「紙・板紙需給」9月
紙・板紙の国内出荷は前年同月比5.7%減、7ヶ月連続のマイナス。グラフィック用紙は7.8%減、10ヶ月連続のマイナス。パッケージング用紙は4.2%減、2ヶ月連続のマイナス。紙・主要品種は、包装用紙を除きマイナス。
紙・板紙の輸出は前年同月比6.6%減、5ヶ月連続のマイナス。グラフィック用紙は21.1%減、5ヶ月連続のマイナス。パッケージング用紙は2.1%増、5ヶ月ぶりのプラス。グラフィック用紙では、塗工紙を中心に印刷・情報用紙が南アジア、東南アジア、東アジア向けで減少。パッケージング用紙では、加工原紙、包装用紙が東アジア向けで増加。

(紙板紙需給統計)
https://www.jpa.gr.jp/file/summary/20250821023236-1.pdf
「古紙需給」
古紙の需給状況について、公益財団法人古紙再生促進センターの資料によれば今年1月から7月までの古紙回収量は古紙8,386,843tとなり前年同期比で1.1%減少。消費は8,354,576tで前年同期比2.1%減少。輸出量は今年1月から8月時点で1,219,321トンと同比16.7%の減少となっている。
古紙の回収と消費についてはどちらも前回のレポートより減りつつある状況だ。輸出量においてはタイとラオスがプラスに転じてはいるが、ほかは大きく割合を下げる結果となっている。そのため輸出量低下に拍車がかかり、底が見えない状況が続いている。

(古紙需給)

(古紙輸出量)
(出典:古紙再生促進センター資料)
古紙の需給は、入荷は1,188千トンで前年比5.0%減、2ヶ月ぶりの減少。うち新聞古紙は129千トンで前年比1.7%増、2ヶ月連続の増加。段ボール古紙は763千トンで前年比3.6%減、5ヶ月ぶりの減少となった。消費は1,184千トンで前年比4.7%減、9ヶ月連続の減少となった。在庫は594千トン、前月比では0.8%減、前年比では14.6%増となった。輸出は150千トンで前年比5.6%減、13ヶ月連続の減少となった。ベトナム、台湾、タイが主な輸出先である。
雑誌古紙以外の在庫が増している状況であり、入荷・消費ともに減少気味となっている。輸出については相変わらず全面的に量の減少が見て取れる。

【市場動向】
段ボール価格は横ばい
国内古紙市況の実勢価格を調査した。9月の国内メーカー向けの中心値は、関東地区で新聞が32~34円、段ボールが19~21円、雑誌が17~20円となっている。品種によって、他地区のほうが安いものがあり、九州地区では段ボールが高い傾向にある。
新聞は独歩高が続いているが、メーカー間での格差もある。新聞用紙マシンの停機に伴い、四国・九州での需給バランスが崩れたことで、2~3円差が生じているもよう。
また、段ボールは、段原紙の製品値上げが発表された中で、横ばい傾向が続く。近年の段原紙値上げは、段ボール古紙の基準価格と連動せず、据え置きが通例となった。原紙需要の夏枯れや在庫水準を引き下げる狙いもあって、古紙の発生や入荷も低調となっている。
雑誌は輸出市況の影響を受けて、上向き傾向にある。雑誌は、①家庭紙向け、②洋紙向け、③板紙向けの3つのグレードで品質が微妙に異なるが、特に家庭紙向けの需要が底堅い。今後、雑誌のひっ迫感が強まれば、板紙向けで段ボールとの価格が逆転し、突き上げ要因にもなりうるため。
高水準続く段原紙在庫
段原紙の製品価格は、10月に10円/キロ(一部メーカーは10%)以上の値上げをアナウンスしているが、実際に浸透するのか、その行方が注目されている。
今回の主な値上げ理由は、①原燃料・資材・薬品の価格上昇、②人件費・物流費の高騰、③環境コストを挙げている。しかし、過去4回の原紙値上げ時以上に、交渉は難航するとの見方がある。背景には、①原紙の在庫水準が高水準、②値上げ理由の決め手に欠くこと、③国内外での需要が停滞、④専抄メーカーとの足並みの乱れなどがある。
