いまだ高値の鉛バッテリーscrap 採算難で崖っぷちの国内鉛精錬業界
鉛バッテリースクラップは市中流通相場でキロ65~70円の高値圏で推移中。1月の財務省貿易通関統計いよる鉛バッテリースクラップの輸出量は韓国向け2825トン(輸出金額197,370(千円))で輸出単価はキロ70円。
12月は4000トンの輸出量だったが、1月の実質営業日数、バッテリースクラップの恒常的な発生減からすると、やはり多いといわざる得ない。
国内のバッテリースクラップ市場は間違いなくこの韓国向け輸出に高値誘導さえているが、加えて国内の一次精錬メーカー(ヤマ)と二次精錬メーカーとの高値買いがある
(鉛バッテリースクラップの輸出推移)トン
(財務省・貿易通関統計)
ため、理論値上ではキロ45円前後が適切なバッテリースクラップの処理を施したうえで採算もとれる単価になるのだが、現状はこれの25円も高い。鉛純分ベースでいけば4倍高い、ということになるのだが、それでは製品(地金)販売価格が上がっているかといえばそうでもない。
アジア市場の電気鉛プレミアムは80ドル
例えばアジア向けの電気鉛プレミアムはトン80ドルである。LME鉛2100ドル+80ドルで2180ドル。これに単純に為替81円をかけるとキロ177円と計算される。177円という電気鉛の販売価格があり、バッテリースクラップを70円で買っていたら全く採算は合わない。重ねていうが40円台でないと合わない。
国内で鉛需要は盛り上がっているのか?
典型的な原料高製品安に陥っており、特に資本力のない二次精錬業界は何度目かの危機的状況に立たされている。一頃はヤマも「談合的」にバッテリースクラップの買値を統一しようという動きがあったがこれはすぐに失敗した。協調しなかったからである。
鉛の需要はそもそもが国内よりも海外に移っている。自動車メーカー~電池メーカーは海外シフトが顕著、かつ「現地調達」の比率をあげている。中国で展開しているGSの場合が好例だが、中国でバッテリースクラップの発生が少ないため、日本含めたアジア全域から調達していることを考えると、誤解を恐れずにいえば電池メーカーじたいはバッテリースクラップの輸出に対して精錬業界ほどにはネガティブに捉えていないフシも窺える。
精錬業界での協調減産が必要
この異常な高値はひとえに輸出勢と国内との「買い競争」にある。さすれば皆が買いの手を緩めたらタイト感は薄れ、相場も自然下降していくことになろう。回収業者の力が強くなっている現在、必要なことは鉛精錬業界においての協調減産であろう。聞くところによると、有力な精錬メーカーが3月から大規模な減産に入るようだが勇気ある正しい判断だと思われる。
(IRuniverse yuji tanamachi)
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