12月12日に開催した「2030中長期経営計画」の続き。説明に使われた資料はこちら。説明は今井COOが行った。

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⇒「日本製鉄:2030中長期経営計画の説明会を開催(戦略・国内事業)」
<海外事業>

〇海外事業(同22ページ)
需要の伸びが確実に期待できる地域、同社の技術力、商品力を活かせる分野において、上工程から一貫して付加価値を創造できる鉄源一貫製造拠点の拡充を図ることを方針として、M&Aによるブラウンフィールドの拠点取得を進めてきた。
今中期計画では、米国、欧州、インド、タイ、重要拠点として、一貫生産の強化に資する積極的な成長投資など、経営リソースを集中的に投入する。
〇1兆円・1億トン実現に向けた海外事業の貢献(同23ページ)
利益については、USスチールの投資効果の最大発揮、あるいはAM/NSインディアの能力拡大等により、30年度の目標は5,000億以上、国内と合わせて1兆円以上と、飛躍的な利益拡大を目指す。
また、生産能力については、海外事業戦略の推進により、インドをはじめとして需要の伸びを補足する形で能力拡張を進め、30年代半ばを目途にグローバル粗鋼1億トンの実現を目指す。
〇グローバル成長戦略を支える同社の強み(同24ページ)
海外事業の重要拠点における大規模投資を行っていく。中でも同社がこれまで国内で培ってきた設備エンジニアリング技術を最大限活かすとともに、創業、商品などの技術力や品質管理、工程管理等のノウハウを移転し、海外事業の利益拡大を追求する。
今般買収完了したSUスチールは100%出資でるので、最先端技術やノウハウの完全な移転と人材の投入が可能になる。
また、技術やノウハウ移転の効果発揮を確実なものとするために、人材についても集中的に海外に投入し、グローバルな成長戦略を確実に推進していく。
〇重点地域
●米国市場について(同25ページ)
米国は、間接輸入まで含めれば潜在的な需要規模は日本の3倍となる約1.5億トンになる。先進国で最大の鉄鋼需要かつ高級工需要が期待されるマーケットであり、輸出に依存しない内需中心の需給構造、あるいは関税によって輸入材から守られたマーケットという極めて魅力的な市場だということができる。
設備投資や技術移転にとより、USスチールのコスト、品質、競争力あるいは商品力を高めていければ、確実な成長が期待できる市場になる。
●USスチールの飛躍的利益成長(同26ページ)
資料に示すように、28年までに米国内110億ドルの設備投資を実行、投資と技術移転の効果を最大発揮させることで、2030年、構造ベースではEBITDA30億ドルの効果を計画している。
●欧州拠点(同27ページ)
OVAKOについては、この電炉一貫での特殊鋼棒線の生産拠点であり、世界トップレベルの高級特殊鋼棒線製造技術を保有している。また、カーボンニュートラル化でも世界に先行している優良なミル。
そして、今般、USスチールの買収を通じて、新たに薄板拠点であるUSSKを獲得することができた。
USSKは、自動車向けメッキ鋼板をはじめとして、ブリキ、電磁鋼板、多様な薄板製品のポートフォリオを持っている。加えて、競争力ある人件費、優れた労働力を持ち、この設備も健全であることを確認している。
欧州市場は世界第3位の鋼材需要件であり、域内産業が関税や政府ガード、CBAM等で保護されていることから、インサイダーとして活動するのには適している。加えて、欧州内の需要家拠点が西部から東部に移転しつつあり、USSKにとっては中長期的に鋼材需要の増加が期待されている。
今後、同社とのシナジー最大化を通じた域内需要の不足、利益成長を図るとともに、スロバキア政府支援のもと、電炉技術の評価など、脱炭素施策の可能性も検討していく。
●インド(同28ページ)
人口増を背景とした経済成長により鋼材マーケットは世界で最も拡大しているインドであるが、AM/NSインディアにおいて、高級鋼製造対策とさらなる生産規模の拡大を推進していく。
具体的には、西海岸は、製鉄所ですでに着手している一貫能力の拡張、あるいは自動車用鋼板の製造対策を来年度確実に進めるとともに、南部アンドラプラデ州ラジャヤペタにおける一貫製鉄所建設にも着手し、31年以降早期に2,200万トン以上への生産能力の拡張を目指していく。
●タイ(同29ページ)
タイの薄板市場は、高級鋼板用を含め、今後も堅調な成長が期待される。同社は、タイにおいて、NS-SUSをはじめとして約30%程度の市場シェアを獲得しているが、G/GJスチール、鉄源として、サプライチェーン一貫でのグループ連携体制の強化を図り、インサイダーとしての強みを最大限発揮し、ASEAN最重要マーケットであるタイの薄板市場におけるさらなるポジションの拡大を図っていく。
<原料事業>
〇原料事業の推進(同30ページ)
原料事業については、カーボンニュートラル、鉄鋼生産においても重要な高品原料の確保あるいは、収益の安定化の観点から、今後も優良な案件があれば自山鉱比率向上に向け取り組んでいく。
<非鉄3社>
〇鉄以外のセグメント各社の成長戦略(同32ページ)
各社それぞれ成長戦略を推進し、継続的に製鉄事業を支え、シナジーの最大化を図っていく。
●日鉄ソリューション
年率10%の市場成長を上回る利益成長を達成し、30年代早期には営業利益1,000億円を目指。
●日鉄ケミカル&マテリアル
