国内鉄スクラップ市況は続落。東京製鉄は7月2日に、先月28日に続いてスクラップ買値の下げアナウンスを行った。田原、名古屋、岡山、関西、高松まで一律のトン500円下げ。これにより田原のH2買値は40,500円、岡山海上は40,000円、高松は38,000円、九州は39,500円、宇都宮は40,500円となる。
市中実勢H2は37,500~38,000円。
<H2価格>
【田 原】海上:40,500(‐500)
陸上:40,500(‐500)
【名古屋サテライト】陸上:40,000(‐500)
【岡 山】海上:40,000(‐500)
陸上:40,000(‐500)
【関西サテライト】陸上:40,000(‐500)
【高 松】陸上:38,000(‐500)
【九 州】海上:39,500(‐)
陸上:39,500(‐)
【宇都宮】陸上:40,500(‐)
【関西サテライト】陸上:41,000(‐)
(東鉄田原H2価格と3地区平均H2価格の推移)
これはひとえにスクラップ発生不足をも上回る需要不足に尽きる。
下図のように高炉も電炉も減産続き。小棒、H鋼ともに減産。
他方、中国からの安価な鉄鋼製品、加工製品の輸入は続いており、国内市場を圧迫している。
さる電炉メーカーの担当者は「洪水のように日本に押し寄せる中国の製品を止めないと、日本の鉄鋼業、関連の加工業界はどんどんつぶれてしまいます。非常な危機感を覚えている」とのこと。
全体相場的には、前回も述べたが、中国の本格的な減産(および鉄鋼メーカーの倒産)により鉄鉱石、原料炭の相場も下落し、さらに鉄鋼製品、スクラップも下げに導かれることが見えてきている。
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(国際鉄鉱石相場と原料炭相場の推移)
(日本のHRC輸出価格と中国のHRC輸出価格の推移)
もうひとつの指標としてホットコイル相場があるが、日本は足元FOBトン当たり500~550ドルだが、中国品は450ドル前後。これよりも安価なものも散見さる状態。
実際、鉄スクラップ相場はこの夏にどこまで下がるのか?
ベテランの鉄スクラップトレーダーに聞いた。
「酷暑の夏、というにふさわしい、厳しい市況。鉄鋼メーカーも商社も鉄スクラップディーラーも三方すべてダメ、という状況は珍しい。電炉メーカーの減産も予想以上に広がっており、7~8月も減産。これで9月も変わらない、となればもはや今年は終わったというに等しい。建設案件の先送りやトランプ関税の影響も結果的にスクラップ業界に重くのしかかっている」
ー どこまで下がりますか?
「株価?」
ー いや、スクラップ、H2でいうと?
「おそらく3万円際まで下がるのではないかな・・現実的にいうと」
3万円際、というのは一応、市中実勢相場。しかしこれは十分にあり得る状況。
現物(スクラップ)の発生はすこぶる悪い。これも前述したように建設案件の先送りで解体も少ない。
それが証拠に昨年から解体業界での倒産が相次いでいる。
東京商工リサーチの発表によると、2024年度(2024年4月~2025年2月)の「解体工事業」の倒産件数は54件に達し、過去最多を記録した。 これは、過去20年間で最多だった2023年度の53件をわずか11ヶ月で上回る数字である。
倒産の背景には、以下のような要因が挙げられる。
・解体コストの増加: 資材費の高騰や廃棄物処理費の上昇などが経営を圧迫。
・人手不足: 熟練の職人の高齢化や若手人材の不足が深刻で、人件費の増加にもつながっている。
・受注不振: 建築資材高騰で新規案件が先送りされ、結果的に解体案件が減り、仕事の減少に繋がっている。特に、自社で集客せず、紹介などに依存している会社では厳しい状況が見られる。
・競争激化: 解体業者の数は増加しており、市場での競争が激しくなっている。解体デフレともいわれる。
特に小規模事業者の倒産が目立つ傾向にある。
一方で、老朽化した建物の解体需要、自然災害による復興需要、空き家対策による解体需要など、中長期的には解体工事の需要は増加が見込まれている。しかし、現在のところはコスト増や人手不足といった課題が、倒産件数の増加に影響を与えている。
ほんの数年前まで解体業界は活況を呈していた。ゆえに新規参入も増えていったのだが、それがいまではレッドオーシャン。明日は我が身、といった厳しい経営環境にある。
7月も始まったばかりではあるが、気温の上昇とは反比例的に相場はどこまで下げこむのか(冷え込むのか)を気にしなければならない、という酷暑だが業界的には冷夏のシーズンに入っている。
(IRUNIVERSE YT)