2025年10月のDRAM価格は急騰傾向にあり、AI PCやAIサーバー需要の爆発的増加が主因である。特にDDR4の供給不足が深刻で、契約価格は前期比30〜50%上昇との予測も出ている。
• 主要DRAMメーカー(Samsung、SK hynix、Micron)が法人向け見積もりを一時停止する異例の事態に発展
• DDR4の供給不足が顕著:旧世代ながら依然としてPC・サーバー・IoT機器で主力
• DDR5やHBMへの生産シフトにより、DDR4の生産能力が縮小
• 契約価格は前期比30〜50%上昇の見通し
• スポット価格も上昇中:特定仕様に限らず、全体的な価格圧力が強い
1 AI PC・AIサーバー需要の影響
• AIモデルの巨大化によりHBM(高帯域幅メモリ)の需要が爆発
2020年代前半のAIモデル(GPT-3など)は数百億パラメータであったが、2025年現在のモデル(GPT-5, Gemini, Claudeなど)は数兆パラメータ規模に及んでいる。つまりAIが考えるための「情報量」が桁違いに増えている。
2巨大なAIモデルは「超高速・大容量メモリ」を必要とする。
AIモデルは毎秒数十~数百GBのデータを読み書きするため、通常DRAM(DDR/DDR5)では帯域が足りず、処理がボトルネックとなる。これを解消するためHBM( High Bandwidth Memory )を用いる。これは複数のDRAMチップを縦に積層し、GPUに超高速で接続する。なお帯域はDDR5の5~10倍以上。当該HBMを生産するためには、既存のDRAMを使用する。HBMは特殊なパッケージ技術(TSV, CoWoS など)が必用であり、Samsungや SK Hynixは通常のDRAMラインをHBM製造に転用する。その結果、DDR4やDDR5の供給が減少し、価格が急騰している。

HBMスタックの基本構造は、一番下にPackage Substrate(基板)の上にインターポーザーがあり、その上にはLogicとCPUのダイが搭載されてさらにその上層にはHBMダイがTSV(Through-Silicon Via)で接続される。通常4~12枚積層される。
なお全体は、パッケージ基板上に実装され、BGAでPCBと接続される。この構造により、高帯域・低消費電力・高密度実装が可能となり、AI GPUや高性能アクセラレータには不可欠な技術となっている。
3 PCメーカー大手のDDR4搭載状況(2025年モデル)は以下のようになっている。
① Lenovo
• 主力モデル(IdeaPad、ThinkPad Eシリーズなど):8GB DDR4が標準、16GB構成も選択可能。
• ビジネスモデル(ThinkPad L/Tシリーズ):最大32GB DDR4(SO-DIMMスロット2基)。
• ゲーミングモデル(Legion):一部DDR4搭載継続中だが、DDR5への移行が進行。
• 傾向:DDR4搭載モデルは法人向け・低価格帯に残存。新製品はDDR5/LPDDR5xが主流。
② HP
• 普及モデル(HP 15-fcなど):最大16GB DDR4(Ryzen 7000シリーズ搭載)。
• ビジネスモデル(ProBook、EliteBook):DDR4最大32GB搭載可能なモデルあり。
• ゲーミングモデル(Victus、OMEN):DDR5へ移行済み、DDR4モデルは旧世代。
• 傾向:DDR4搭載モデルは一部継続中だが、2025年後半からDDR5/LPDDR5xへ急速移行。
③ Dell
Dell 14 / Dell 16(2025年8月発売):DDR5 5600MT/s搭載、DDR4モデルは廃止。
• 旧Inspironシリーズ:DDR4 8〜16GB搭載モデルが主流だったが、供給難で刷新。
• 傾向:DDR4搭載モデルは2025年Q3で生産終了。DDR5搭載モデルに完全移行中。
以上、下表に整理した。
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価格見通し | DDR4: Q4で30~50%上昇、DDR5も上昇傾向 |
供給状況 | DDR4:10~15%不足、DDR3やNOR Flashにも波及 |
メーカ―戦略 | HBM優先、汎用DRAMは縮小傾向 |
調達リスク | 見積停止・短期価格改定で調達難易度が上昇 |
(椿匡之)