東北大学×住友商事 CO2と廃PVセルなどからSiC合成技術を共同開発
【発表のポイント】
- CO2とシリコン系産業廃棄物(注1)を同時に有効活用する、新しいカーボンリサイクル型炭化ケイ素(SiC)(注2)合成プロセスの社会実装を推進。
- 東北大学が有する先進的なカーボンリサイクル技術・特許・学術知見と、住友商事の調達力・市場開発ノウハウを融合し、早期実用化を目指す。
- 2050年のカーボンニュートラル(注3)実現に向け、CO2排出削減と廃棄物の再資源化を同時に達成する革新的ソリューションとして期待される。
- サーキュラーエコノミー(注4)推進の観点から、環境負荷低減にとどまらず、半導体産業の競争力強化にも貢献します。
【概要】
自動車や半導体分野の省エネルギー化を背景に、炭化ケイ素(SiC)は次世代パワー半導体材料(注5)として注目されており、需要が急速に拡大している。特に電気自動車(EV)や再生可能エネルギー機器の高効率化に貢献する素材として期待されている。
一方で、従来のSiC製造プロセスでは、高温での加熱に伴う大量のエネルギー消費やCO2排出が課題。またシリコンウエハ製造過程で排出されるシリコンスラッジ(注1)の再利用および太陽光パネルの廃棄に伴うシリコンセルが課題となっている。
こうした背景のもと、2050年のカーボンニュートラル(注5)実現に向けて、CO2の排出量削減のみならず、排出されたCO2を資源として有効活用する「カーボンリサイクル」の取り組みが重要視されている。
東北大学大学院工学研究科応用化学専攻の福島潤助教らの研究チームと住友商事株式会社は、この課題に対する新たな解決策として、CO2とシリコンスラッジを原料に用いる「カーボンリサイクル型SiC合成技術」の共同開発に取り組む。これにより、CO2排出の削減と産業廃棄物の再資源化を同時に実現し、SiCの高純度用途への展開を可能にする、先進的なソリューションの提案を目指す。
図1. カーボンリサイクル実証研究拠点に設置されている連続炉の写真と、シリコンスラッジがCO2と反応し、その反応が伝播する様子
【用語解説】
注1. シリコン系産業廃棄物、シリコンスラッジ
シリコンインゴットを加工する過程で生じる微細な粉末や切削くずなどを指す。従来は廃棄物として扱われるケースが多く、再利用が課題とされてきた。
注2. 炭化ケイ素(SiC)
シリコン(Si)と炭素(C)からなる化合物で、高耐圧・高温特性に優れた次世代パワー半導体の素材となる。炭化ケイ素からなるパワー半導体はEVなどの省エネルギー化に寄与し、需要が急速に拡大している。
注3. カーボンニュートラル
二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を、森林吸収や吸収技術などを含めて差し引きゼロにする概念。地球温暖化対策として国際的に推進されている。
注4. サーキュラーエコノミー
資源をできる限り循環させ、廃棄物を最小限に抑えつつ新たな付加価値を生み出す経済モデル。再利用やリサイクルに重きを置き、持続可能な社会を実現する考え方。
注5. 次世代パワー半導体材料
電気を効率よく制御する「パワー半導体」に用いられる新しい材料を指す。従来のシリコン(Si)に比べて、高温・高電圧への耐性や電力損失の低さに優れ、電気自動車や再生可能エネルギー機器などでの活用が期待されている。代表的な材料には、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などがあり、SiCは高耐圧・高温動作に適しており、電力インフラやEV向けに広く注目されている。
(IR universe rr)
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