12月4日と5日、新広島資源循環プロジェクトの発表会と見学会が、エコメビウス主催で開かれました。4日はマツダ本社で発表会が、5日は山陽RECと三井金属竹原製煉所の見学会が開かれ、多くの参加者が出席し、活発な議論が行われました。
4日の発表会では、MAZDAから、同社の電池回りの技術開発と樹脂化の取り組み(樹脂インセンティブ制度)について解説がありました。
三菱重工マシナリーテクノロジーからは、住宅ユニット自動組み立てシステム、カメラ監視システムに加え、トラックやピットに保管している内容物や量をAIで自動判定する装置キャパライザーの紹介がありました。
また、フッパー社からはビジネスに“使えるAI”(具体的には、自動車リサイクル工程トレースと環境負荷可視化システムについて)の解説がありました。
IRuniverseからは、各種金属の相場見通しについての解説がありました。
リコーからは、NR-PowerのVPPサービスの紹介や、プラスチックの分類が可能なハンディタイプの成分分析装置の説明がありました。
また、山陽REC社と日本リサイクルセンターからは、それぞれのリサイクル事業の内容について紹介がありました。
また、経済産業省中国経済産業局からは、補助金制度の詳細について発表がありました。
12月5日は、午前中に山陽RECの工場見学を、午後は三井金属竹原製煉所の工場見学を行い、多くの参加者から活発な質疑応答がありました。
マツダ本社訪問結果
広島を代表する自動車メーカーであるマツダは、時代の転換期にある自動車業界において、独自の方針を貫く企業として注目されています。具体的には、中国や欧州を中心に進行するEV化の流れの中にあって、内燃機関の可能性を追求し続け、ガソリン車、ディーゼル車、HV、EV、PHEVと多様な製品群を提供しつづけています。
特筆すべきは、同社の混流生産ラインで、BEVやHV、PHEVとエンジン車が同じ生産ラインで組み立てられる仕組みです。サブユニットを導入すると同時に、無人搬送台車AGVを導入することで実現していますが、これはEV生産開始の前から存在する仕組みです。マツダの生産ラインの数は、トヨタなどと比較して少なく、その中で多品種の製造に対応するには、混流生産しかないということです。
またマツダは内燃機関に拘り、電動化が遅れているという印象がありますが、実際には電動化の研究も進んでおり、マイルドハイブリッド、ストロングハイブリッド、BEVのラインアップ化も計画に沿って進んでいます。電動化への開発投資額は、同社のライトアセット戦略によって、2.0兆円から1.5兆円に変更し、電池をマツダ独自の開発から他社からの調達に切り替えるなど方針を見直しています。
マツダはトヨタと提携しており、二次電池などハイブリッドに必要な技術もトヨタと共有しているか?というと、それは一部に留まるようです。
一方、部品や素材のリユース・リサイクルのシステム構築も喫緊の課題であり、特にプラスチックのリサイクル率をいかに上げるかが問題です。
欧州のELV規制では、自動車に用いるプラスチックの再生プラスチック比率は25%(後に20%に変更)、廃車由来のプラスチック比率は20%(後に15%に変更)以上に規定されます。
これは、PCRのみで、PIRやバイオプラスチックには適当されませんが、達成は容易ではありません。当然ながら、材料のトレーサビリティ確保と経済合理性の成立が条件となります。回収は、自社での購入、部品サプライヤーでの購入、地場企業での購入の3種類に分かれます。回収したプラスチックは、解体・破砕から、コンパウンド製造、試験機関を経て、素材となりますが、自動車産業は、もはや動脈産業と静脈産業の両方のスキームを持った産業と言うべきです。
マツダでは、樹脂→鉄→アルミ→電池の順番で資源循環を目指していますが、課題は山積です。基本的な問題は各社に共通します。
・物が集まらない。
・高コスト
・品質のバラつき
・ASRの処理をどうするか
マツダ固有の問題は、別にあります。マツダは完成車の輸出比率が高いのが特徴です。同社の製品は世界中で走り、世界中で廃車が発生します。一方、リサイクルは基本的に地域社会での回収が鍵になります。広域で回収事業を展開し、長距離を輸送するのはコスト的に現実的ではないからです。このギャップをどうするかが鍵です。
マツダの資源循環戦略は、中国地方の関係各社を巻き込んで、共同体として推進するものですが、マツダ車が走る全世界をカバーするものではありません。この点をどう解決していくのか?今後の展開が気になります。
マツダの戦略や今後の方針については、稿を改めて、詳述したいと考えます。

山陽レックの訪問結果
私事ながら、広島市安佐北区にある山陽レックには昨年も訪問しており2度目の見学となりますが、今回も新たな発見と課題が見つかりました。