段原紙の国内外の需要は低調で減産措置が続く。原紙の在庫量は6月末に69万8千トンと過去最多を記録した。その後、7月末に63万4千トンに減ったが、再び8月末には65万7千トンとリバウンドを見せた。
段原紙輸出も各メーカーの採算ラインを下回りつつある。輸出量は今年1~7月実績で45万トンと、対前年同期比7.2%減となった。8月には、フィリピンの貿易産業省が段原紙の輸入に対しセーフガード(暫定的輸入制限措置)を発動。日本からは毎月1万1千トン前後輸出されていたので、影響も大きいとみられる。
古紙回収量の調査
地域別・都道府県別の人口増減と古紙回収量の変化を比較した。
2010年の日本の総人口数(日本人と在留外国人の合計)は1億2806万人だったが、24年は1億2385万人となり、3.3%の減少となった。2000年以降では、00~10年までは人口は増加の一途を辿っていたが、11年以降は減少が続いている。特にコロナ禍以降は減少率が大きくなっている。
日本の人口ピークは08年の1億2808万人だったが、11年以降から減少が続いた影響により、24年は1億2380万人となり、ピーク比で3.8%減。人口数としては491万人の減少で、これは日本の都道府県別では人口第9位の福岡県(510万人)の人口規模が消失したことになる。
都道府県別では10年から24年にかけて人口数が増加したのは7都県に限られてた。7都県とは、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・愛知県・福岡県・沖縄県。7都県のうち関東地区が4つ、九州地区が2つで全て太平洋側である。
最も人口数が増加したのは東京都で、10年比では7.8%増、人口数では103万人増。東京・神奈川・埼玉・千葉の首都圏の1都4県では、合計で140万人ほど人口が増えていることになる。
関東以外の増加では、沖縄は10年比5.3%増、人口数では7万4千人増。また愛知は0.7%増、人口数では5万5千人増。福岡は0.5%増で2万6千人増となっている。
古紙回収量の変化
以前までは地域指数を入れていたが、今回は単純に人口比で都道府県別の古紙回収量を推計した。全体の古紙回収量を人口で割ったものを1人当り回収量として、これに単純に人口数を掛けたものである。10年の古紙回収量は2172万トン、人口数は1億2806万人なので、1人当り古紙回収量は169.9キロとなった。しかし24年は135.4キロとなり、この14年間で34.5キロ減少したことになる。人口は11年から、古紙回収量は14年から減少が続いている。
調査結果としては、全ての都道府県で古紙回収量は10年比で減少となった。人口の増減では7都県が増加となっていたが、古紙回収量の減少を補えていない。しかし減少率は都道府県によってかなりバラツキがある。やはり最も人口が増加している東京都は、古紙回収量の減少は最小限に留まっており、10年比で14.3%減となった。しかし量としては32万トン減で、減少量としては最多となる。また神奈川・埼玉・千葉・愛知・沖縄も10%台の減少に留まった。逆に最も減少率が高かったのが秋田の33.5%減、次いで青森の31.9%減。東北は宮城以外は全て30%台の減少となっている。また徳島・高知も30%台の減少率となっている。
新聞は製品・古紙共に低調 古紙3品は回収減・在庫増
古紙輸出市況は相変わらず弱含みが続いている。米国OCC(#12・選別した段ボール古紙)のタイ向け価格は168ドルとなり、8月下旬の170ドルから2ドル安となった。またマレーシア向け及びベトナム向けは172ドルで、こちらも前月下旬の175ドルから3ドル安となっている。
RISIによると、既に米OCC(#12)のアジア向けでは、170ドル以下の価格でしか買わない、売れないという報道も出ており、引き続き下落傾向が続くと思われる。