機能材料により進展する半導体市場を補足。
●日鉄エンジニアリング
環境・カーボニュートラル等の成長領域へ経営資源を集中的に投入していく。
<カーボンニュートラルビジョン2050>
〇技術と市場形成の両面でカーボンニュートラルの実現に取り組む(同34ページ)
2030年に向けては、大型電炉での高級高製造技術、量産技術を確立した上で、八幡・広畑・周南での電炉実装を通じて、2030年のCO2総排出量は30%削減を達成する。
並行して、CO2の削減価値をバリューチェーン全体で負担するGXスチール市場の形成という不可欠な取り組みも進めていく。また、資料下段にあるように、水素製鉄関連については、並行して試験設備や実機での開発試験を進め、世界に先駆けた技術開発、開発を推進し、2040年までには実機化技術を確立したいと思っている。
CCSを組み合わせれば、2050年にはカーボンニュートラル生産プロセスを完成することができる。
政府支援や産官学連携強化を通じて革新技術の開発を加速し、技術と市場形成の両面で、2050年カーボンニュートラルの実現を目指していく。
〇課題と取り組み(同35ページ)
克服すべき課題は資料右、大きく4つ。
●GX市場の形成にあたっては重要なポイントは2点、1つは制度作りと標準化、CO2の削減価値が正しく評価されるような国際的なルール作りと標準化を進めなければならない。これについては、ワールドスチールを通じて様々な取り組みを進めている。
第2に、実機実装を通じて、投資の回収を、予見性を確保すること。この巨額の投資を、あるいは操業コストを回収できる見通しがなければ投資判断を行うことは困難なので、先般、GX推進法に基づいて政府支援事業の採択を受けてこうした予見性が高まっていること、また、今後さらにGXの優先調達あるいは購入支援策の具体化など、政府や関係先に働きかけていく必要がある。
一方、資料下段の技術開発面については、そもそも、鉄鋼業に脱炭素技術は確立してないということで、技術開発をまず行う必要がある。GI基金の活用あるいは複線的なアプローチでこの革新技術の開発を推進していく。
また、カーボンニュートラルな鉄鋼生産プロセスの実用化には、大量の水素、アンモニア、あるいはグリーン電力、CCSなどが産業インフラとして整備されることが必要であるので、こうしたインフラが安価に活用できるように、政府や様々な関連企業・団体と連携して検討に参画していく。
<経営基盤強化>
〇経営基盤の強化について(同37ページ)
技術開発、同社は世界有数規模の研究リソースを継続的に投入している。今、中期経営計画期間においても継続強化していくということで、安定生産とコスト競争力、あるいは品種高度化に貢献する商品開発、こういったものを推進していく。カーボニュートラルに向けた革新技術の開発にも継続的に取り組む。
さらに、USスチールとの連携などグローバル研究開発体制の強化も図りながらせ、世界最先端技術の開発を、より一層加速していく。5年間での投入規模は約5,000億を計画。
〇業務刷新・効率化推進(同38-39ページ)
同社の戦略を支えるには少数制の中での業務運営というものが不可欠である。現在、同社の業務刷新効率化プロジェクトということで推進している。
国内、海外ともに、事業成長や付加価値の創造に直接的につながる仕事へマンパワーを集中させること、あるいは生産性の向上や技術力、営業力の強化を通じて圧倒的な競争力を確保すること、そして、全社最適の観点から課題に迅速、的確かつ機動的に対応することで持続的な成長は実現できる、そういった企業風土を確立する。
その第1歩として、本年10月に、技術部門を中心として組織改正を行い、この組織の機能や役割分担、あるいは持指示系統、業務プロセスの整流化に着手している。
これは、全社最適の観点からグローバル視点で技術戦略を検討、実行する、本社あるいはラインマネージメントを軸としてオペレーションに集中し、競争力ある製造現場を構築する製鉄所、これを定義した上で、その間の緊密な連携を行うことで、役割に応じた最適な機能の持ち方、業務の刷新、効率化を行い、生産性を高め、海外も含めた機動的な人材投入を実行していく。
〇人材競争力(同40ページ)
以上説明してきたような、同社の、かつてないようなほどの、多様様で困難な経営課題、これを解いていくことで、それを実現するのは、人材の力ということになる。
人的資本を取り巻く社会情勢は大きく変化している。人材の確保、育成と活躍推進、生産性の向上を大きな柱に据えて、グローバル人材の育成、人材の多様化と成長支援、そしてスタッフ形成、製造整備系含めた生産性の向上を進め、社員1人1人の個の力を強化し、組織のパフォーマンスを最大化していく。
〇具体的な施策(同41ページ)
グローバル人材育成施策のさらなる充実に取り組む。特に若手の時から海外に派遣することで日本では得られない多くの学びを得て成長にもつなげいく。
また、人材の多様化、DEI、ジェンダー平等等についても、引き続き取り組むとともに、資料右側にあるように、育児等のライフイベントとの両立を支援する各種制度についても、その実効性を最大化するような取り組みを加速していく。
これらを通じて、すべての従業員が生産性高く、誇りや、やりがいを持って活躍できる企業を目指していく。
同社は、2030中長期経営計画の達成を通じて、世界No.1の鉄鋼メーカーの復権を果たし、日本経済の復活に貢献していく。
(IRuniverse 井上 康 )