IRUNIVERSEは25日、同社主催で「第6回サーキュラーエコノミーシンポジウム」を愛知県名古屋市内で開催した。国内外で活躍するサーキュラーエコノミー企業や行政の関係者ら14人が講師として登壇。エンディングには「どうなる?日本の鉄鋼産業と鉄スクラップ業界」をテーマに、登壇者らによるパネルディスカッションも行われ、会場に詰め掛けたおよそ100人弱の聴講者とともに、わが国のサーキュラーエコノミー(CE:循環型経済)の現在地を確認しながら、その未来図を探った。
シンポジウムは弊社代表の棚町裕次の開会挨拶で幕を開け、サステイナビリティ技術設計機構代表理事で、国立研究開発法人物質・材料研究機構名誉研究員の原田幸明氏と合同会社オフィス西田の環境戦略コンサルタントの西田純氏が総合司会をと務める形で進行した。
棚町

西田氏

原田氏
最初の登壇者は 豊田通商のリバースサプライチェーン事業部CEイノベーション室室長の平位和哉氏で、「資源循環の取り組みと課題」をテーマに講演した。同社の事業紹介とともに、海外を含め20年以上静脈流通に携わってきた経験をもとに、サーキュラーエコノミーが抱える足元の課題と、求められるその対策について、幅広い視野から示唆に富んだ解説があった。

平位氏
次の登壇者は共英製鋼執行役員本社経営企画部長の増田晶紀氏。講演テーマは「『エシカルスチール』を軸としたサーキュラーエコノミー社会の実現に向けた取り組み」。 35年以上にわたり医療・産業廃棄物を電気炉で無害化・処理しながら鋼材を製造してきた独自の歴史をもつ共英製鋼。その技術と理念を「エシカルスチール」として新たにブランド化し、2024年から社会に向けて発信し始めている。社会から出る“負の資産”を、社会を支える“プラスの力”へ変える。そんなサーキュラーエコノミー社会の実現に欠かせない「エッセンシャルカンパニー」のいまが、改めて紹介された。

増田氏
3番手はダニエリエンジニアリングジャパン代表取締役の泉直樹氏で、「ダニエリのリサイクルマシンの紹介」をテーマに、鉄鋼・非鉄全分野にウイングを広げる同社の事業紹介があった ダニエリエンジニアリングジャパン(DEJ)は、北イタリアButtrio 市に本拠をおくDanieli & C. Office Meccaniche SpA が100%出資する日本法人で、2007年12月5日に設立された。製銑、製鋼、圧延、プロセスライン、パイプミル、プレス、押出し、コンディショニングのほか、スクラップ関連設備、クレーン、水処理・環境設備など鉄鋼・非鉄全分野で、設備供給、据付・メンテナンス・操業指導、アフターサービス、予備品供給、情報提供を手掛けている。

泉氏
「電炉新時代を勝ち抜く本物の電炉とは」をテーマに、東京製鐵大阪支店長の伊藤岳氏の講演が続いた。 脱炭素を見据えてCO₂排出が少ない電炉へ、高炉からのシフトが加速する中、改めて技術力が問われる時代を迎えた電炉業界。プロの目線で、電炉鋼の未来シナリオがつぶさに語られた。

伊藤氏
HRM CorporationのTeddy Ju氏は 「ECOYA EXPORT: 循環資源取引管理プラットフォーム」をテーマに講演した。HRMは資源循環をITで管理するプラットフォーム事業を展開している韓国企業で、CEをIT面から支えるプレーヤーとし注目度も高い。IT分野からの課題解決アプローチに会場の関心も高かった。

Ju氏
愛知県名古屋市の環境局資源循環企画課課長の吉原純一氏のテーマは 「パートナーシップで支え合う 持続可能な循環型都市なごやをめざして」。2040年頃の名古屋の姿を見据え、基本理念を4つの方向性に分類し、循環型都市の実現に向けた取り組みを進めているという。

吉原氏
PFU・RAPTOR事業開発部商品開発課シニアマネージャーの本江雅信氏は「廃棄物分別特化AIエンジンRaptor VISIONを搭載したLIB検知システムについて」をテーマに講演した。廃棄物に紛れ込んだLIBによる火災・爆発事故が相次ぐ中、その防止対策が急がれており、AIへの注目度は高い。

本江氏
「サーキュラーエコノミー ~M&Aなどを通じた新しい循環の創造」をテーマに、PwCアドバイザリー合同会社の森隼人氏と末廣多恵子氏からは、新たな成長の手掛かりを求めて、リサイクル業界でも活発化し始めたM&A(合併・買収)の最前線事情が明らかにされた。

森氏

末廣氏
アサヒセイレンの白石憲章氏と松本剛氏は、「国内資源循環推進!アルミニウムリサイクルについて-アサヒセイレングループとその取り組みのご紹介-」をテーマに講演。強みを持つドロスリサイクル事業を軸に弾みがつく同社の国際展開のいまが紹介された。

白石氏

松本氏
前田産業上席コンサルタントの丹羽 崇人氏のテーマは「プラスチックのサーキュラーエコノミー実践事例」。 いかにサーキュラーエコノミーのループに、プラスチックのリサイクル問題を取り込むか。難航する国際プラスチック条約の交渉がその難しさを象徴して得いるが、講演では豊富な実践事例が紹介された。

丹羽氏
産業サイドからの講演の最後を飾ったのは Novelis Japanの林孝雄氏。テーマは「Novelisが目指す自動車産業のサーキュラーエコノミーへの挑戦 ― リサイクルアルミ材とグローバル連携の取り組み ―」。ノベリスはZorba や Twitch(既存の混合非鉄スクラップ分類)から分離・精選される新アルミスクラップ等級「Vesper」を米金属リサイクル業界団体ReMAと共同開発するなど、自動車素材のリサイクルに意欲的な取り組みをみせている。

林氏
講演の最後は行政サイドから連続登壇となった。環境省から環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課課長の杉本留三氏が「廃棄物・資源循環政策の最新動向~不適正ヤード問題及び使用済みリチウム蓄電池等への対応について~」をテーマに、続いて 経済産業省製造産業局金属課総括補佐の大下慶氏が「グリーンスチールを広めるための施策と課題」をテーマに講演した。

杉本氏

大下氏
パネルディスカッションは「どうなる?日本の鉄鋼産業と鉄スクラップ業界」をテーマに、官民の登壇者ら 人がパネリストとして参加、意見を交わした。パネリストが繰り広げるホットな論議に、会場は大きな盛り上がりをみせていた。 なお、講演内容については後日、連載の形で詳細をアップする予定である。

白熱するパネルディスカッション
(IRuniverse G・Mochizuki)