わが国からのスポンジチタン主要仕向け先の一つである英国の貿易統計より25年7月のスポンジチタンの輸入量は以下の通り。なお、同統計は基本的にスポンジチタンメーカーが存在する国からのスポンジチタンのみ(インゴット等を除く)の輸入量のみを扱っている。また、米国の統計と違い英国の統計ではカザフスタンから輸入価格が算出できる。
英国のスポンジチタン輸入は、20年ほど前まではロシアや米国のウエイトが高かったが、最近は日本からの輸入が多くなっている。米国は2020年に米国最大手のTIMET社がヘンダーソン工場を閉鎖し、スポンジチタンの生産から撤退したが、その後も米国から輸入続いている。また、米国ではロシアのスポンジチタンを、ロシアのウクライナ侵攻を機に22年頭に輸入を禁止したが、英国は、禁止していないため、その後も輸入が続いていたが、2023年11月以降、輸入が止まっている。また、平均輸入価格として算出した値が20ドル/キログラムを超えるものは異常値として非表示としている。
<25年7月>
〇日本
輸入量:409トン、前年月比2.2倍(2ヵ月連続)、前月比56.5%増(3ヵ月ぶり)
輸入価格:10.61ドル/キログラム、前年同月比43.7%下落(3ヵ月ぶり)、前月比13.2%下落(2ヵ月連続)
図表1、日本からのスポンジチタン輸入量と輸入価格(トン、ドル/キログイラム)

出所:英国の貿易統計よりIRU作成
〇米国
輸入量:428トン、前年同月比16.9%増(2ヵ月ぶり)、前月比2.4倍(2ヵ月ぶり)
輸入価格:16.61ドル/キログラム、前年同月比3.4%上昇(3ヵ月ぶり)、前月比0.5%上昇(4ヵ月ぶり)
図表2、米国からのスポンジチタン輸入量と輸入価格(トン、ドル/キログイラム)

出所:英国の貿易統計よりIRU作成
〇中国
輸入量:微量トン、前年月比99.8%減、前月比- (月別輸入量の凸凹が大きく、輸入量がゼロの時も多い)
輸入価格:異常値ドル/キログラム、前年同月比-、前月比-。
輸入価格の変動があまりにも大きすぎる。
図表3、中国からのスポンジチタン輸入量と輸入価格(トン、ドル/キログラム)

出所:英国の貿易統計よりIRU作成
〇カザフスタン(旧ソ連時代の最新工場)
輸入量:-トン、前年月比-(-)、前月比-(-)
輸入価格:-ドル/キログラム、前年月比-(-)、前月比-(-)
図表4、カザフスタンからのスポンジチタン輸入量と輸入価格(トン、ドル/キログラム)

出所:英国の貿易統計よりIRU作成
〇サウジアラビア
輸入量:126トン、前年同月比-(-)、前月比2.3倍(-)。
輸入価格:9.32ドル/キログラム、前年同月比-、前月比12.6%下落(-)
図表5、サウジアラビアからのスポンジチタン輸入量と輸入価格(トン、ドル/キログラム)

出所:英国の貿易統計よりIRU作成
<ロングバージョン>
図表6、日本からのスポンジチタン輸入量と輸入価格(トン、ドル/キログラム)

出所:英国の貿易統計よりIRU作成
図表7、米国からのスポンジチタン輸入量と輸入価格(トン、ドル/キログラム)

出所:英国の貿易統計よりIRU作成
図表8、中国からのスポンジチタン輸入量と輸入価格(トン、ドル/キログラム)

出所:英国の貿易統計よりIRU作成
※米国の時と同じく、品質がまだ安定していないことが影響しているのかもしれない。また、価格の変動が大きすぎるため、安定を好む航空機向けには適していない(航空機は受注から納入まで約2年程度かかるため、航空機メーカーはコスト面から大きな変動を好まない)。
図表9、カザフスタンからのスポンジチタン輸入量と輸入価格(トン、ドル/キログラム)

出所:英国の貿易統計よりIRU作成
※輸入量が安定しないのは、ロシア品の輸入を禁止した米国向けに代替輸出しているのだと思われる。
図表10、サウジアラビアからのスポンジチタン輸入量と輸入価格(トン、ドル/キログラム)

出所:英国の貿易統計よりIRU作成
※東邦チタニウムのJVがあるサウジの工場は航空機向けの認定を取っているがエンジン向けの認定を取っていない。輸入価格からみてTIMERT社の英国工場向けと推測されるが、本社のある米国向けがメインにしているため、輸入量が安定していないと思われる。
図表11、ロシアからのスポンジチタン輸入量と輸入価格(トン、ドル/キログラム)

注意: 2023年11月以降輸入無し。
出所:英国の貿易統計よりIRU作成
(IRuniverse 井上 康 )