25/6期20.2%増収27.4%営利増とスマホ部品好調、26/6期4.1%増収3.5%営利増へ
株価(9/5):2088円、 時価総額300億円、 発行済株数14404千株
PER(26/6DO予):10.5X PBR(1.11X)配当(25/6予)80円 配当利回り:3.8%
・25/6期20.2%増収27.4%営利増とスマホ部品好調、産機・半導体回復、自動車計画通り
・26/6期4.1%増収3.5%営利増予想と機械器具以外横ばい基調を想定も上振れ期待
・中計予想で27/6期に売上高400億円、営利50億円目標は達成可能
25/6期20.2%増収27.4%営利増とスマホ部品好調、産機・半導体回復、自動車計画通り
スマホや自動車電装部品用コネクタを主力に事業展開。8/8に25/6期決算が開示され、8/29に説明会が開催された。25/6期は売上高333.22億円(期初計画比24.5億円上振れ、2/10修正予想比6.28億円上振れ、前期比20.2%増)、営利42.92億円(同4.59億円上振れ、同1.41億円上振れ、27.4%増)、経常利益42.06億円(同3.79億円上振れ、同1.14億円上振れ、14.7%増)と好調に推移した。
売上高の内訳では、主力の電子部品事業が売上高256.23億円(期初計画比27.89億円上振れ、25.4%増)、営利47.02億円(45.0%増)と伸長した。中身は電子部品コネクタが売上高183.42億円(同23.32億円上振れ、14.6%増)と廉価版多機能スマホ向けが好調に推移し売上高75.12億円(旧会計基準で56.2%増)、産機・半導体向けも21.46億円(13.6%増)と回復してきた。
さらに自動車向けは125.92億円(20.2%増)となった。自動車生産の回復が寄与し電装化の中で94.65億円(15.5%増)となった。また車載部品ビジネスでは31.27億円(37.3%増)となったが、トヨタヤリス向けリチウムイオン電池部品21.48億円(44.0%増)と伸長、新たな車載センサー向けは7.48億円(1.1%増)と伸び悩んだが、新規に1社増加などが寄与した。
もう一方の主力製品である住友電装向け自動車電装用コネクタは、売上高49.22億円(同4.30億円増額、11.4%増)、営利6.94億円(10.8%減)となった。アイテム数の増加、単価のアップはあったものの、材料高などの影響等でコスト増から利益は減少したとみられる。
次に機械器具事業では売上高64.40億円(期初計画比0.74億円未達、12.5%増)、営利7.41億円(10.3%増)とほぼ計画線の推移となった。医療組立は27.46億円(同0.68億円上振れ、10.9%増)と受注拡大で安定した売上増が続いている。
機械器具(自動機器)は43.07億円(同1.27億円上振れ、25.3%増)となった。中心となる住友電装向けワイヤーハーネス製造設備向けが29.67億円(34.5%増)と好調だったことが寄与した。
金型部門は売上高12.52億円(同02.67億円未達、19.8%減)、営利2.55億円(58.4%減)と、電子機器向け、自動車電装向け金型受注が不振で収益低迷となった。
全体を通じて営業利益面の増減要因では増収効果が55.97億円あり、加えて棚卸高などの未実現が7.37億円、一方で原材料、労務費、経費増などのコスト増影響が39.37億円あり、順調な収益拡大となった。
26/6期4.1%増収3.5%営利増予想と機械器具以外横ばい基調を想定も上振れ期待
26/6期会社予想は、売上高346.93億円(4.1%増)、営業利益44.41億円(3.5%増)、経常利益44.45億円(5.7%増)、税引利益27.84億円(0.9%増)予想と、自動車関税やスマートフォンの動向の不透明などで全体として横ばいの予想となっている。
部門別売上では部品事業が売上高253.88億円(0.7%減)予想。スマートフォンが多機能端末の廉価版は伸び悩むとして減収を想定、一方、車載部品ビジネスは採用増で36.30億円(16.1%増)を見込む。これを引いた電子部品コネクタは169.70億円(3.4%減)となっており、車載用コネクタは電動化で伸びると見ている模様。
一方、自動車電装用コネクタは47.88億円(2.7%減)予想。トランプ関税影響、EV化の伸び率鈍化などでハーネス需要が不透明が要因と見られる。
機械器具事業は76.67億円(2.8%増)と、住友電装のハーネス自動化投資の継続が寄与する見通し。医療組組立つは緩やかな拡大を見込む。
全体の利益面では、人件費増や原料価格アップなどの影響があるものの、生産効率の向上などでカバーし、緩やかの増益を確保するとしている。
現状、トランプ関税実行の日程が決まり、トヨタのヤリス向けなどの好調が続いていることなどから、慎重な会社予想に対し、多少上振れがきたいされる。
