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2025 SMM APAC 鉛蓄電池産業会議、鉛蓄電池産業の現在・未来――詳報⑤

2025/12/23 22:06
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2025 SMM APAC 鉛蓄電池産業会議、鉛蓄電池産業の現在・未来――詳報⑤

2025 SMM APAC鉛蓄電池産業会議(LABC2025、主催:SMM)が2025年12月4日〜5日の2日間、ベトナム・ホーチミン市で開催された。同会議には世界30カ国以上から約300名の鉛蓄電池産業の主要プレーヤーが参加し、ベトナムの主要企業に加えて、世界の鉱石サプライヤー、電池メーカー、エンドユーザーが集結した。会場では、原材料調達、サプライチェーン最適化、持続可能なリサイクルソリューションの構築など、業界が直面する多様な課題について活発な議論が行われた。

本稿では、5日に発表された2件の講演について紹介する。

SMM information & Technology Co., Ltd., Jianhua Ye, Industry Research GM : “The Logic of Global Lead Ingot Price Dynamics and Medium to Long Term Trend Predictions”

本会議を主催するSMMの産業研究部門ゼネラルマネージャーであるJianhua Ye氏は、世界の鉛市場が需給構造の変化を背景に調整局面に入りつつあり、中国の鉛価格も下押し圧力を受けて推移していると発表。精地金の地域別供給構成を見ると、アメリカやアフリカの比率が高まる一方、アジアは過去の急拡大を経て供給の伸びが鈍化している。消費面でも欧米やアフリカのシェアが持ち直す反面、アジアは相対的に低下しており、需給の重心は分散している。2025年の世界の鉛地金市場は供給超過が見込まれ、原料供給と消費動向に左右されつつも、価格の中心はやや切り下がる展開が想定される。

供給側では、2026~2028年にかけて世界の製錬能力の増設が進む一方、鉛地金や廃鉛蓄電池といった原料の逼迫がコストを押し上げてきた。もっとも、2026年には原料需給の緊張が一定程度緩和される見通しで、生産量と収益の相関が強まる可能性がある。中国と海外で在庫動向が分かれ、輸入窓口が開いた状態が続いたことも国内価格の上値を抑える要因となっている。

需要面では、中国の鉛蓄電池市場が転換点を迎えている。買い替え補助政策により一定の需要は喚起されたが、リチウムイオン電池による代替が加速し、新技術の台頭や規格・関税の変更が頻発する中で、主力用途の需要は頭打ちから縮小に向かっている。電動二輪や自動車、通信インフラといった分野で数量は維持されるものの、構成変化により鉛需要の伸びは限定的である。輸出は過去数年増加してきたが、価格差や為替、関税の影響を受け、2025年には減少に転じる可能性がある。

総じて、世界的な供給増と中国市場の需要成熟が重なり、中国の鉛価格は中期的に調整圧力を受けやすい環境にある。Ye氏は、原料制約の緩和や在庫調整の進展が下支えとなる場面はあっても、構造的な需要拡大が見込みにくい中では価格は緩やかな低位安定を模索する局面が続くと発表を締め括った。

Công Ty Cổ Phần Kim Loại Màu Bắc Bộ , Liqiang Zou :”The Global Development Path of Vietnam's Secondary Lead Industry Chain”

ベトナムに拠点を置く再生鉛メーカーのCông Ty Cổ Phần Kim Loại Màu Bắc Bộ に所属するLiqiang Zou氏は発、ベトナムでは現在、二次鉛産業がグリーン循環型経済の重点分野として位置づけられ、制度面と技術面の両輪で産業高度化が進められていると述べた。政府は再生可能資源の回収・利用に関する中長期計画を通じて、2030年までに二次鉛の回収率を85%以上に引き上げる目標を掲げ、税制優遇などにより外資の呼び込みを進めている。また、日越関係が包括的戦略パートナーシップへと格上げされたことで、日本からの環境技術移転や電池リサイクル基準策定への協力も活発化し、国際的な知見が産業チェーンに流入している。一方で、環境認可の手続きの遅さや付加価値税還付の煩雑さなど制度的課題が残り、設備稼働率の向上を制約している。

ベトナムでは鉛のリサイクル工程では小規模事業者が分散して存在し、回収率は約75%に留まっている。また、違法解体による汚染も深刻であり、日本などで実績のある密閉型破砕・選別技術の導入が急務となっている。製錬工程は上位企業への集約が進むものの、設備の老朽化によりエネルギー効率は国際水準を下回る。これに対し、外資との合弁を通じた新製錬技術の導入が進み、消費エネルギー削減が期待されている。用途面では鉛蓄電池が依然として需要の大半を占めるが、将来的な電動化目標との乖離は大きく、新技術の導入が不可避である。

電動二輪市場の急成長は、二次鉛需要を下支えする重要な要因となっている。価格競争力を背景に鉛蓄電池が主流となり、交換需要も拡大している。加えて、国際的には欧州の新電池規制による回収率引き上げ要請や、中国の政策によるスクラップ鉛の循環構造変化が、ベトナムへの資源流入を後押ししている。地政学的要因を背景とした生産拠点の東南アジア移転、低い労務コスト、域内関税優遇も競争力の源泉である。

今後、ベトナムの二次鉛産業は供給と需要、技術水準、環境対応という三つの矛盾を抱えつつも、電動化による構造的需要変化を取り込みながら成長する余地がある。中国からの生産能力移転と現地生産のバランスを取りつつ、域内連携を強化できるかが持続的発展の鍵となる。Zou氏2030年には自給率の向上が見込まれ、東南アジア全体を視野に入れた鉛産業連携の動きも現実味を帯びてきていると発表を締め括った。

 

 

(IRuniverse Midori Fushimi)

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