産業廃棄物の焼却再資源化には、電気炉、流動床式ガス化溶融炉、旋回式ガス化溶融炉など、多くの焼却溶融方式があり、それらの優劣が議論されますが、山陽レックが採用した、ロータリーキルン炉+ストーカー炉+固定床炉の複合炉方式は、一つの解答と言えます。
山陽レックはこの複合炉を2基、敷地内に建設・操業し、幅広い種類の廃棄物の処理を無公害で実現しています。そしてEV由来を含む多種類のLiイオン電池の解体再資源化も行っています。特にLiイオン電池の処理では、炉の温度管理が難しいとされています。
Liイオン電池処理の後工程は、グループ会社のフラップリソースでなされ、ブラックマス、Bi、Coが回収されています。
ここに同社の将来に向けての課題があります。
第一に、現在の工場敷地は限られ、2基の炉に加え3基にすることは難しいと思われます。廃棄物処理の需要が今後増大することを考えると、新しい工場を建設する必要がありますが、自治体の認可取得等、複雑な手続きが必要になります。
特に深刻なのは今後予想される大量のEV廃車に伴う、Liイオン電池の再資源化需要への対応です。日本でのEV普及は遅れ、時期は先延ばしになっていますが、いずれ確実に訪れるその日への準備が必要です。山陽レック本体での解体能力にも限界があり、フラップリソースでの処理能力も不足するはずです。
もう一つの課題は、ブラックマスからのLiの回収です。現在は有価物としてNi、Coが回収対象となり、Liは対象外です。しかし今後Liイオン電池は三元系からLFPにシフトし、有価なNi、Coの回収はなくなります。経済合理性の観点からは、いずれLiを回収して有価物として販売する必要が生じます。既に中国などではLiの回収と再資源化を実現しており、ブラックマスの状態で輸出するのは、国富の流出にもなります。ではどうすればいいのか?
ブラックマスからのLi回収技術を早期に実用化するしかありません。炭酸リチウムの形にする技術は既に確立しており、後は工場でその技術を応用する段階です。具体的には東レが開発したNF膜なども応用可能と考えます。
電池からリチウムを回収するNF膜材料の量産技術確立、収率95%以上(MONOist) - Yahoo!ニュース
高い社会的ニーズがあり、市場規模が増大する可能性が高いLi廃電池の再資源化事業をどうやって加速化するかが、同社の課題であると考えます。

三井金属竹原製煉所訪問結果
日本に複数存在する銅精錬メーカーはそれぞれに特徴を持っていますが、その中で三井金属は特異な立場にあります。同社は北から八戸、神岡、日比、竹原、彦島、三池、串木野と7カ所の精錬所を持ち、多くの非鉄金属を製造しています。銅、亜鉛、鉛の3つを合計した生産量では、非鉄メーカー最大であり、銅の精錬メーカーというより非鉄金属の総合メーカーと呼ぶべき存在です。製品は銅、亜鉛、鉛に加えアンチモン、錫、銀、金、ビスマス、テルル、プラチナ、パラジウム、インジウムもあり、儲け頭といえるのは、アンチモンや錫、金だそうです。製品の機能性材料には銅箔、薄膜材料(インジウム)、鉛丹、鉛白、粉体(電池材料)等が含まれます。
それらの精錬所の中で、竹原は各精錬所で製造した各金属の中間製品を最終製品にする業務も行い、「三井金属の腎臓」という不思議な名前で呼ばれています。
三井金属の場合、鉱山に隣接した精錬所は神岡と串木野の2か所で竹原も含め、他は精錬所が鉱山と離れた位置に存在します。瀬戸内地域には、三菱マテリアルの直島、住友金属鉱山の四阪島、三井金属の竹原と銅精錬所が集まっていますがどれも遠隔地から銅鉱石または粗銅を受け入れて精錬しています。当然ながら公害対策は適格になされていますが、限られた敷地の中で拡張の余地は大きくありません。
金属精錬は典型的な装置産業であり、設備を導入した後は、エネルギーや消耗品のコストが競争力を決定します。当然ながら日本のようなエネルギーコスト(特に電力料金)が高い国では不利になります。竹原製煉所の国際競争力を維持するのは至難のわざでしょう。三井金属は海外展開を積極的に進めています。次に生産能力を拡張する時は、海外に工場を建設のではないか?と筆者は思います。
筆者は電力料金の高さゆえに、アルミ精錬事業が日本から消滅したことを覚えています。銅がその二の舞にならないためにはどうすればいいのか? 例えば高すぎる電力料金への対策はあるのか? 筆者のような外部の素人が考えるようなことは、当然先刻検討済みでしょうが、同社のその戦略を知りたいという衝動に駆られました。
今、各種金属の相場は上昇しており、短期的には会社の収益を押し上げているはずです。しかし一時的な収益改善によって、構造的な問題つまり「今ここにある危機」が隠され、対策が遅れてはなりません。これは非鉄金属産業全体に共通する課題です。
「しかし、三井金属に限って、その点に怠りはあるまい・・・」。高さ120mの巨大煙突「竹太郎」を見上げながら、筆者はそう思いました。
(IRuniverse Akai)