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ステンレス鋼材国内市場近況2025#34 AD調査で増える中国以外からの輸入

2025/09/18 16:49 PRO
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ステンレス鋼材国内市場近況2025#34 AD調査で増える中国以外からの輸入

決して国内のステンレス鋼材需要は盛り上がっていない。メーカーの生産も低位安定・・その直接あるいは間接的な影響要因として、ステンレス鋼材の輸入増加がある。今年は上半期で15万トン超の輸入量があり、今年は過去最高の31万トン超が予想されている。
https://www.iru-miru.com/article/77611

 

かつてはステンレス鋼材の輸入先としては韓国が圧倒的シェアだったが、現在では中国からが最大。それはやはり「安い」からなのだが、安かろう悪かろう、ではなく、安くて使える鋼材という評価が定まってきたことで着実に日本での輸入シェアを伸ばしている。しかし、それも度を過ぎるとAD(アンチダンピング)関税をかけますよ、ということになり、実際に今年の7月22日に中国、台湾のステンレス鋼材についてAD調査に入る、と発表された。

https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/investigation/stainless/data/20250722_NewsRelease.pdf

そして、最近、9月に入って経産省は中国、台湾のステンレスメーカー各社にモニタリング調査票を送っている。
台湾のYUSCO、Walshin、中国のTISCO、Bao、宝新、ヨンジン(Zhejiang Yongjin Metal Technology )、POSCOの張家港(現在は青山集団)など。
この日本のAD調査は60日間の猶予期間があるため、中国企業への照会は殺到した、という。つまり日本のユーザー側に中国製ステンレスのニーズがかなりあることの証左でもある。
実際に、ヨンジンの日本の輸入総代理店であるJoy Reap Japan株式会社(大阪)は活況を呈している、と聞く。社員は少ないながらこの会社に関係している日本の元ステンレスマンは少なくない。またこのJ社だけでなくとも、元大手商社のステンレス担当氏が独立し、ヨンジンのステンレス鋼材を積極的に扱っている。つまり今の日本の輸入市場はPOSCO一強からヨンジンへと傾倒している。
その影響もあるのか、POSCOJAPANの事業は縮小。九州の事務所はすでに閉鎖しており、さらに日本での事業体制は縮小していく方向にある。

ヨンジンの304系冷延コイルはキロ当たり350円前後、板加工で400円と最安値。
従って
「仮に、中国のステンレス鋼材に50%の輸入関税がかかったとしても(実際は50%まで関税をかけることはないと思われるが)、POSCOや現代BNGと同レベル。ヨンジンからの輸入はさほど落ちない、と考えられる。また、ヨンジンはベトナムにリロール工場があるため、ベトナムからの輸入が増える可能性がある。また、タイで新たに工場を立ち上げるため、先々はタイから入る可能性もある」と輸入関係者。


また、中国以外の国からの輸入も増えている。いわくマレーシアのBalステンレス、インドのジンダルステンレス。
インドからの輸入もじわり増えており、これは老舗の商社(I産業)が扱っている。AD調査がかえって輸入先の範囲を拡大させているといえよう。

しかし韓国にはAD関税はかけないのか?という素朴な疑問がある。
「ま、やはりPOSCOと日鉄は長いつきあいがあるからでは・・・」となにやら含蓄のある表現をされた流通マンの方によると、日鉄は従来からPOSCOにステンレスのホットコイルを供給していることもあり、また他の取引もあるため云々・・・。

インドネシア青山については、最近人気に陰りが出ている模様。
「インドネシア青山は納期に時間がかかる。例えばPOSCO浦項は発注から納品まで2か月だが、ネシア青山は4か月はかかる。ジャカルタから上海に運んで、上海で積み替えて、と余計な手間がかかっているから」だという。

実際に日本政府がAD関税をかけたとしても、前述した理由により、さほど輸入は減らない、との予想が大勢。
ではAD関税の導入の狙いは?
「私見ではあるが、AD関税をかけることにより、輸入材の価格水準を引き上げて、日鉄独自の鋼種、DuPLEXやFWシリーズを売り込みたいのではないか?」(さるコイルセンターのディストリビュータ担当氏)
思惑は色々、のようである。


(IRUNIVERSE YT)

 

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