中計予想で27/6期に売上高400億円、営利50億円目標と営利1年達成遅れも上振れ期待
会社側では昨年、中期経営目標として27/6期に売上高400億円、営業利益50億円とした。
事業別の売上開示は部分的な開示しか無いが、DO推定で27/6期は金型20億円、部品297億円、機械器具83億円程度とみられる。
部品セグメントではスマホ向けのシェア拡大、自動車部品事業の継続的な投資と事業拡大が見込める。特に車載部品ビジネスでは27/6期に40.5億円程度にする見通しも、過去からの推移では計画以上に推移しており、昨今のトヨタの販売状況、日米自動車関税の15%実施の決定も正式に決定したことで、上振れて推移が期待される。
自動車電装用コネクタは世界の自動車用ワイヤーハーネス市場規模が、2024 年の521 億 ドル予想から 2032 年に 819 億 ドルに成長するとの予測もあり、矢崎総業と2強の住友電装に対し、能力増強も継続、自動車の電動化から順調に売上拡大が見込まれる。
機械器具では世界シェアトップを誇る住友電装向けのワイヤーハーネス製造装置の生産能力増強、新規事業領域への参入などが見込まれる。医療機器医組立ではテルモ向けカテーテルで自動化システムを新工場に導入、収益性の向上を実行する。現在、カテーテルは心疾患領域の市場がメインで高齢者人口増から安定事業として着実な収益の拡大が期待される。
また同社は技術開発分野、新規事業の創出も打ち出している。金型技術の進化・深化では高速通信向けコネクタ市場参入を模索する。また金属粉末射出成形も開発を始めた。
今回、特に力点をおいて説明がなされたのが、有限会社ナプラが保有する新たなメッキ技術IMC技術の活用である。ナプラのIMC技術は、Sn-Cuをベースとした金属間化合物(Intermetallic Compound)にある。この材料は、ナプラ独自のNFM(Nano-Function-Metal)製造技術である「ナノマイズ法」によって、均一かつ均質な微粒構造を持ち、ナノレベルでの構造制御によって従来の材料では不可能だった性能を可能にすることが革新的である。高性能かつ費用対効果に優れた接合材料であるとともに、再溶融現象が起こらない優れた熱安定性、ボイドの抑制、高いせん断強度、およびウィスカが発生しない点も加わる。これら全てをSn-Cuをベースで実現、高価な銀焼結材に代わる革新的なソリューションとしての位置づけができる。同社はナプラと提携し、IMC技術を活用し、従来の電解めっきでは対応が困難であった高耐熱・高耐久・耐腐食性に優れためっき加工の量産化を目指す。最も有望な分野は、優れた熱管理と耐久性が不可欠な自動車用パワーエレクトロニクス(EV、e-アクスルなど)などが期待される。またプラズマ技術の開発として革新的食品鮮度維持技術「ナノスーツ」活用も注目される。同社は、環境省 の実証・社会実装プロジェクト「生物模倣を活かした革新薄膜…“NanoSuit法”を用いた鮮度保持技術の社会実装」に共同実施者として参画(代表:NanoSuit(株))している。ナノスーツとは(食品向け)、生体適合性高分子の水溶液を食品表面に塗布し、大気圧プラズマを当ててナノメートル級の自立薄膜(NanoSuit膜)を形成。これが水分蒸発を抑え、表面をバリア化してカビ・微生物の増殖抑制や鮮度維持に役立つ。膜厚は“ナノ”レベルで光学観察やSEM用途で開発された技術が食品応用に展開されたもの。同社は実生産対応のナノスーツ処理装置の開発を行い、自社の自動機器ビジネスに新たな事業領域として加える計画。
いずれにしても、既存事業に加え車載部品事業が有力事業として本格拡大し、さらに新規事業の創出も期待されることから、同社収益は着実な成長を続けると見られる。
株価は日経平均の大暴落時に同時に大幅下げを演じ4/7に1289円まで瞬間的に下落した。その後、5/14の25/6Q3決算で25/6期を増額修正したこともあり順調に上昇してきた。さらに8/8の本決算発表も上振れ着地し26/6期も緩やかな成長が続くとして、8/25には2162円の年初来高値を更新し、その後も高値圏で推移している。現在26/6期会社予想EPS194円に対しPER10.7倍は東証プライム電機平均PER18.2倍に対し割安感があり、類似企業のエノモトPER15.5倍、納入先の各コネクタメーカーのヒロセ電機(6806)の23.4倍、日本航空電子工業(6807)の13.3倍と比較しても割安となっている。今後、リチウムイオン電池関連の事業拡大、車載向け精密コネクタ用部品の拡大、住友電装向けの拡大も見込まれ、さらに新メッキ技術IMCの実用化なども期待でき、ポジティブ継続と考える。
*エノモト(6928)、ヒロセ電機(6806)、日本航空電子(6807)との比較
(H.Mirai)