11月5日18時、日本製鉄は同日15時に発表した26/3期2Qの決算受けてウエブにて説明会を開催した。説明に使われた資料はこちら。

関連記事
<26/3期2Q>

〇足元の状況
中国からの安値輸出のさらなる拡大もあり、中国起因の大変厳しい事業環境が継続している。加えて、トランプ関税により、先行きに対する不透明感が拡大しており、鉄鋼の事業環境は一段と厳しさを増している状況。
米国市場に様子見ムードが広がっており、春先にはトランプ関税の導入アナウンスを受け、一時期950ドル/ショートトンまでアメリカのホットコイル市況が上がったが、足元は想定を大きく下回る810から820ドル/ショートトンというレベルで推移している。
今回の同社決算でUSスチールの損益貢献を見込んでいないことに驚いた方も多いかと思う。しかし、この程度の市況変動、しかも絶対値で見れば810ドルから820ドル/ショートトンというのは、我々の馴染みのあるメトリクトンベースで言えば900ドル/トンを超えている水準。この水準で損益が危うくなるというのでは、やはり現在のUSスチールの収益体質は極めて脆弱であると言わざるを得ないと考えている。
だからこそ我々がここにいるわけで、USスチールの問題は、昔から言われているような組合がいてレガシーコストが高いということではない。過小投資を長年続けてきたことによる変動費の高さにその原因がある。したがって、投資実行が極めて有効な収益改善の手法となる。しかも、米国市場は世界最大の高付加価値商品のマーケット。さらに、2,000万トンの鋼材輸入、6,000万トンの部品中心のリプレース可能な部分を持っている大変ポテンシャルの高い市場だと考えている。
また、価格面について言えば、中国影響をほぼ完全にシャットアウトできている。USスチールを内部から変えられれば収益は必ず出る、そう信じている。投資をしっかりやっていけば成果は確実に出てくると考えている。今回のUSスチールの中長期計画は、そういう基本戦略で構築されている成長戦略であり、縮小はない。
操業シナジーと設備投資の効果で合わせて30億ドル/年を2030年の構造ベースで実現することをコミットしている。為替にもよるが、円ンベースに直せばわかる通り、非常に大きなインパクトがあるということが分かると追う。
この結果、USスチールの損益分岐点は約40%改善することを見込んでいる。手段は全く異なるが、40%の損益分岐点の改善というのは、同社がこの中期計画で成し遂げてきた内容と全く同じ。しかも、設備投資効果が中心ということで、ほぼ確実に実現できると思っている。USスチール以外の中長期計画についても、今最終検討段階にあり、約束した通り年内には公表できると考えている、USスチールと合わせて1億トン、1兆円ビジョンの早期実現、これを確実に行っていくということを考えている。
〇概況(資料2ページ)
下から3つ目の◆に書いている配当は公表通り変わっていない。US中計については後ほど説明する。
〇ウジミナスの同社持分を譲渡(同6ページ)
今日発表したウジミナス株のテルニウムへの譲渡。理由は、今回の譲渡は両社の合意に基づいて行われているが、1つは、今後のブラジルマーケット、これは非常に厳しい状況が続くと考えざるを得ない。加えて、今回、3Q決算ではウジミナスは大きな損失を出している。こうしたリスクを遮断する必要があるというのが1つの理由。もう1つは、一方で、米国、インド、タイが我々の今主戦場になりつつあるということで、ここへの経営資源の集中、これによってグローバル1億トン、1兆円を早期に実現したいと考えているから。
これにより、譲渡対価としてキャッシュベースでは450億円程度のキャッシュインがあるが、取得時の為替差もあり、210億の事業撤退損というのを計上せざるを得ない状況。
〇2025年度実力利益 前回公表時からの変動
●USスチール除き(同8ページ)
USスチールを除いた同社の今期の収益の状況は、資料の左端にある通り、前回公表は6,500億円だった。これは、実力ベースの事業利益で、関税影響は、もともと500億で見込んでいたものを▲200億縮小したので、300億の改善が見られる。一方で、環境は悪化しており▲200億。これをコスト低減で押し返して6,800億と、前回からは300億円の上方修正を実現。
●USスチール(同9ページ)
前回公表時は800億円と説明していたが、先ほど言った通り、想定以上の市況下落というものに直面し、加えて、一過性影響(特因)として、クレアトンのコークス炉事故、それからペレット出荷先の引き取り契約破棄ということがあり、これが▲200億。環境マージン悪化を主因として約▲500億強の赤字となる(USスチールの今年度の収益貢献を織り込んでいない)。足元から、先ほど説明した通り、戦略投資・先端技術の投入というのを本格指導しており、来年については、これが年間ベースになるということは当然の話だが、高関税効果の本格化あるいは金利の引き上げによる効果もあり、投資の効果がフルアップということで大きな収益改善が見込まれる。

出所:会社発表資料よりIRU作成
〇USスチールの中長期計画(資料10ページ)
同社、約50名の派遣者を送り込んでおり、これは今後ますます増えると思うが、資料に掲載通り、それぞれ業務に取り組んでいる。結果として、140億ドルの以上の設備投資、それから110億ドルの28年度までの投資を実施する。操業シナジーと合わせ30億ドル/年の改善効果を見込んでいる。この内訳は、設備効果、整備と投資効果が+25億ドル、操業シナジーが+5億ドル。
〇投資先(同11ページ)
大きく分け3つの観点から投資を考えている。ベースの製造実力の向上、それから供給製品メニューの拡充、加えて供給能力の拡大。
本投資により、300億ドルの米国への経済効果、それから10万人以上の雇用の創出につながると考えている。資料の右側は、絵で見られるようしたもの。
〇USスチールの戦略投資(資料12ページ)・・・戦略投資をマッピングしたもの。資料に★がついているのは既決定案件
●Gary
熱延設備更新(★):ラインパイプあるいは、ハイテンを製造可能とする改造を行う。それから第14高炉の改修、製鋼工程の設備更新でさらに、コスト競争力を伴うとともに、安定生産ができるようにしていきたい。
●Mon Valley
熱延の更新の計画を作っているところだが、スラグ処理の設備新設(★)で、これはもともと廃棄していたものを資源にするということで収益的に効果がある。
●鋼管拠点(Fairfield)
高級ねじ切り設備新設(★)。熱処理設備を作る。これはスループットの拡大につながる。
●電炉拠点(Big River)
DRIプラントの新設。GOの拠点にしていくことで、成長を狙った投資になる。
●場所が決まっていないが、グリーンフィールドに新一貫ミル建設を検討。これも成長を狙った投資になる。また、記載はないはミネソタの鉱山あるいはR&Dセンター(ペンシルバニア)など、引き続き検討を深め成案化したい。
〇資産圧縮(資料13ページ)
従来700億ということで言っていたが、資産圧縮ということではないが、先ほど説明したウジミナス株の売却により、キャッシュとしては450億が上乗ってくる。
〇最適資金調達で健全な財務体質と株主価値向上を両立(資料14ページ)
結果として年内に達成したいと言っていたD/Eレシオ0.7台というのは9月末で達成した。
<参考>
図表1、26/3期の上期実績と通期見通し(百万円、円/株)

注意:10月1日に株式分割(5分割)を実施したので配当を遡って修正
出所:会社発表資料よりIRU作成
図表2、四半期別業績推移(億円、万トン、円/ドル)

出所:会社発表資料よりIRU作成
〇事業利益の差異

出所:会社発表資料よりIRU作成
〇諸元

出所:会社発表資料よりIRU作成
(IRuniverse 井上 康 )