また米OCC(#11・一般的な段ボール古紙)のアジア向け輸出価格は、160~165ドルで推移しているが、前述のようにグレードが高い#12のOCC価格が下落していることにより、一段と連れ安が進むことが予想される。これらを踏まえると、10月の米OCC輸出価格は、#11が150ドル台後半、#12が165ドルまで下がると思われる。
欧州OCC(95ー5、選別した段ボール古紙)は153ドルとなり、こちらも8月下旬の158ドルから5ドル安となった。欧州は全体的に再生資源価格の下落が続いている。米国品が更に下落予想となっているので、10月には150ドルを割ってくると思われる。
日本OCCも、米国・欧州品の下落に伴い、輸出ドル価は下落している。現在は162~164ドルが主流で、前月の165ドル中心から1~3ドルの下落となった。また台湾向けは既に150ドル台まで下落しており、157~162ドルとなっている。いずれの地域でもOCC価格は弱含みとなっている。
今年の中国の国慶節は10月1日~8日の7日間。各報道でもあるように、中国の25年7月の対米輸出は前年同月比22%減、8月は同33%減となった。米中両国は5月に追加関税の引き下げを行ったものの、依然として一部関税は残っており、その影響とみられる。ただし中国の貿易全体では、欧州向けや東南アジア向けが伸びたため、米国向けの大幅減があったものの、8月全体では4.4%増となった。国慶節に入る中国だが、国慶節明けの輸出状況とパッケージ需要が伸びてくるかどうかが注目される。
国内古紙価格
国内の古紙価格については、段ボール古紙が18円、新聞紙古紙が17円、雑誌古紙が15円程となっている。概ね横ばい推移を続けているが、新聞紙古紙については輸出価格が36円と相変わらずFOB価格であるが高めに付けられている状況だ。また、雑誌古紙についても輸出価格は19円程とやや高めの設定になっている。

(段ボール古紙価格と雑誌古紙価格の推移 市中実勢 JPY/kg 年単位)
ベトナムの古紙回収事情
今回はベトナム特集。22年に訪問して以来訪れていないが、中国の古紙禁輸以降は日本から古紙の最多輸出国ということもあり、ベトナムの需給状況は関係者も注目するところである。特に近年は古紙回収量の頭打ち、中小製紙メーカーが林立するバクニン地区の工場閉鎖、そして日系メーカーの撤退が話題となっている。
ベトナムの製紙・古紙需給状況
2022年までのベトナムの製紙・古紙需給のデータが手元にあるので、これを元に現在の状況についてまとめた。ベトナムの製紙・古紙関連で最近の動きとしては、①古紙不足と回収率の頭打ち、②バクニン地区の閉鎖、③日系製紙メーカーの撤退増が挙げられる。
まずは①から。下図や下表のように、ベトナムの国内古紙の使用比率は年々下落している。紙・板紙生産量・消費量が増加することで、原料となる古紙消費量も増加していく。しかし古紙回収量・古紙回収率が思うように伸びず、全く足りないので古紙輸入量が増加する状況が続いている。2017年以降にその傾向が顕著になっていることから、中国の大手製紙メーカーがベトナムに生産拠点をつくり、そこで生産した主に段原紙を中国に輸出していることが影響していると考えられる。それらは古紙として戻ってこないので、古紙回収量・回収率が上がらない理由の一つとなっている。
しかし2022年でみると、紙・板紙消費量が596万トンに対して、古紙回収量が183万トンで、古紙回収率が30.7%というのはいくら何でも低すぎる気がする。古紙回収率が低い原因としては、①ごみ化している、②リユースとして使用、③製品輸出が多い、④パッケージとしての輸出が多い等の理由が考えられる。ちなみに中国は④の輸出の出超量が1000万トン以上あるので、古紙回収率が50%台に留まっている。中国でパッケージの1000万トンの輸出がなかった場合、回収率は70%台になる。
