スイス資源大手グレンコアのオーストラリア支社は9月15日、自社ホームページ上で、クイーンズランド州(QLD)の鉱山運営状況をまとめた報告書を発表した。同社は同州北部のマウント・アイザ銅製錬所をについて、7月に一部を閉鎖した。ただ、銅価格の先行き上昇期待が根強い中、同州の政府筋からは鉱山を支援すべきとの声も上がり始めているという。
■1931年操業開始
マウント・アイザ銅製錬所の位置
(出所:グレンコア発表資料)
プレスリリース:Economic contribution of Glencore's metals operations in North Queensland
マウント・アイザ銅精錬所は1931年に操業を開始した古い鉱山で、既に鉱山としての寿命を迎えたとの見方から7月末に地下銅採掘を終了した。
プレスリリース: Mount Isa Copper Operations (MICO) celebrating a legacy of more than 70 years
グレンコアは、このマウント・アイザ銅製錬所と、やはり豪州で運営するタウンズビル製油所ついて全面閉鎖を検討中としている。理由は豪州の鉱業事業に対する補助金が中国などに比べ見劣りし、コストがかかるためだ。現地紙のノースウエスト・ウィークリーは9月15日、「グレンコアは既にリストラ対象にする人数など閉鎖コストの計算を始めた」と伝えた。
■せっかく銅の需要拡大期待が強いのに
一方、閉鎖されるQLD政府側には、雇用など地域経済への打撃や中長期的な損失を懸念する声が上がっている。9月18日のオーストラリア・タイムズは、州高官の1人が「銅に依存する再生可能エネルギー技術への投資の増加を考慮すると、製錬所の閉鎖は地域の経済能力にとって大きな損失となるだろう」と警告したと伝えた。また、別の州高官は、解決策を見つけるという政府のコミットメントを示し、現在、今後の潜在的な道筋についてグレンコアと協議中だと述べたという。
ただ、マウント・アイザ銅製錬所のような古い鉱山は環境面での負荷が大きく、政府として支援を増やすのは、認可など法的条件のハードルが高い。そうかといって最新式の精錬所を建設するにも費用が掛かる。豪州は人件費に加え電気料金などのインフラ費用も割高で、特に外資系企業は政府に支援を要請するが、応えきれないのが実情だ。
(IR Universe Kure)