%減)、経常利益148.30億円(同7.30億円上振れ、同1.70億円未達、4.0%減)、税引利益93.07億円(同6.07億円上振れ、同0.07億円上振れ、1.6%減)となった。単独で増額から1/6に増額修正したものの、大阪油化TOB不成立などでコスト増もあり、単独最高益更新で売上上振れながら、利益は営利、経常利益で若干未達に。
ダイセキ単体の25/2期収益は、売上高384.83億円(期初計画比10.17億円未達、3.5%増)、営業利益107.59億円(同0.41億円未達、2.8%増)と、鉱工業生産が伸び悩む中でマーケットシェアを0.3ポイントアップさせるなどで計画若干未達も4期連増売上、営利、経常最高収益更新となった。
売上面では国内鉱工業生産が伸び悩む中でCDP(気候変動をはじめとした環境問題について、企業が取り組んでいる情報を開示するための国際的な組織)で高格付けを得ている企業を中心にシェアアップがなされ、リサイクル燃料などの売上拡大が寄与し、最高収益更新となった。
リサイクル率並びにリサイクル製品の受入、出荷推移では、廃棄物受入量は鉱工業生産の伸び悩みで111万t(0%増)と変化なくリサイクル率もほぼ同じ水準で推移。但しリサイクル製品においてはリサイクル燃料の出荷量が27万t(17%増)、再生重油4.8万t(3.5%増、金額25.68億円)、補助燃料23.2万t(20.6%増、金額18.72億円)と好調に推移した。
次に事業所別売上推移では最大事業所の名古屋が105.94億円(8.1%増)と堅調に推移、その他では、新規開設となった広島が8.35億円の寄与が大きい。なお、月次の売上高、売上総利益面では、例年1月、2月が季節要因で落ち込むが、特に25/2期は大雪の影響があり、25/2Q4については収益ともに悪化が目立っている。
この他、廃バッテリー再生事業のダイセキMCRは、売上高46.16億円(期初計画比5.92上振れ、13.9%増)、営利5.55億円(同1.87億円上振れ、40.3%減)と、10年に一度の大規模修繕があり生産量が17%減となったものの、LME市況堅調、為替円安寄与があり、計画を上って着地した。ダイセキ環境ソリューションは大型案件収束影響で売上高199.44億円(17.4%減)、営利22.53億円(19.3%減)もほぼ利益は計画線で着地した。超大型タンクの洗浄を行うシステム機工は売上高44.71億円(期初計画比1.71億円上振れ、13.2%増)、営利7.06億円(同1.33億円上振れ、23.2%増)と高収益案件の前倒し作業完了で効率が上がり、過去最高収益の更新となった。
26/2期4.0%増収9.6%営利増で最高益予想もトランプ関税問題等で収益未達懸念
26/2期会社計画は売上高700億円(4.0%増)、営業利益157億円(9.6%増)、経常利益158億円(6.5%増)、税引利益99億円(6.3%増)予想と、最高収益更新を見込む。
会社別ではダイセキ本体が売上高410億円(6.5%増)、総利益173億円(8.7%増)、営利119億円(10.6%増)予想。大幅な能力増強効果は広島稼働で一旦は落ち着いており、稼働率のアップで総利益率を42.1%(0.8ポイントアップ)を見込んでいる。営業利益については大阪油化の買収案件での経費増がなくなり、販管費の伸びは4.8%増程度に収まり、営業利益率が1.1ポイント向上し29.0%を見込んでいる。なお前提となる廃棄物等受入量は112万t(0.1%増)、一方でリサイクル燃料系製品は31万t(14.8%増)を見込む。この中には従来のリサイクル燃料の出荷規格品に加え、非規格品となるセカンド規格品(従来廃棄していたものをブレンドすることでリサイクル燃料化)の拡大なども寄与する見通し。ダイセキMCRは売上高45.04億円(2.4%減)、営利5.98億円(7.7%増)予想と、定修影響がなくなり減収ながら増益予想。ダイセキ環境ソリューションは売上高210億円(5.2%増)、営利23.8億円(5.6%増)予想と緩やかな収益拡大見通し。システム機工は売上高46.5億円(4.0%増)、営利7.15億円(1.3%増)と緩やかな収益増で連続最高益更新を見込む。
現状、ダイセキについては、トランプ関税の影響が自動車産業などで悪影響を及ぼすとみられ、対米自動車輸出は10%~15%程度の減少が懸念される。2023年、日本から米国への総出荷額は1576億ドル(22.6兆円)、自動車が最大の輸出品目であり、割合は28%に達する。直近の年間ベースで日本から米国への自動車輸出額はおおよそ400億ドルから410億ドルの範囲で推移、10%の輸出台数減は41億ドル近くの減少となる。また自動車産業はすそ野が広く、間接的に影響を受ける産業が数多く、鉄鋼、自動車部品(こちらは自動車と同一関税)、ゴム、機械、電子部品など間接的に8.5億ドル程度の影響を受けるとみられる。このため、直接・間接影響を合わせると。49.5億ドル程度の鉱工業生産のマイナス影響となる。実際は日本企業が中国で生産し、米国輸出している品目なども影響を受けるとみられ、鉱工業生産指数の低迷影響を受け、ダイセキ単体の収益悪化が懸念される。同社は社内計画では廃棄物受入量を5%増としているが、公表値の1%増というよりも、今期もシェア拡大があって横ばい程度にとどまるとみられる。またダイセキMCRも鉛価格、円安一服で会社計画を下回るとみられる。システム機工、ダイセキ環境ソリューションは計画線の利益が見込まれる。全体として減益を避ける努力はあろうが、辛うじて最高益更新達成に止まろう。
中計目標として28/2期に売上高810億円、営利180億円目指す
同社は中期計画を毎年スクロールしているが、今回、28/2期に売上高810億円、営利180億円を目標として掲げた。この中でダイセキは安定的に7%程度の成長を続ける、ダイセキ環境ソリューションは資源リサイクル事業の比率を高める、M&Aについても継続して実行を試みるとの方針。
同社の過去からの中計見通しと実際に達成したかどうかの検証では、ダイセキ環境ソリューションの収益大幅悪化が生じた2022年4月発表時の中計以外はほぼ計画達成してきた経緯がある。今回の中計目標についても世界的な環境保全意識の高まり、温暖化防止に対する様々な規制強化、サスティナブル社会の構築など、同社を取り巻く環境はフォローの風が吹いており、今回の中計についても実行可能な数字と見えていた。但しトランプ政権誕生により想定外の政策が実行されつつあり、世界的な景気低迷に陥るリスクもある。輸出産業ではないものの、間接的に中計収益も大きな影響を受ける事には注意が必要と言える。
株価はダイセキ単独の収益好調持続を受けて連結収益では減益見通しのまま推移も株価は3600~4000円の往来相場で推移してきた。現状、26/2期会社予想EPS205.91円に対しPER17.74倍は、AREホールディングス10.4倍、TRE7.1倍、松田産業10.1倍と比較し割高となっている。26/2期は連結会社予想で最高益更新予想も、計画未達懸念もあり株価としてはニュートラル継続と考える。
*図表は会社説明会資料から添付もしくはIRユニバース加工
*松田産業(7456)、TRE(9247)、ARE(5857)との比較
(H.Mirai)
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