半導体などの素材になるガリウム価格の高騰が始まっている。7月6日の高値は1kg=301ドルと5日の高値に比べ13%上げ、4月12日以来の高水準となった。7日以降も同水準で推移している、中国商務省と税関総署が7月3日、ガリウム関連製品を輸出規制の対象にすると発表し、規制が始まる8月1日を前に先回り買いが入っている。
過去3か月間のガリウム価格の推移($/Kg)
同時に輸出規制対象としたゲルマニウムの高値は4月20日から1Kg=1400ドルで横ばい。Mining.comの7月7日の報道によると、ガリウムの方がゲルマニウムよりも生産が難しいとされ、値動きがより激しくなっているようだ。
過去3か月間の金属ゲルマニウム価格の推移($/Kg)
■各国・企業の反応はさまざま
GaN(窒化ガリウム)、酸化ガリウムは日本が得意とするパワー半導体の重要素材で、中国は日米などによる先端半導体の対中輸出規制への報復措置として今回、材料の輸出規制を打ち出したと見られている。ただ、中国商務省自体も「特定の国を標的とした措置ではない」としている通り、影響は日米以外の各国にも及ぶ。
輸出規制を受けた各国の反応はさまざまだ。台湾メディアによると、半導体最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は7月6日、輸出規制は「自社の生産に影響はない」との声明を出した。また、ドイツではハイテク業界団体ビトコム幹部が「(調達先を)一国に頼ることをやめ、重要デジタル技術分野における独自の能力構築を目指すべきだ」と主張したとも伝わり、自給促進とデリスキング(脱リスク)加速につながりそうな動きもみられる。
一方で、半導体ウエハーメーカーのAXTのように、中国子会社がガリウムとゲルマニウム基板製品の輸出継続許可を中国商務省に直ちに申請する方針を明らかにしたケースもある。
■レアアースなどに規制広がれば…
怖いのは、中国による輸出規制の対象が今後、希土類(レアアース)など他製品にも拡大しかねないこと。
米証券会社のゴールドマン・サックスは7月6日、レアアースについて「中国からの供給量に匹敵する規模を西側諸国が確保するには、新たに250億ドル超の投資が必要になる」との試算を発表した。現在、中国が年間5万トンを生産するネオジム・プラセオジム(NdPr)だけでも、代替費用が150億~300億ドルに達する恐れがあるという。
(IR Universe Kure)