秋晴れの11月26日、第6回サーキュラーエコノミーシンポジウム in NAGOYAのプラントツアーが開催された。プラントツアーはA組とB組に分かれ、A組は名古屋駅から出発し、国内最大級の伸銅品メーカーであるNJT銅管株式会社を訪問。一方、B組は豊橋駅から鉄スクラップを原料とする電炉メーカー、トピー工業株式会社 豊橋製造所へと向かった。
両組は昼に合流し、愛知県蒲郡市で昼食休憩を取った後、午後からは銅を中心とした非鉄スクラップディーラーである株式会社三光金属(愛知県豊明市)と、廃棄遊技機や太陽光パネル、工場廃材などのリサイクル・リユース事業を展開するリサイクルテック・ジャパン株式会社を見学した。
トピー工業株式会社 豊橋製造所
トピー工業株式会社 豊橋製造所は1958年、電気炉による製鋼工場として操業を開始した。自動車産業が集積する愛知県を背景に、同社の金属加工における中核製造拠点として重要な役割を担っている。豊橋製造所の敷地は東京ドーム約40個分に相当する広大さを誇り、構内では特殊車両や関連車両が絶え間なく行き交う。耐用年数を迎えた工業製品や構造物から回収したスチールスクラップを電気炉で溶解し、鋼材、ホイール、履板などへと再生するプロセスを一貫して担っている。
創業以来、鉄リサイクル事業を推進してきた同社は、高精度な生産計画に基づいた生産ラインの能力・機能が高度にネットワーク化されている点が強みだ。現在、バストラックホイールの国内シェア90%、スチールホイールの国内シェア60%、油圧ショベル用履板の国内シェア40%を誇り、業界を牽引している。
今回のプラントツアーでは、鉄スクラップヤード、電気炉の制御室、再生された鋼材の圧延工程などを見学した。なかには「トピー工業の豊橋製造所を見学したい」という理由でツアーに参加した人もおり、現場では参加者から活発な議論や質問が飛び交った。特に、電炉の使用条件や操業時のエネルギー負荷、そして今後のグリーン電力への転換方針など、環境対応に関わるテーマについて関心が高く、多くの具体的な質問が寄せられていた。
NJT銅管株式会社
NJT銅管株式会社は1987年に創業し、100年以上に渡り伸銅メーカーとしての歴史を受け継いでいる。この日はメンテナンス日にあたり、同社の象徴である5,000トン押出プレス機は稼働していなかったが、設備の規模や工程の概要について説明を受けた。工場内には多様な寸法の作り地金が大量に備蓄されており、生産ラインの供給を止めないために一定量を確保しているという。
同社の主力製品の一つがエアコン向け銅管で、内面に施す溝加工によって熱交換効率を高めている。銅管を加熱して軟化させた後、溝プラグ型を押し付けて多数回転させることで精密な溝を形成する。顧客のエアコン設計によって要求特性が異なるため、溝形状の調整も行われている。また、腐食による冷媒漏洩を抑えるための耐食銅管の製品化にも取り組んでいる。
艶消し工程では酸化を防ぐ処理が行われ、湿度の高い時期の変色を防ぐためテントハウスも設置されている。管内ガスの入れ替えも行われ、品質維持に配慮している。出荷される直管やコイルは国内向けが中心で、わずかな不純物が性能に影響するため、スクラップ原料の配合には慎重にしているとのことだ。
株式会社三光金属

非鉄金属スクラップの選別加工・販売を行う三光金属では、銅やアルミを中心に、黄銅、リン酸銅など多様な非鉄スクラップを扱っている。豊明でヤードを構えて25年となる同社の強みは、単価と品質の変動が大きい銅スクラップを丁寧に手選別して品質を引き上げている点にある。銅スクラップは付着物や混入材の量によって価値が大きく変わるため、機械選別では取りきれない細かな違いを現場の職人が目視で見極め、グレードを整えていく。
ツアー当日は、アルミや銅スクラップを扱う企業からの参加者が多く、現場での選別基準やリサイクルの流れ、価格変動の実情などについて質問が相次いだ。担当者の説明に耳を傾けながら、実際のスクラップを手に取って確認する姿も見られ、参加者同士の情報交換も活発だった。名刺交換や議論が続くなか、見学の時間はあっという間に終了した。
リサイクルテック・ジャパン株式会社

リサイクルテック・ジャパン株式会社は2003年に設立され、遊技機のリサイクル・リユースをはじめ、ソーラーパネルや液晶パネルのリサイクルなど、環境関連の事業に取り組んでいる。同社がリユース事業に力を入れる背景には、1992年に大手家電メーカーがシンガポールに工場を設立した際、梱包材を供給する会社を立ち上げ、梱包材そのものをリユース品とすることでコスト削減と環境負荷の低減を実現した経験がある。
ツアーでは、遊技機台などの解体といったリユースとリサイクルの工程を見学した。遊技機台は、玉が通ったかを判別するセンサー類、基板、液晶パネルなど多くの部品で構成されているが、機種やメーカーごとに構造が異なり複雑なため、解体はほぼ手作業で行われる。1台から100点以上の部品を取り外すこともあり、使える部品はリユース、使えないものはリサイクルに回される。自動解体機の導入は工程が複雑で難しく、現状では人の手による作業が欠かせないという。
名古屋は遊技機文化の発祥地とされ、現在もメーカーが多く立地しているため、遊技機台の流通量が多い。近年は喫煙環境の変化により、以前のようにタバコの煙でプラスチックが黄ばむことは少なくなり、入荷する遊技機台の状態は比較的良好だ。しかし、人気がない機種は三カ月から半年ほどで入れ替わり、使用期限も3年未満と短いため、廃棄される遊技機台は継続的に発生している。遊技機台そのものは有価で買い取られるが、木材部分はリサイクルが難しく、処理費用が発生する唯一の素材となる。ガラスについてはソーラーパネル事業と連携しリサイクル処理を行っている。
同社では今後、遊技機市場の縮小が見込まれることから、ここ1年ほどはパソコンの解体・リサイクル・リユース事業にも取り組んでおり、事業の幅を広げている。パソコンをはじめとする運び込まれる廃棄品は有価で買い取っており、基本的に木材以外の材質(プラスチック、ガラス、金属類など)はすべてリサイクルもしくはリユースできるように解体し、アップサイクルの効率向上に努めている。



今回のプラントツアーでは、銅や鉄の製造現場からスクラップの選別・解体まで、素材が生まれ、循環し、再び価値として戻ってくる一連の流れを一日で体感することができた。いずれの現場にも共通していたのは、最終製品の品質を左右する「精度」と、それを支える人の技術力であり、サーキュラーエコノミーの根底にあるのは廃棄物処理ではなく「高度な加工技術」であるという事実だった。
前日の講演会や当日のプラントツアーを通じて、日本のリサイクル業界が掲げているのは、単に「資源を回す」ことではなく、部品の精密な分別や高い再生技術を武器に「日本が得意とする加工業の延長線上にある産業として存在感を高めていく」という姿勢である。
ツアー参加者の間でも、素材メーカー・スクラップ業者・リサイクル事業者それぞれの立場から活発な意見交換が行われ、循環型社会は個々の努力ではなく、産業全体の連携によって深化していくことを改めて感じた。今回のツアーは、そうした産業間の連続性と、日本のものづくりの底力を再認識する機会となった。
(IRuniverse Midori Fushimi)