ベトナムは、ごみ化していることはあまり考えにくいので、②③④の合わせ技だと予想する。つまり地方部ではリユースとしての用途がある程度あるかもしれない。また段原紙輸出量が98万トンあり、輸入分33万トンを差し引いても65万トンの出超となる。生産量に対して16%が出て行っている計算になる。そして④のパッケージとしての輸出も多いことが予想される。22年でみると、ベトナムの輸出総額が3713億ドル、輸入総額が3589億ドルで、輸出が124億ドル多く、パッケージとしての輸出分が多くなっている。
バクニン地区の全ての製紙工場が閉鎖
ベトナムの人口は1億170万人で、24年に初めて1億人を超えた。南北に約1700キロと細長いことが特徴で、日本で例えると青森から福岡間の距離である。人口密度としては、主要都市のホーチミン、ハノイに次いで3番目に高いのがバクニン省となっている。そのバクニン省の中には以前は多くの工芸村があり、各品目に村全体が特化した業態となっていた。品目例では、鉄、廃プラ、アルミ、石、セメント、紙等。日本の富士市や中国の富陽地区と同様、多くの中小メーカーが林立している状況だった。
バクニン省の製紙の街であるフォンケー村では、全盛期には350社ほどの中小製紙メーカーが林立していた。しかし徐々に環境規制が強化されたことで、そのメーカー数も減少していった。以前からバクニン地区は、ベトナム全土で最も環境汚染が進んでいる地域とされていた。このような状況の中、ベトナム政府は以前からテコ入れを続けていたものの、あまり効果的ではなかった。
そこでベトナム政府は2020年に環境保護法、22年に環境保護法細則政令を施行。これによって伝統文化を継承するクラフトビレッジは奨励するものの、有害物質を排出する業種や工場は立ち除きや営業停止とする方針を定めた。
施行後の22年から25年3月までに国の立ち入り検査が複数回、繰り返し行われた。立ち入り検査では、1軒ずつ製紙工場の建築許可・営業許可・環境許可と実際の業務に乖離がないかをチェックするとともに、廃棄物の許可を持っているか、廃棄物を適性に保管しているか、防火設備を設置しているか、電気設備の安全基準が守られているか、残渣や水処理が法定基準内で適性に処理されているか、排出水や蒸気に違法物質が含まれていないか等、全ての工場の入念な検査が行われた。
その結果、22年時点で137社の中小製紙メーカーがあったが、69軒は防火設備及び蒸気基準の不適合で営業停止、30軒は電気関連の基準不適合で営業停止、23軒が環境基準不適合で営業停止、14軒が廃棄物処理の無許可と不適正処理で営業停止となった。これらの行政指導によって25年3月末には全工場が営業を停止した。
停電で止まっていたマシン。いずれも22年撮影(左)、バクニン省で野積みされていた米OCCと日OCC(右)
25年1月に開かれたバクニン省人民委員会の会議では、操業停止した企業や個人、家族、協同組合等に対して、1社当り2億ドン~3億ドン(約110万円~170万円)の移転補償費用を支払う支援策が決議された。これは違反施設は対象外となっているので、行政罰を受けた場合は罰金を支払うと支援を受けられる。
壮大な内陸港の構想
137社の中小製紙メーカーの移転後、バクニンのフォンケー地区はどうなるのか。バクニン省によると、2035年を目標に内陸港と大規模物流施設を建設する方針を固めている。計画書によると、内陸港のフォンケー港及び周辺施設の総面積は約95ヘクタール(95万平米)になる予定で、東京ドーム20個分の敷地面積となる。計画の目的としては、将来的に中核市を目指すバクニン市の都市計画を整備し、近代的な機能を備えた内陸港と陸路輸送との連携強化、物流サービスの拡充、通関倉庫の設置等を掲げている。港と通関設備を備え、首都ハノイの玄関口の役割を担うのが目的となっている。またこれまでの環境汚染地域のイメージを払拭するため、最新鋭の廃棄物焼却工場を開設し、その蒸気を市内の工業団地で有効利用することで、大気汚染と廃棄物の両方を削減する。
