
環境省の中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度小委員会は8日、第7回会合を開き、「今後の廃棄物処理制度のあり方(骨子案)」を中心に審議を進めた。相次ぐ火災発生被害が報告されている使用済みリチウム蓄電池への対応を巡り、見直しの対象になっている廃棄物処理法の枠組みでの防止策作りでは限界があるとして、資源有効利用促進法との連携も視野に議論を深めるべきなどとする指摘も出た。全体の見直しの方向性を巡り、次回会合でさらに審議を進めるという。
同小委では、「ヤード環境対策検討会」がまとめた「令和6年度ヤード環境対策検討会報告書」などをたたき台に、今後の廃棄物処理制度のあり方を審議してきており、①「不適正ヤード問題への対応と再生材供給のサプライチェーン強靭化の推進」、②「PCB廃棄物に係わる対応」、③「災害廃棄物への対応」の3つが、その柱になっている。
使用済みリチウム蓄電池問題は、「不適正ヤード問題への対応と再生材供給のサプライチェーン強靭化の推進」に関連するテーマとして、使用済み鉛蓄電池と並ぶ主要な個別品目リスクとして取り上げられてきている。取り出された巣鉛が有害廃棄物の越境移動を規制するバーゼル法の輸出手続なしに、不適正に輸出され、不適正ヤードがその温床になってとされる使用済み鉛蓄電池問題が本筋のテーマとすれば、使用後の処理問題が焦点になっている使用済みリチウム蓄電池は言ってみれば脇役。廃棄処理現場などで相次ぐ火災事故で舞台の中央に押し出された格好だ。

骨子案では、「廃棄物となったリチウム蓄電池等について、廃棄物処理工程に意図せず混入し、処理施設において火災が発生することを防止するため、収集運搬や保管時に他のものと区分することや産業廃棄物の委託契約においてリチウム蓄電池等の含有の有無を明確にするための仕組み等を導入すべきである」となっている。これに対し、同日の小委では委員から廃棄物処理法を中心とする廃棄物処理制度の枠組みでの対応には限界があり、資源有効利用促進法との連携なども考えて、リチウム蓄電池やその使用製品が通常の一般廃棄物や産業廃棄物ルートに入らないような措置をとるべきなどの意見が出された。
事務局の環境省の担当者からは「改正された資源有効利用促進法では、リチウム蓄電池を念頭にメーカー側の回収を促す制度も設けられた。経済産業省とも連携して、26年4月の施行に向けて、より実効性のある制度となるよう検討を進めたい」との回答があった。
不適正ヤード問題を巡っては、最終的なヤード規制のあり方や規制対象物の特定などについての指摘があった。「規制のあり方として、許可制、登録制、届出制、どういった規制の手法にしていくのか、具体的な規制対象物にするのか。法改正に当たっては、現場で適切に運用できるような、実効性のある制度となるよう、この会議での取りまとめ後、改めて自治体の意見を聞いて制度設計してほしい」といった指摘があった。

「PCB廃棄物に係わる対応」で議論を呼んだのが、「3.見直しの方向性」の③ 低濃度PCB含有製品及び同疑い製品に係る管理制度の創設の2つ目にある「PCBの含有が明らかでない製品についても、製造年代等からPCBの含有が疑われる範囲を特定した上で、所有事業者に対して当該PCB含有疑い製品の管理や廃棄の見込み等の状況について、都道府県知事への届出を努力義務とすべきである」とされている点。「法的責任が問えない届出制では、実効性が担保できない」との指摘である。「どういった体系が良いのか、その形式について、改めて検討していきたい」との認識が事務局から示された。

「災害廃棄物への対応」では、「3.見直しの方向性」の ②「 一般廃棄物処理計画・災害支援協定に基づく災害廃棄物処理に係る特例措置等の整備」の1番目にある「市町村における、平時の一般廃棄物処理と発災時の災害廃棄物処理の一体性と連動性の重要性を指摘する声が目立った。特に、災害発生時のイレギュラー事態の発生を前提に、現場での柔軟な制度運用を求める声がでていた。

(IRuniverse G・Mochizuki)