中国国家統計局などの中国当局が12月15日までに発表した中国の11月の主要経済指標はまだら模様の結果となった。不動産投資や固定資産投資がなおさえず、新築住宅価格も下落が目立つ。工業生産高や小売売上高の伸びは10月から回復したものの春の水準には届かず、本格回復には遠い。
中国の2023年の主要経済指標
(注)単位は新規融資以外は前年同期比増減で%、固定資産投資と不動産開発投資は1月からの累計、GDPは四半期。
(中国国家統計局、中国海関、中国汽車工業協会、中国人民銀行などの発表をもとにIR Universeが作成)
■EVが輸出支えるも内需弱含み
11月の主要経済指標では、工業生産や小売売上高のほかに輸出が7ヶ月ぶりにプラスになった。新車販売も3割近い伸びで、電気自動車(EV)の輸出好調が支えになったとみられる。
一方で、内需には力強さが感じられない。消費者物価指数(CPI)と輸入が再びマイナスに転落し、サービス業の景況感も悪化の一途だ。11月はネット販売の大型セール「独身の日(11月11日)」があったが、盛り上がったとは言いにくい。
■不動産悪化、手を打つには「もうお金ない」
不動産問題はやはり解決できていない。不動産投資は1-11月も小幅ながらも悪化した。国家統計局が12月15日に発表した新築住宅価格は、主要70都市のうち8割超に当たる59都市が値下がりした。
かといって、打つ手は限られているようだ。中国人民銀行は12月15日、中期貸出制度(MLF)の1年物金利を前月から据え置くと発表した。中国の実質的な政策金利に当たる最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)はMLF金利をもとに決められるので、12月20日発表のLPRも据え置かれるだろう。住宅ローンを含む金利を引き下げて住宅購入を促すことはしないとみられる。
リーマンショック後の2009年、中国は4兆元の景気下支え策を打ち出して不動産を含むインフラ投資を活性化させた。中国事業を手掛ける中継商社の幹部に、はて今回は、と水を向けると、「中国にももうそんな金はないんですよ」と寂しげな笑顔が返ってきた。
(IR Universe Kure)