週刊バッテリートピックス「CATL20日に香港上場」「豊田通商が冨士発條に出資」など
2025年5月12日~5月18日のバッテリー業界では、海外電池企業の明暗が鮮明だった。中国のCATLが香港上場秒読みとなる一方、カナダのLi-Cycleは経営破綻した。日本勢は大手による電池関連への出資が引き続き盛ん。豊田通商が富士発條に、商船三井系のMOLプラスがシンガポール企業にそれぞれ出資した。
<国内>
●豊田通商、EV電池部品の冨士発條に34%出資
豊田通商は5月16日、自社ホームページ上で、「EV電池部品メーカーの冨士発條(本社:兵庫県朝来市)の第三者割当増資を引き受け、増資後の発行済み株式株式の34%を取得する」と発表した。6月30日に持ち分法適用会社化する。出資額は未公表。
両社は2023年から米国でバッテリー用セルケースの共同出資会社を運営していた。米事業の出資比率は富士側が60%、豊田側は40%。
プレスリリース:車載用電池部品の製造を行う冨士発條株式会社との出資契約締結について | 豊田通商株式会社
●商船三井系MOLプラス、シンガポールの電池スタートアップに出資
商船三井傘下のコーポレートベンチャーキャピタルMOL PLUS(MOLプラス)は5月15日、自社ホームページ上で、「シンガポールの電池スタートアップ企業VFlowTech(ブイフローテック)への出資を決定した」と発表した。出資額などは未公表。
MOLプラスは2024年10月、系列会社とブイフローテックの3社で、アジア・太平洋地域で物流業界にバナジウムレドックスフロー電池(VRFB)導入を進めるための覚書を締結していた。
プレスリリース:VFlowTech社への出資を決定 - News
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●千代田化工建設、出光興産の固体電解質小型実証設備の増強完工
千代田化工建設(本社:横浜市)は5月14日、グループ企業の千代田エクスワンエンジニアリング(本社:横浜市)と共に、出光興産の固体電解質小型実証設備 の能力増強工事を完工したと発表した。
関連記事:千代田化工建設 出光向け固体電解質の小型実証設備の能力増強工事完工 | MIRU
●日本航空電子工業、EV向けコネクタの新シリーズを発売
発売するEV用コネクタの種類
(出所:日本航空電子工業の発表資料)
コネクタ日本最大手の日本航空電子工業は5月13日、自社ホームページ上で、「EV向けコネクタの新シリーズを発売する」と発表した。同じ用途の既存製品と比べて約47%小さい一方、対応できる電圧は1000ボルトと、一般的なEV電池より高い電圧でも使える。
プレスリリース:車載向け高電圧低電流BMS用コネクタ 「MY05シリーズ」を販売開始 | コネクタ メーカー JAE 日本航空電子工業
●三井金属鉱業、全固体電池向け固体電解質の生産能力見込み引き上げ
三井金属鉱業は5月13日、2024 年 1 月に公表した全固体電池向け固体電解質「ASOLiD®」量産試験用設備の第 2 次生産能力増強投資について、増強後の生産能力の見込みを「設備導入時比較3倍増」から「同4倍増」に上方修正したと発表した。
関連記事:三井金属、固体電解質量産試験用設備の増強後生産能力を上方修正 | MIRU
●新東工業、電池生産向け大型ロールプレスの受入テスト開始
鋳造設備大手の新東工業(本社:名古屋市)は5月13日、自社ホームページ上で、「大型ロールプレス装置による受入テストの提供を4月から始めた」と発表した。車載リチウムイオン電池(Lib)用電極などの生産性向上や、全固体電池電極への対応を想定する。
新装置は世界唯一のオール電動式で、試験装置としては国内最大級の加圧力と加工幅を誇る。最大加工幅は同社従来比5倍の600ミリメートル、最大加圧力が同3.5倍の2100キロニュートン。
<海外>
●中国CATL、20日に香港上場へ
車載電池世界最大手の中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が5月20日に香港証券取引所に新規上場する。株式コードは3750.hk。同社は既に深圳株式市場に上場しており、重複上場となる。海外投資家が参加しやすい香港市場に上場することにより、海外資金の呼び込みが期待できるほか、米ドルと連動する香港ドルを使った海外での資金調達も容易になる。
1株当たり263香港ドルで1億1793万株を新規発行し、少なくとも約307億1700万香港ドル(5723億円)を調達する。資金調達額では2025年の香港市場の新規上場として最大。調達した資金は9割をハンガリー工場の建設費に充てる。
香港証券取引所での開示資料:2025051601205.pdf
同目論見書:2025051200005.pdf
関連記事:中国CATL、香港上場を申請 ハンガリー工場の建設資金調達、海外事業を拡大へ | MIRU
●「ReMA 2025」、サンディエゴで開催
世界最大のリサイクル素材業界イベント「ReMA 2025」が、5月12-15日、米カリフォルニア州サンディエゴで開催された。参加者は延べ7000人。IR Universeによる取材記事はこちら。
●加Li-Cycleが経営破綻
カナダの電池資源回収Li-Cycleは5月14日、ビジネスワイヤで、「カナダと米国で債権者保護を申請した」と発表した。事実上の経営破綻となる。
関連記事:加Li-Cycleが経営破綻 身売り意向発表から2週間、EV電池の回収・再利用目指すも | MIRU
(IR Universe Kure)
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