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三洋化成工業と広島大学病院、半月板損傷に対する「シルクエラスチン®」の企業治験を開始

2025/10/31 20:46
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三洋化成工業と広島大学病院、半月板損傷に対する「シルクエラスチン®」の企業治験を開始

左から樋口社長、広島大学病院・安達教授、三洋化成・川端氏

 

三洋化成工業(京都市東山区、樋口章憲社長)と広島大学大学院医系科学研究科整形外科学(広島大学病院)らの研究グループは31日、関節機能の温存と再生を目指す新たな治療手段の確立に向けて行ってきた「シルクエラスチン®」の共同研究において、半月板損傷患者を対象に、同素材の有効性と安全性を広範に検証する企業治験を開始したと発表した。

 

シルクエラスチンサンプル

 

無血行野を含む半月板損傷にて半月板縫合術を必要とする患者を対象に40症例の治験を実施予定で、広島大学病院のほか7施設で、2025年11月~2027年6月にかけて行われる。

 

同企業治験において有効性と安全性が確認されれば、これまで切除が主流であった半月板損傷に対し、半月板の温存・修復・再生を可能にする新たな治療選択肢として、患者のQOL(生活の質)向上に大きく貢献すると予想される。広島大学病院と三洋化成は、臨床と素材開発の両面から同技術の実用化に取り組んでおり、2027 年の承認申請と28年度中の上市を目指す。

 

シルクエラスチン®は、シルクフィブロイン(シルク由来のタンパク質)とエラスチン(人の皮膚に含まれる弾性タンパク質)を融合した、三洋化成独自の遺伝子組み換えタンパク質。その水溶液は、加温することでゲル化し、シルクフィブロインの強度とエラスチンの弾性・細胞親和性を兼ね備えた構造を形成。細胞増殖に適した環境を提供する。組織の修復・再生を促進する可能性があるため、除去ではなく修復を促す再生医療の新たなアプローチとして、関節機能の温存に貢献することが期待される。

 

半月板損傷は、加齢やスポーツに伴い多く発生し、従来は切除術(部分または全部の除去)による治療が主流だった。しかし、切除は膝関節の機能に大きな影響を及ぼし、後に変形性膝関節症を引き起こすリスクが高まるため、近年では半月板の温存・修復が重要視されている。こうした背景のもと、安達教授らの研究グループは、ロコモティブシンドロームの原因の一つである変形性膝関節症に着目し、三洋化成の「シルクエラスチン®」を応用して、膝関節軟骨と半月板の双方を再生する“究極の根治”をコンセプトに共同研究を進めてきた。

 

既に一定の成果を得ており、安全性試験結果では、シルクエラスチンが体内に分解・吸収され、尿などを経由して、安全に排泄されることを確認している。さらには、半月板縫合術患者においても同様に安全であることを確認済みだ。

 

会見資料より引用

 

31日に三洋化成工業の京都本社で開催された記者会見に出席した樋口社長は、「これまでの治験の結果を見る限りでは非常に期待できる」と強調。「(経営における)将来の柱となりうるべき条件は少しずつ揃ってきた」と自信をのぞかせた。また、「我々が次に目指すのはアメリカのマーケット。まずは、創傷治癒に関して、FDA(アメリカ食品医薬品局)の認証を取得していく」と今後のプロセスを語った。

 

 

(IRuniverse K.Kuribara)

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