9月の世界経済はさえない動きとなりそうだ。エモリファンドマネジメントの江守哲・代表取締役兼最高経営責任者(CEO)は「雇用状態など米景気が振るわない中、好材料も乏しく、世界景気全体を押し上げる要因が見当たらない」と話す。急激に悪化する可能性は低いとはいえ、ムードとしては下向きで、憂鬱な気分が漂う月になりそうだ。
■9月半ばのFOMCで米利下げか
米労働省が9月5日に発表した8月の米雇用統計で、季節調整済みの失業率は4.3%と新型コロナウイルスの影響が続いていた2021年10月以来の高水準となった。米国の労働市況を巡っては、8月22日のジャクソンホール会議でパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が労働市場の悪化を理由に利下げ姿勢を示唆していた。江守氏は「9月16〜17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが決まる可能性が高い」と警戒する。
米失業率の推移
(出所:米労働省ホームページ)
ただ、米国の労働市況を巡っては、江守氏は「日本を含めた世界的な構造問題がある」とも指摘。「(どこの国も)この30年間、長期金利が低迷している。景気の先行き懸念が続いていることを意味し、雇用はどうしても悪化しやすくなる」とも話していた。8月の米雇用統計の発表を受け、9月5日の米国債利回りは大幅に低下した。
■金は調整局面、銅は材料不足
もし米国が利下げに踏み切った場合、金利低下は米ドルや米国株などの米国の金融資産からの資金流出を誘い、金などの安全資産や他国通貨に資金が流れ込む結果になる。事実、金相場はニューヨーク商品取引所(COMEX)での国際価格が9月5日に$3606.7/tozを付け、過去最高値圏で推移する。ただ、江守氏は9月の金価格の値動きについて「テクニカル的に調整が入りやすい時期で、過熱感から月内は足踏みしそうだ」と予測した。9月中に一本調子で上り詰める可能性は低いと見ていた。
過去1年間のNY金相場の推移($/toz)
一方、銅は「材料不足から動きは停滞しそう」(江守氏)だ。米関税を先回りした米国向け輸出の急増も既に一服している。中国の景況感指数が好不況の境目である50に届かないなど低迷を続ける中、製造業が大幅に回復する兆しも見えない。
過去1年間のLME銅価格の推移($/ton)
中国の製造業景況感指数の推移
(出所:中国国家統計局)
■ドル円は150円そこそこで推移か
同じく為替も足踏みしそうだ。米利下げが決まればもちろん米ドルの下押し圧力になるため円には上昇要因となるが、円自体に大幅に上げる理由は特にない。江守氏は「1ドル=150円そこそこの水準で推移するのではないか」とみていた。
過去1年間のドル円相場の推移(JPY/USD)
9月の波乱要因は米利下げの有無だが、FOMCまでに織り込みが進む可能性も高い。また、米国の関税問題も春のようなショック要因では既になく、トランプ米大統領の強気発言と裏腹に「だんだん緩んでいくだろう」(江守氏)との見透かした見方が広っている。
(IR Universe Kure)