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デンソーが挑む、自動精緻解体システムによる資源循環型ビジネスモデル

2025/10/12 13:34
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デンソーが挑む、自動精緻解体システムによる資源循環型ビジネスモデル

2025年9月30日、IRuniverseは愛知県刈谷市に本社を置く株式会社デンソーを訪問し、サーキュラーエコノミー事業開発部長の奥田英樹氏に「自動精緻解体システム」の取り組みについてのお話を伺った。デンソーが開発を進める自動精緻解体システムは、従来人手に頼っていた廃車解体の工程を自動化し、資源の高精度な回収とリサイクル効率の向上を目指すものだ。自動車業界がカーボンニュートラルや循環型社会への転換を迫られる中、この取り組みは注目を集めている。

 

株式会社デンソーはトヨタ自動車の電装部門として1949年に「日本電装」として独立し、のちに現在の社名へと変更した。現在、デンソーはトヨタグループの一員という枠を超え、世界的なサプライヤーとして知られており、電動化や自動運転、車載半導体などといった技術や部品を国内外の多様な自動車メーカーに提供している。

奥田氏が所属するサーキュラーエコノミー事業開発部は、2035年にデンソーがどうあるべきかを見据え、循環型社会の実現に向けて2023年1月に発足した。同部署はデンソーが描く循環型社会・サーキュラーエコノミーを実現するビジョンである「人・物・エネルギー・資源・データ」の5つの流れのうち、資源とデータの流れに注目しながら自動車業界が直面するリサイクル課題の解決に取り組んでいる。具体的には、車を解体して得られるリサイクル材の質と量を経済合理性のある形で確保することを目的に、自動精緻解体システムの開発を進めている。

デンソーが取り組む自動精緻解体システム

従来の廃車リサイクルは法定処理を経た後に解体・破砕事業者が車をシュレッダーなどで処理し、素材を選別して再利用する方式が主流だった。しかし、この手法では材料純度のばらつきや不純物の混入を避けにくく、部品として再利用する際の信頼性に課題が残っていた。

デンソーはその解決策として、過去に開発した手術支援ロボットの精緻な技術を応用。破砕・選別ではなく「解体」そのものを自動化するアプローチに踏み出した。奥田氏は「選別を前提とする方式では信頼性を担保できないため、部材を選別せずに済む精緻解体に焦点を当てた」と強調する。

(デンソーの自動精緻解体システムのジオラマ)

(自動車は車種を問わず、自動で材料別に精緻解体)

精緻解体ロボットはまず、車種ごとの違いを標準化するために車両を大きく分断し、ロボットが多方向からアクセスできる状態にする。その後、ロボットが効率的に部品を取り外し、最終的に素材を分離・材料化する工程を想定している。人手を介さずに進めることを目指す一方で、人が持つ解体知見をいかにロボットに伝えるかが重要なテーマとなっている。

課題と展望

現状の日本のリサイクル現場では一部で選別機やロボットを導入しているものの、解体工程全体の自動化は進んでいない。デンソーは精緻解体ロボットにより、車体重量の90%を自動で解体することを目標としているが、解体後の素材の物流の仕組みはこれから整備する段階にある。このようなデンソー単独では解決できない課題については、BlueRebirth協議会を立ち上げ、業界全体での議論と取り組みを進めている。

全自動で車を精緻解体するというこの取り組みは世界でも例がなく、実現すれば世界初の挑戦となる。デンソーでは2035年に普及させることを目標に2020年代の実用化、2030年代の普及期を想定し、2024年にはリバー、マテック、金城産業、九州メタル産業などの解体・破砕業者と連携して現場のノウハウを取り込みながら実証を実施した。

「中古車として海外に流出する動きは止められないが、廃車が資源として流出することは国内資源循環にとって課題」と語る奥田氏。デンソーは精緻解体によって高純度で信頼性の高い原材料を取り出し、廃車に新たな価値を与えることで資源循環社会に貢献しようとしている。現在は10点の部品からリサイクル可能な材料を取り外すことに成功しているが、コスト面では課題が残る。特にシート、窓ガラスなどは解体後の資源としての価値が低くまた物流面に大きな課題もあるため、今後は技術面と経済面の両立が求められている。


「私たちの取り組みは破砕・解体事業者を脅かすものではなく、自動車リサイクルという仕事を子供たちが憧れるような産業にしたい。例えば部品に価値があるものは従来の事業者に任せ、価値がないものは我々が自動精緻解体システムによって材質として取り出す。両者が利益を得られるビジネスモデルを構築したい」と最後に語った奥田氏。

デンソーは今後、ものづくりとサーキュラーエコノミーが両立する社会を実現するために、自動精緻解体システムの取り組みを加速させていく。自動車解体・リサイクルのあり方を根本から変えるこの挑戦は、業界全体の持続可能性を高める布石となるだけでなく、日本発のモデルが世界標準へと発展する可能性を秘めている。

取材を通じて印象的だったのは、「技術革新による効率化」だけでなく、「既存の事業者との共存」を強く意識している点だ。単なる自動化やコスト削減の話ではなく、リサイクル産業そのものの社会的価値を高め、次世代につなぐ構想として語られていた。自動車大国・日本から生まれるこの試みが、どのように実を結び世界に広がっていくのか、今後の展開を注視したい。

    

2025年6月にリニューアルオープンDENSO MUSIUMにて、1950年に誕生した電気自動車DENSO号およびデンソーのオリジナルキャラクターデンまるくんと写真を撮る弊社棚町)

 

(IRuniverse Midori Fushimi)

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