6月の世界経済は下押し圧力が強い中で膠着感が強まり、月末に向けてじりじりと悪化する展開になりそうだ。米相互関税の90日間の停止期間が多くの国で7月上旬までとなるため、6月中は様子見気分が広がる可能性が高い。住友商事グローバルリサーチの本間隆行経済部担当部長・チーフエコノミストに見通しを聞いた。
■米中ともに身動き取れず
足元の景気は世界の2大経済体である米中がともに良くない。米中両国が6月2日までに発表した両国の5月の製造業景況感指数(PMI)は、好不況の境目である50をそれぞれ下回った。しかし、本間氏はいずれも景気対策として「金融緩和に踏み切る可能性は低い」とみる。
まず、米国は米連邦準備制度理事会(FRB)が5月までの定例会合で、3会合連続で利下げを見送り、政策金利を据え置いている。パウエルFRB長官はかねて利下げについて「急いでいない」と話しており、トランプ関税の行方がはっきりしない中、6月中に行動を起こす可能性は低い。
米PMI、5月は48.5
(出所:ISM)
一方の中国は預貸利ざやの縮小など銀行の経営悪化が重荷となっている。「お金を貸す側の足元がぐらついている」(本間氏)ため、不動産不況が続く中でもやはり利下げには踏み切れなさそうだ。本間氏は「米中は(それぞれの国内事情から)政治的方針を変えることができない」と話す。金融政策面でも米中共に動きが出しづらく、膠着感の一因となりそうだ。
中国PMI、5月は49.5
(出所:国家統計局)
■金は緩やかな上昇基調、銅は伸び悩み
6月は商品相場も動きが出づらくなりそうだ。例えばこれまで快進撃が目立った金。本間氏は「中長期の上げ要因は依然多い」(本間氏)とは話す。安全資産を探した時に米ドルか金かの選択肢になるが、ドルの安全性が揺らぐ中で「金に資金が集まりやすくなっている」ためだ。しかし短期の押し上げ材料は乏しく、本間氏は「6月の上昇ピッチはこれまでのように急ではないだろう」とみる。
過去3か月間のNY金相場の推移($/toz)
一方の銅は伸び悩みが続きそうだ。中国景気が低迷する中、最終製品レベルでの需要回復が見通しづらい。本間氏は「原油も下がっているし、特に非鉄金属マーケットはトランプ関税発表前から下落基調だった」と指摘。不動産市況の回復も見込めない中、「中国国内には(金属)価格を上げる理由が乏しい」と話した。
過去3か月間のLME銅価格の推移($/ton)
■円130円乗せも衝撃薄く
円相場は今後も上昇基調が続きそうだ。米国への不信感がくすぶる中、米ドルには上げる力が乏しく、相対的に円高になる方向だ。ただ、例えば1ドル=130円台に上げたとしても本間氏は「市場は織り込み済みで、大きなインパクトはないのではないか」との見方を示した。
過去3か月間のドル円相場の推移(JPY/USD)
全体に低調が予想される6月の世界経済だが、急激な悪化も考えづらい。本間氏は6月中に発表の各国の5月の経済指標については「関税の一時中止期に当たるため、一部では改善も予想される」と話した。
(IR Universe Kure)