ドイツが鉱物を含む重要原材料の調達に注力し始めた。2月2日に議会(下院)が承認した2024年の財政予算案で、原材料調達に向けた基金の設立を盛り込んだ。他方、2月上旬にはアルゼンチンの訪問団と重要鉱物について話し合ったとされる。これまで経済依存度が高かった中国との関係を見直し、中国離れを進める方向にかじを切った格好だ。
■EUの重要鉱物法が後ろ盾、仏伊とも調整か
(出所:ドイツ総領事館ホームページ)
フィナンシャル・ポストをはじめとする外電が2月2日に消息筋の話として伝えたところによると、ドイツ政府は重要原材料投資に向け10億ユーロ(約1600億円)規模の基金を設立することを財政予算案で決めた。基金は4年間にわたり運営される見通しで、ドイツの国営KfW開発銀行を通じて、少数株主持分を取得するための自己資本で構成される。
対象となる分野を決めるのはこれからになる見通しだが、欧州連合(EU)の重要原材料法で重要と定義されている鉱物プロジェクトが中心になりそうだ。消息筋は、「原材料部門におけるイタリアとフランスのイニシアチブと調整される」とも話したという。
EUは2023年11月、重要鉱物資源の中国依存リスク低減を目指すとされる「欧州重要原材料法案」について暫定合意したばかり。各国内の国内鉱業を促進し、一国への依存を減らすことを目指し、2024年にも発効する。「原材料調達は欧州全体の最優先事項でなければならない」(独政府関係者)との認識が広がっている。
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■アルゼンチンの銅やリチウムに関心
ドイツは個別の鉱物産出国との接触も試みる。ウォールストリート・ウェーブは2月4日、「アルゼンチンの代表団が最近、訪独し、ドイツの外務省高官らと重要原材料について議論した」と伝えた。
ドイツ側はアルゼンチンでの銅やリチウムなどの重要鉱物の探査と生産に顕著な関心を示したという。一方、アルゼンチン側は太陽エネルギーを利用の鉱業採掘を説明するなど環境保護意識の高いドイツに自国産業をアピール。3月にはドイツの訪問団がアルゼンチンに赴くことになったという
ドイツは長年、中国での自動車販売などに力を入れ、銀行など金融面でも中国依存度が高かった。中国企業側もドイツ進出に力を入れ、寧徳時代新能源科技(CATL)や国軒高科(ゴディオン)がドイツ国内に工場を建設している。
しかし、ロシアのウクライナ侵攻以降はエネルギーの一国依存の危険性への認識が高まり、EU全体にも過度な中国依存を見直す機運が高まっている。EU内でも親中度の高いドイツの態度の変化は、他の国々にも影響を及ぼしそうだ。
(IR Universe Kure)