2025年6月第2週の中国のニッケル銑鉄とニッケル鉱石価格は横ばい圏での調整が続いている。米中関税やインドネシアの政策などの先行きが見通しにくく、身動きがとりづらい。最終製品の需要がやはり弱く、取引自体も少なめで価格は交渉値幅が限られているようだ。
■鉱石は2か月以上横ばい
過去3ヶ月間のニッケル銑鉄価格の推移(NPI content 10-15% China)(RMB/Nickel/MTU)
中国のニッケル銑鉄価格は6月10日に高値RMB965/MTUと、2月以来およそ3か月ぶりの安値を付けた。4月上旬から中旬にかけて付けたRMB1000超から調整する動きが続く。
過去3ヶ月間のニッケル鉱石価格の推移(1.8min CIF China)($/ton)
中国のニッケル鉱石価格は3月20日に仲値$75/tonを付け、その後は2か月以上も動きがない。
Ferroalloy.netは6月6日付のレポートで、「(取引が少ない中)取引先である個別の製鉄所の入札価格に市場全体が振り回される場面が目立った」と指摘した。実際には製鉄所の最終製品需要は低調で、材料であるニッケルを巡っては生産者側と取引先が価格を交渉するものの、互いに提示できる値幅が限られているという。
一方、インドネシア政府は4月に鉱業企業から徴収するロイヤルティ(使用料)を引き上げた。インドネシアのニッケル政策は流動的で、中国の鉱石購入者からは先行きを見極めたいとの様子見気分が根強い。また同国では春以降、雨期入りとともに鉱山活動が中断しがち。中国企業はフィリピン産のニッケル鉱石に頼るケースが増えている。
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■精錬もボックス圏で推移
過去3か月間のLME($/ton)とSHFE(RMB/ton)のニッケル価格の推移
精錬ニッケル価格もほぼ横ばい圏での推移が続く。ロンドン金属取引所(LME)のニッケル価格は6月9日に現物$1万5240/tonを付けた。4月半ばからほぼ1か月以上、$1万5000近辺のボックス圏で推移している。
上海先物取引所(SHFE)のニッケル価格も同じ動き。6月9日に現物RMB12万2690/tonを付けた。12万台前半を中心とした値動きが続く。
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6月10日
インドネシア政府は西パプア州のラジャアンパット諸島でのニッケル採掘を一時停止する方針を固めた。米ブルームバーグ通信が6月10日に伝えた。同地域ではインドネシア国営のアネカ・タンバンがニッケル採掘を行っているが、世界有数のダイビングスポットであるため、環境保護団体などから鉱業活動に対する反対が出ていた。
6月3日
インドネシア製鉄大手のブミ・ミネラル・スラフェシ(PT Bumi Mineral Sulawesi、PT BMS)は、6月3日、自社ホームページ上で、「韓国へのニッケルマットの輸出について住友商事と覚書を交わした」と発表した。住友側の発表はまだ。
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5月30日
中国大手ステンレスの青山控股集団が、インドネシア・モロワリ工業団地(IMIP)内にある一部のステンレス製造ラインを最近停止したもようだ。米ブルームバーグ通信が5月30日に伝えた。
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5月26日-28日
国際リサイクル局(BIR)は5月26日から28日まで、スペイン・バレンシアで世界リサイクル会議を開催した。ステンレス鋼・特殊合金委員会では、欧州のステンレス鋼業界が急速な地殻変動の中で苦境に直面している実態が浮き彫りになった。
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(IR Universe Kure)