統合型リサイクル会議
今回のアジア会議は、電池(ICBR)、自動車(IARC)、電気・電気機器リサイクル(IERC)リサイクルを一体化したもので、タイトルは「ワールドリユース&リサイクルフォーラム」とされた。それぞれのセッションが同時進行で行われるため、参加者は興味のあるセッションを自由に移動し参加できるように設計されている。会場となった上海のシャングリラ・ホテルには、25カ国から、電池・自動車・電気・電子機器セクターのステークホルダー約250人が集結した。通例の展示会場も設けられ、中国国内の電池関連業者を中心とする企業22件がブースを設けた。展示企業は、SKTES、Nikkelhutte AUE、 BoTREE、 LRT、 Newell 、ABR、 Jerell、Laufferなど。

計9件のプラントツアーを実施
会議に先駆けて10日は3件のプラントツアーが開催された。今回の会議ではプラントツアーが盛りだくさんとなっており、会議終了後の13日には5件、14日にも1件の視察が企画された。訪問先は、電池リサイクルSK Tes、スチールBaosteel 電子機器・ELVリサイクルShanghai Xin Jingqiao、電池リサイクル特にLFPのリサイクルで知られる」 Botree 、破砕機械メーカーChina Recycling Newel Equipement 、コバルトHuayou Cobalt 、EVメーカーNio HeFeiCity 、グリーンエネルギーシステム TiannengBattery 、リチウム電池リサイクルJereh。SK Tesには申し込みが殺到早くから満席となった。MIRUチームは10日のShanghai Xin Jingqiaoのプラントツアーに参加した。詳細は別途報告する。
Zhi Sun氏が中国リサイクル市場の現状を報告
会議の初日11日、ステアリングコミッティー会長を務めるZhi Sun氏による冒頭の挨拶では、地元中国におけるリサイクルの現状紹介があった。2024年に処理された使用済自動車は780万台、電子・電気機器は1400万トン、電池30万トン(EV)となっている。また中国におけるEVの拡大には目をみはる。2002年にはわずか5.9%だった国内のEV数は、2024年には52%に急増、2025年10月末の数字では58%を記録した。ここ上海の路上でもタクシーはほとんどEV、電動トラックも目立つ。
アップルからSusannah Calvin氏による登壇
キーノート・スピーカーのなかで特に注目を浴びたのはアップルの環境・サプライチェーン・イノベーション・グローバル部長Susannah Calvin氏の登壇だ。同氏は、アップル自身が持続可能性戦略について語り、同社が注力するアップル製品への再生材の使用目標や2030年までのカーボンフットプリントや製品フットプリンターゲットなどについて触れた。登壇後は多数の参加者が同氏の周りに詰めかかり、質問やフォトセッションが続いた。

会議テーマは電池に集中
会議テーマは、電池部門では、中国大手による電池サイクル技術、最新のリサイクル機械ライン、またEU規則をはじめとするグローバルな電池のトレーサビリティ規則に焦点があてられた。デジタルプラットフォームやその規格化、電池の循環性の促進技術などの話題にもおよんだ。自動車部門では、中国国内およびグローバル市場のELVリサイクルの状況に加え、グリーン技術や材料開発の観点からELV素材のリサイクルとリユースなどの話題にも焦点が当てられた。またEVリサイクルにおける現状の課題やEV用電池のリサイクルの重要性についても活発な議論が行われた。電気・電子機器部門では、E廃棄物におけるクローズド・ループリサイクル、アジア地域における拡大生産者責任制度の整備状況、E廃棄物をめぐるグローバルなパートナーシップ、電気・電子機器における循環性への移行などが議題の中心となった。3部門に分かれているとはいえ、自動車部門にはEV用電池リサイクル技術の話題も並行して盛り込まれており、セッションのトピックは、中国業者における電池リサイクルの技術・開発状況と現状に関する話題が大部分を占めた。プレゼンテーション内容の詳細は追って報告する。
EPRとトレーサビリティが重要テーマに
2日目最後のセッションは、「グローバルな拡大生産者責任制度(EPR)」を議題として討論が行われた。電池、自動車、電子・電気機器のリサイクルにおいては重要な役割を担うEPRだが、地域や国によりその整備状況は大きく異なっている。例えば、EPRを遂行する生産者責任組織(PRO)が設置されている国と存在しない国がある。オーストラリアでは、EPR制度のもとPROが設立されている。一方で中国には目下のところPROが存在せず、その必要性が議論されているが、どのような形態でPROを設立するかについてはまだ明確にされていない。
オーストリアのPROの代表Chaplin氏は、生産者によるコスト負担が大きければ消費者への負担も向上することから、バランスが重要であると述べた。中国資源リサイクル協会のKeli氏は、国内のEPRスキームにおけるコスト負担と現実的なリサイクルコストのギャップが大きく問題となっており、改善を目的として近年そのメカニズムが変更されたことに触れた。ベルギーのPRO会長は、EPR施行における複雑さや難しさについて触れ、PROがEPR施行に必要な要件を代行することで輸入業者の負担が大きく軽減されることを指摘した。
グリーン、トレーサビリティ、循環型の経済開発などのキイワード、およびトレーサビリティのツールとなるデジタル・ソリューションの必要性は、ここ中国でも大きく拡大し、そのためのツールとなる政策・規制も整備されつつある。中国はこれらの移行に必要な資源、投資力、技術そして人的資源の「供給量」において、他地域の国々より圧倒的に有利であることをここ上海で実感した。
次回は上海で開催決定
2025年のICMアジア会議は閉会のあいさつに続き、カクテルで締めくくられた。なお次回2026年のアジア会議は、再び上海での開催が決定している。
(Yukari SCHANZ)