インドネシアは2025年1月から銅精鉱輸出を実質的に禁止する。インドネシア現地メディアのTEMPO.COが11月12日に同国政府高官の話として伝えた。同国が進める単純な資源輸出国から工業国への転換方針を受け、精錬所などの加工業への投資増加を促す。
■目先の関税収入よりも加工業への投資促進
報道によると、インドネシア財務省のアスコラニ税関・物品税局長は11月11日の記者会見で、「2025年は銅の輸出関税を受け取らない」と述べた。1月から輸出許可の発給を禁止するという。
同氏はインドネシア政府は輸出禁止により関税10兆ルピア程度を失うが、粗パーム油(CPO)など主製品の輸出関税収入で補えるほか、精錬所投資を促すことなどにより補填が可能と説明。また、加工業の促進による雇用拡大効果が望めると話したという。
■ニッケルのようにうまくいくか?
周知のように、インドネシアは既にニッケル鉱石やボーキサイトなどの輸出禁止に踏み切っている。最近では銅だけでなく錫など他の製品に対しても鉱物の輸出規制を検討していると伝わっていた。
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このうち、銅精鉱についてはかなり以前から、検討しているとの観測があった。というのは、世界的に中長期の需要期待が根強い精錬銅と違い、銅鉱石価格は2023年秋から急落しているためだ。
過去3年間のLME銅と銅鉱石価格の推移($/ton)
これではインドネシア政府に「いつまでも鉱石輸出ではいけない」との焦りが生まれても仕方がない。ただ、実際には「ボーキサイトや銅などはインドネシア以外の国でも調達可能であるため、むしろインドネシア国内での加工義務を嫌って投資が減少するリスクがあろう」(みずほリサーチ&テクノロジーズの10月16日付公開レポート)との指摘も聞かれる。ニッケルのように加工業への転換がうまくいくか、先行きはなお未知数だ。
(IR Universe Kure)