9月12日に開催した三菱マテリアルのタングステン事業戦略説明会の続き。本文は、説明会資料を見ながらお読みください。なお、資料所領はこちら。
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〇三菱マテリアルのタングステン事業戦略について
●タングステン事業の各社概要(資料13ページ)
質問が多いStarckと日本新金属の違いをまとめた。Starckの特徴としては、規模が大きいこと。これはやっぱりプロセス型の事業なので、規模の大きさというのは一定程度でかなり大事ということがあり、高効率で大量生産をすることでコストが下げられるので、W/WCの粉末の大量生産を強みとするグローバルプレーヤー。一方、日本新金属は、どちらかというとユーティリティプレイヤー的と言いますか、応用が色々効く、小回りの効く部分を事業の強みとしている。後ほどで日本新金属の説明あるかもしれないが、顧客向けのカスタマイズ製品に特化、あとは電子部品、半導体向けの高付加価値に注力とあるが、主力はやはりバルクで、大ロッドで作っており、どちらかというとスタンダードなものを、安くたくさん作るということに長けている。日本新金属はユーザーの細かい要請、粒度だとかについて細かいカスタマイズ要請に応えられる、つまり小ロットで色々作れるということで、コスト的には、やはりStarckに負ける部分はあるが、逆に対応力のきめの細かさという点において大きな強みを持った事業体だと考えている。
製品、品種で見るとStarckは、タングステン粉末、タングステンカーバイド粉末、あるいはタングステンからできる化成品が、主な生産品目になる。日本新金属は、これらに加えて高純度タングステン粉末、二次電池向けのタングステン化成品、あとはモリブデン関連製品、非酸化物セラミックス粉末、ヘテロポリ酸といったものを非常に細かく製造しているところが違う部分で、先ほどクロスセルと言ったが、Stackの欧米の販路を活用して、ここら辺の日本新金属の製品に加算をしていきたいという狙いがある。
あと、製造技術では、先ほどから説明しているStarckは大規模生産、効率的な生産技術、あとは省人化技術。やはりドイツの会社なので細かく人を圧縮した、なるべく少ない人間で、たくさんのものを出していくという技術。あるいはそのリサイクル技術で、彼らは溶融塩というプロセスを取っており、環境負荷が低い方法でリサイクルを行っている。一方で、日本新金属は、ユーザーの特注品の生産、あるいは高純度化技術(高純度タングステンなど)あるいはリサイクル技術、これ後ほど秋田工場でやっているのでプロセスを参照。日本新金属は、酸化焙焼の仕組みでリサイクルをしている。
生産体制、Starckは後ほど説明するが、ドイツ本社に加え、北米、中国に生産工場を持っている。日本金属は、大阪本社工場(豊中)と秋田工場の2拠点体制で、日本市場に注力してやってきた。Starckは、需要の高いエリア。日本は日本新金属が各エリアで高いシェアを維持していくための仕組みが整っている。売上高などは図表の通り。
〇H.C.Starckの概要について
●H.C.Starckについて(資料15ページ)
世界の生産拠点が、全体3か所、従業員数はグローバルで770名。経営アカウント向け、基本的にはほとんど直売なので、キーアカウント向け、トップ研究機関との協業で、ドイツの大学の研究機関とかに繋がりも非常に深い。ドイツの中でも、またヨーロッパの中でも、タングステン製品のオーソリティとして、研究機関でも広く知られた会社。あとはゴスラー、ドイツの本社になるが、そちらでのリサイクル比率というのは80%とおり、あと20%はタングステン精鉱からではなくて、中間性製品、APTを使ってやっている。リサイクル80%は、本当にリサイクルした原料で作っているのが特徴。
登録済み特許件数は100件以上、出願中でも140件ある。先ほど多ロッドで種類が少ないって説明したが、基本的には650種類以上のタングステンス関連製品を持っている。分析も、大学とか他の企業から幅広く委託を受けて事業にしているのが特徴。
●グローバル拠点(資料16ページ)
Starckは世界の主要経済地域に3つの生産拠点と3つの営業拠点を展開している。ドイツのゴスラーは本社になるが、これ位置的にはハノーバーから車で1時間半ぐらい。元々銀山があって、昔はタングステンも掘っていた。今はもう閉山してしまっているが、ゴスラーの銀座は、世界遺産で、非常にいいところ。春から秋にかけてピクニック、山歩き、あとは公道巡りなど、山間の非常にのどかな、ダウンタウン、オールドタウンは非常に可愛らしい町に所在をしている。
カナダのサーニャは、ペトロケミカルの集積地なのでユーザーに、非常に恵まれた環境にある。これは、位置的にはカナダの中でも最南端にあたるで、ミシガン州とカナダの国境から30分ぐらいのところに工場があるのが特徴。アメリカのボストンは営業マンがいる。中国は上海に営業拠点があるが、贛州エリアに会社が2社ある。1つは、JVのパートナーの会社がマジョリティを持っている一次精鉱の会社で、我々がマジョリティを持っているのが精製する方でAPTまで作る工場を、Starckがマジョリティを持って運営をしている。需要の大きい中国においても事業展開をしていることで、中国に関しては中国内での製造・販売ということがメインになっており、あまり大きく輸出も、もちろん輸出規制が変わるまでは日本とかその他の地域に輸出していたが、主目的としては中国の中にある精練会社。唯一ヨーロッパの技術で生成をしているということで、非常に品位の高いタングステンが出せるということで、付加価値の高い、要は値段の高いタングステン粉を販売している。
●グローバルテクノロジー・イノベーション(資料17ページ)
「プロセス」と「製品」を基盤に、グローバルでの技術を中心に伸ばしてきた会社。今ドイツで取り組んでいるのが、新しい持続可能なプロセスの開発いうことで、革新的な技術で競争力を向上。あとはリサイクルと精鉱の濃縮技術を上げていくということを目指している。あとはプロセス、精練プロセスについても、各社独自の仕組みを持っているが、それについても常に最新のものを目指している。あとはプロセスの最適化ということで、規模ののみならず、やっぱり効率を上げてコストを削減と、歩留まりを上げていくということ。エネルギー効率を上げて、カーボンフットプリントを意識した製造に移していくことを目指している。
〇主なQ&A
Q、タングステンリサイクルについてと、収益構造について
A、スクラップは基本買ってくる。ルートは2つ。一つは、スクラップ業者から購入する。後は、工具の販売先から回収してくる。有価金属であることを理解しているので価格を提示して買っている。スクラップ業者との違いは、スクラップ業者はマージンが乗っているので、自社で回収したほうが安くなる。自社で回収した方が儲かる。今、APT価格が高いが、スクラップ価格は、それに敏感に連動ないので、APT価格が上がれば収益のチャンスが非常に増える。APTが下がった時に、スクラップが割高になることがあるが、いままで大きく負けたことが無い。リサイクルはAPTが上がると収益が出やすい。
Q、タングステン精鉱からの生産コストについて、タングステンリサイクルとのコストの違いについて。また、リサイクルで、CO2は付加価値が付けられるのか?
A、Starckは環境負荷が小さい方法でリサイクルしており、同社全体では生産量に対しては薄まってきている。また、精鉱から作るのとリサイクルするのでは、自社ルートで回収したものからリサイクルする方が儲かる。精鉱は中国次第、APTの価格は中国次第なので。
<日本新金属:秋田工場>
こちらの方は、予定時間をオーバーしたこともあり、10分程度の淡白な説明となったため、説明会資料を参照。
(IRuniverse 井上 康)