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人造黒鉛電極、環境激変でスポット価格高騰

2017/06/26 16:15
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 電炉メーカーとって原料のスクラップ(鉄屑)を溶かすのに必異なのが人造黒鉛電極だ。人造黒鉛電極は石油や石炭から主商品を取り出した…原油の場合、重油やガソリンなど主要製品を取り出した残り。石炭の場合、コークスなどにした際の残り…タールやピッチを原料に焼成、浸透を繰り返して、約半年かけて生産される。

 

 電炉でスクラップを溶かす際、陰極となる人造黒鉛電極は先端部では2000度を超える高温になるため、金属では持たない。耐熱性が高い人造黒鉛が使用される。原料には石油系と石炭系が半分半分使用される。一般的には石炭系が石油系に比べ割安になるが、石炭系が多いと欠けたり折れたりしやすくなるため、その割合は会社にとって異なり、企業秘密となっている。

 

 また、口径が大きくなればなるほど欠けたり、折れやすくなるため、大口径のものほど生産が難しい。最先端の電気炉で使用される電極は口径が30インチを超えるものまである。

 

 28インチ以上(会社によっては26インチ以上としているところもある)の人造黒鉛電極を大口径というが、こうした大口径を生産できるメーカーは、世界的にみて限れている。世界最大手のGTI(米国)、SGL(独国)、昭和電工、東海カーボン、日本カーボン、SECカーボンの日本の4社程度しかない。最近技術力を付けてきているインドメーカーの中には28インチができるようになったと言われている。ただ、品質面はマダマダとの話である。

 

 世界の人造黒鉛電極需要は、電気炉メーカー粗鋼生産量におおむねトレンドする。ただ、品質により原単位が異なるため、完全に一致しない。日本製品は、電炉鋼で鉄を1トン作るのに人造黒鉛電極が2キロも消費されないが、粗悪品だと3キロ以上も消費する。なお、日本カーボンとSECカーボンの稼働率は5割を切る低水準である。

 

 2016年の人造黒鉛電極の生産能力80万トン弱に対し需要が60万トン程度と20万トン弱の供給過剰であったが、GTIやSGL、昭和電工※、東海カーボンなどが生産能力の削減に踏み切った。なお、GTIとSGLは2014年頃から生産能力を徐々に削減していた。
(※昭和電工は長野県大町の生産能力削減を実行したが、一方で、米国にて3万トンの新生産設備を完成させており、その稼働を見送っている。しかし、17年後半にはタイミングを見計らって稼働させる計画となっている。また、昭和電工はSGLを買収しにより、米国内のシェアが大きくなるため、今夏に発表される米国公正取引委員会の結果待ちとなっているが、生産能力削減となる公算が高いと思われる。新生産設備稼働との兼ね合いが注目される。)

 

 今春以降状況が激変してきた。中国は、環境規制の強化から人造国電極の生産が、まともに行えなくなってきたとのことである。加えて、インドでも原料調達がままならない状況になっている。インドが使用する原料は、先進国で使用するものと異なっている。インドが使用する原料は、人造黒鉛電極だけでなく、リチウムイオン二次電池の負極材向けにも使用されている。そのリチウムイオン二次電池向けの需要が盛り上がっているのである。

 

 こうしたことから、2016年まであった20万トン弱の需給ギャップが、一気に縮小、SGLがイタリアの工場閉鎖により3万トンの能力削減を行った欧州でタイト感が出始めてきている。アジア市場も一気にひっ迫し、両地域の人造黒鉛電極のスポット価格は、2~3割、モノによっては3割以上も上昇しているようだ。

 

 米国では、ファンドに買収されたGTIが、財務体質改善のために1割以上の値上げをすでに打ち出している。昭和電工は、公取の影響があるので明確に打ち出せないが、会社側は1割以上の値上げを打ち出しGTIに追随したいものと思われる。

 

 ただ、人造国電極は年間契約及び半年契約であるため、こうした価格上昇が確認できるのは今年10月以降の一部の契約になると思われる。このためにも、7月か8月に結果がでると思われる米国での昭和電工、SGL買収の結果に注目したい。

 

 なお、人造黒鉛電極の正確な統計が存在したいため、IRUが独自に調べた各社の2016年末の人造黒鉛電極生産能力が次の通り。GTIが19万トン程度(ピーク時25万トン)、SGL12万トン(同24万トン)、昭和電工は新設分含めず11万トン(同12.7万トン)、東海カーボンはドイツの子会社含めて6.4万トン(同10万トン)、日本カーボン、SECカーボン共に3万トン程度、インド等は20万トン程度と思われる。

 

 なお、貿易統計によると、人造黒鉛電極の平均輸出価格はトン27万円程度で推移している。「貿易統計:4月の電極価格、ボックス圏を抜け出せず、依然赤字状態」を参照。

 


(IRuniverse 井上 康)

 

 

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