この巨大プロジェクトには4兆6千億ドン(約260億円)の投資が行われる。うち4兆2250億ドンがプロジェクトの遂行費用に充てられるが、残りの3500億ドンはフォンケー村等に林立していた中小製紙メーカーの補償と移転費用に充てられる。
計画書にはこのように綴られている。「フォンケーの製紙村に来ると、目を覆うような黒煙の柱が空中に噴出され、空気が息苦しいことが分かる。そして鼻を衝くような匂いで不快感を感じ、焦げたような匂いもする。河川には工場から出るごみと排水がそのまま垂れ流している。周辺の住民が環境汚染によって深刻な健康被害に苦しんでいるのは、これらの製紙工場によるものである」。実際、その通りかもしれないが、製紙業で栄えてきた街としては、酷い言われ様である。
本紙1491号(22年9月)では、このバクニン省のペーパービレッジの様子を報じているので、KJオンラインで改めてご覧いただきたい。このような計画書に記載されているような不快な思いは全くなく、むしろ昔の中国の方が酷かったと感じたが、いずれにしても時代の流れだろう。3年前に訪問したフォンケー村の製紙メーカーの気さくな社長さんや、最近新マシンを導入した工場のオーナーたちが、現在どうしているのかは非常に気掛かりである。そして世界でまた古紙に囲まれた街がなくなった寂しさもある。
最近このバクニンを訪問した関係者によると、バクニン地区の閉鎖によって、中小製紙メーカー137社が抱えていた古紙在庫が放出された。それが今年7月以降のことだが、生産量が上がらない中で古紙在庫が放出されたことによって古紙需給が緩み、OCC価格が軟化したとされている。
ベトナムに進出した日系メーカー
ベトナムの製紙状況はかなり偏っている。それは品種によってかなり需給のバランスが異なるから。特定品種の国内生産の比率が極端に低く、印刷・情報用紙の消費量の70%、白板紙は86%を輸入に頼っている。しかし段原紙は生産・輸出が共に多くなっている。中国の大手である玖龍紙業(ナインドラゴン)や理文造紙(リー&マン)、台湾の正隆等の工場進出が相次いでおり、東南アジア全体が加工貿易地になりつつある。
日本の製紙・古紙関連の繋がりでは、2000年代初めから、家庭紙メーカーのニュートーヨー(本社・香港)が日本で余剰している込ペイやオフィス古紙、機密書類等の購入をいち早く始めた。関東地区の主に上物問屋が定期的にベトナム向けに古紙輸出を開始したことで、ベトナムとの繋がりが深くなった。
2007年には、タイの大手財閥であるSCG系列のサイアムクラフトインダストリー70%)とレンゴー(30%)による合弁会社のビナクラフトが設立。こちらは南部のホーチミンから北西40キロに工場を開設した。09年に年産23万トンのライナーマシンが稼働し、16年には年産27万トンの中芯原紙マシンが稼働していた。そして24年には北部のハノイ近郊にビナクラフト第2工場が開設。こちらはライナーと中芯を合わせて年産37万トンの生産能力となっている。同社はベトナムの古紙輸入企業としては、美国中南(ナインドラゴンの古紙調達商社)に次ぐ2番目の古紙輸入量である。19年の訪問時では、輸入古紙が7割、国内古紙を3割使用。輸入古紙は米国品が約半分を占め、欧州品が3割弱、日本品が2割弱となっていた。なお同社はベトナム国内で24ヵ所の古紙ヤード(19年時点)を運営。22年にハノイとバクニンを訪問した時には、ビナクラフトのハノイ工場開設が話題となっていた。
また2009年には、北部のハノイから車で1時間半ほどの場所に立地するフンイエン省に、コアレックス三栄(71%)と日本紙パルプ商事(29%)の合弁によるJPコアレックスベトナムが開設された。ベトナムで日系メーカーとしていち早く古紙もの家庭紙の生産・販売を開始した。敷地面積は6万平米、年産能力は2万トンで全て再生トイレットペーパー。ちなみにベトナム進出のきっかけは、同じ家庭紙メーカーのニュートーヨーから誘われたことだった。しかし近年の古紙価格高騰や原料調達の苦戦により、2023年11月に撤退を決定した。撤退前は2期連続で赤字が続き、22年12月期は売上高13億5500万円、7億4100万円の損失となっていた。
