リサイクル産業は、まだ歴史の浅い業界だ。
多くの人にとってリサイクルとは、「出たものを処理する仕事」であり、製造業のように価値を生み出す産業だという認識は、残念ながら強くない。
実際、この業界は長い間、
「集める」「分ける」「砕く」「燃やす」「埋める」
といった工程を担う“処理の現場”として社会を支えてきた。
社会に不可欠な存在でありながら、技術産業として正当に評価されてこなかったという現実がある。
しかし今、リサイクル産業は明確な転換点に立っている。
それは、処理の業界で終わるのか、それとも循環の業界へ進化できるのか という分岐点だ。
そして、その変化は自然には起きない。
変える意思を持ち、変える手段を使わなければならない。その手段こそが、AIである。
循環の産業とは、単に廃棄物を減らすことではない。資源を再び社会に戻し、安定的に供給する産業 だ。
そのために必要なのは、精神論やスローガンではない。
必要なのは、
現場に即した 設備投資
実効性のある 技術開発
それらを運用に落とし込む 仕組み
である。
国の公募を見れば分かるように、リサイクル分野には多くの研究開発や実証事業が用意されている。
それでもなお、
「リサイクルはアナログだ」
「ITや電子分野に比べて技術レベルが低い」
といった評価が残り続けている。
だが、それは現場を知らない人間の見方にすぎない。
リサイクルの現場では、人間の経験と判断が極めて重要な役割を果たしている。素材の見極め、異物の判断、状態変化への即応。これらはマニュアルだけで対応できるものではなく、長年の経験によって身についた職人芸である。
問題は、その価値が属人的なまま、記録も解析もされてこなかったという点にある。
誰が、どの条件で、どう判断し、その結果、どんな資源が、どれだけ回収できたのか。こうした情報は、ほとんど残されてこなかった。
だからこそ、
「経験はあるが説明できない」
「勘では分かるが再現できない」
という状態が当たり前になってしまった。
ここで、AIの役割がはっきりする。
AIは、人の仕事を奪う存在ではない。人間が積み重ねてきた判断を、トレーサビリティーとして記録し、解析し、再現可能にする道具 である。
作業履歴を残し、条件と結果の関係を解析することで、
なぜ今回は品質が良かったのか
なぜこの条件では歩留まりが落ちたのか
どこに改善余地があるのか
を説明できるようになる。
その結果、
回収できる資源の 質 は安定し、回収できる資源の 量 は増え、現場ごとのばらつきは減っていく。つまり、どんぶり勘定がなくなる。
これは、リサイクル産業が経験頼みの世界から、再現性を持った製造業へ進化すること を意味している。重要なのは、AIは万能ではないということだ。
現場があり、設備があり、技術がある。その上で、どうAIを使うかを現場自身が考える から意味がある。
リサイクルは、資源の製造現場である。原料が違うだけで、ものづくりと本質は同じだ。
だからこそ、「AIが現場を変える」のを待つのではなく、AIの力で、現場を変えにいこう。
後編では、
なぜこの変化がこれまで国の公募や実証事業でリサイクルの実証結果が実現してこなかったのか、そして 文章と給料だけが評価される構造 が、どのように産業の進化を止めてきたのかを、さらに掘り下げていく。
( 利祭来留夫)