カナダのリチウムイオンバッテリーのリサイクル企業であるLi-Cycleに財務不安が浮上している。同社は10月23日、「米ニューヨーク州で建設していたロチェスター工場の工事を中断する」と発表した。発表を受け翌日の米国市場で同社株は急落。同社は欧州などでも積極的に工場を建設してきただけに、コスト負担の超過が懸念されている。
発表によると、建設停止は「(資源価格などの)高騰に伴い、総コストが予想を上回ることが分かった」ため。既に同工場向けの調達面などの準備は整っていることから、今後も融資した米エネルギー省(DOE)などとの協力を維持した上で、計画全般を見直すとした。
ロチェスター工場は同社にとっても主力工場と期待されていた事業の1つで、米国にとってコバルト調達の1手段となることから米政府が支援していた。Li-Cycleは米国ではアリゾナ州などにも工場を持つ。アジア進出を目指すなど世界的な工場展開に積極的だが、10月にはスイス資源大手のグレンコアと共同で建設を予定していたイタリア工場の建設に地元政府が難色を示していると伝わるなど、一部事業の滞りや性急な事業展開が懸念されていた。
今回の発表を受け、10月23日のニューヨーク株式市場でLi-Cycle株は前週末比46%下落した。その後も低迷し、10月31日終値は1.34ドル。前日からは12%上げたものの、発表前に比べるとやはり4割程度安い水準にある。
同社は11月13日の2023年7-9月期の業績発表時にロチェスター工場について詳細を説明するとしており、注目が集まっている。
(IR Universe Kure)