1997年設立のサイゴンペーパーも日本に縁が深い。創業からオーナー企業として運営していたが、リーマンショックで採算が悪化し、その後の事業継続が危ぶまれた。ベトナムで家庭紙の生産・販売を拡げたい大王製紙が2011年、サイゴンペーパーの株式34%を取得した。日本政策投資銀行とともに第三者割当増資を引き受け、これを元手に第二工場の建設に着手し、大幅に生産能力を拡大させた。それまでは段原紙が年産5万3千トン、家庭紙が1万7千トンだった生産量は、第二工場の開設によって段原紙22万5千トン、家庭紙4万8千トン、計27万3千トンの生産能力となった。しかし13年9月に大王製紙は全株式を売却し、その後は投資ファンドが保有していたが、18年6月に双日が株式95%を約100億円で取得し、再び日系資本の製紙メーカーとなった。
2018年には丸紅がベトナムで本格的に製紙事業に乗り出すということで、ベトナムKOAを設立。ホーチミンから南東270キロのバリアブンタウ省の工業団地に立地し、当初はライナーと中芯で年産計40万トンを生産し、将来的には年産100万トンを目指すという計画だった。しかし2020年からのコロナ禍によって建設計画が大きく遅れ、やっと22年から本格稼働を開始したが、立ち上げ時から非常に厳しい状況となった。原料調達と製品販売の両方で苦戦し、24年3月期に227億円の赤字損失を出したことで、実質的にはわずか3年弱でのスピード撤退を決めた。
撤退した日本メーカーとしては、JPコアレックスベトナム、KOA、そしてサイゴンペーパーから撤退した大王製紙を含めると3社となる。大王製紙の撤退は、特別背任で有罪となった当時の井川会長の件が絡んでいたと言われていたので、撤退理由は異なるが、前記2社は原料調達・販売網構築の両方で上手くいかなかったことが原因だった。
前述のように古紙回収率が30%台のベトナムでは、70%を輸入古紙に頼っている。日本からの輸入古紙ではキロ10円台~20円台なら採算は合うが、20円台後半~30円台になると全く採算が合わないと現地メーカーは話していた。また現地で古紙回収網を構築するといっても、3割の国内古紙をベトナムメーカーや中国メーカー、それ以外にも台湾の正隆(山發のグループ会社)や多くの外資系メーカーと争奪戦を繰り広げることになる。量が豊富な輸入古紙の方が買いやすいということも、多くの関係者が話していた。豊富な原料調達が出来るメーカーだけが、ベトナムで生き残っていく。
古紙問屋の進出
2007年からコアレックスJPベトナムの工場が本格稼働を始めたが、当時は日本の大手古紙問屋である宮崎がハノイに進出するという噂が広まった。ベトナムという未開の地で古紙を集めるのは並大抵の苦労ではない。コアレックスとしては、日本の古紙問屋と手を組みたかったということもあるだろう。宮崎がハノイ近郊に土地を取得したという話もあったが、結果的にはベトナム進出を見送った。
その後、中国が古紙を禁輸したことで、東南アジア市場の存在感が一気に増した。そんな折の2020年8月、信和商事(京都府八幡市)のグループ会社としてJUNK&CO(ジャンクアンドコー)が開設された。日本の古紙問屋としては初めてのベトナム進出となった。ハノイから車で1時間ほどの場所に立地し、ベトナムで古紙回収用としては初めてパッカー車を導入し、ベトナム国営放送で取り上げられるなど、現地で大きな注目を集めている。日本やベトナムの様々なメディアに取り上げられており、本紙でも取材できる日を心待ちにしている。
(IRuniverse Ryuji Ichimura)