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【インタビュー】Battery Summit登壇者:Yu Tack Kim氏に聞く「ABRの取り組みと今後の展望」

2026/03/04 12:11 FREE
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【インタビュー】Battery Summit登壇者:Yu Tack Kim氏に聞く「ABRの取り組みと今後の展望」

Tokyo Battery & Critical Materials Summit開催を前に、MIRUでは登壇者への事前インタビューを実施ししている。第四回である本報では、韓国に拠点を置くABR (Advanced Battery Recycle)のCEOを務めるYu Tack Kim氏にインタビュー。本インタビューではKim氏のこれまでの経歴や、ABRが取り組むバッテリーリサイクル事業のビジョン、さらに同社が今回のBattery Summitにどのような期待を寄せているのかについて、お話を伺った。

Q1. ご自身の紹介と、ABR設立の背景についてお聞かせください。

私の名前はYu Tack Kimで、2021年2月に設立したABRのCEOを務めています。ABRは環境に配慮したバッテリーリサイクル技術の世界的な普及と、大規模展開を加速させることを目的に設立しました。私たちの使命は単に技術を商業化することだけではなく、最もコスト効率が高く持続可能なバッテリーリサイクルソリューションを世界中で利用可能にすることです。

現在、多くの国がバッテリー製造施設やセルメーカーを抱えていますが、自国内でバッテリーリサイクルまで実施できる体制を整えている国はまだ限られています。バッテリー生産が世界的に拡大する中、この不均衡は経済面・環境面の双方でリスクを生む可能性があります。そのため、製造能力の拡大と並行して、リサイクルインフラの整備も進める必要があります。

ABRでは、バッテリーの製造とリサイクルを同一の国や地域内で完結させる「クローズドループ型システム」を提唱しています。これは資源依存の低減、環境負荷の削減、サプライチェーンの強靭化につながるもので、バッテリー産業における真のサーキュラリティ(循環型社会)を実現するために不可欠な考え方です。

私はこれまで、20年以上にわたりバッテリー研究に携わってきました。また、当社チームにはリチウムイオン電池や次世代電池分野で合計約100年に及ぶ経験があります。こうした専門知識を活かし、持続可能で環境負荷が低く、かつ経済的に成立するバッテリーリサイクルソリューションの世界展開を進めていきたいと考えています。

Q2. 今回のBattery Summitでは、どのようなテーマを発表される予定ですか。

今回のBattery Summitでは当社のダイレクトリサイクル技術の商業化ロードマップと、大規模導入に向けた戦略について紹介する予定です。

米国や欧州では、ダイレクトリサイクルは依然として研究室レベルやパイロットプログラムにとどまるケースが多いのが現状です。一方、ABRではすでに年間1,000~2,000トンの処理能力を持つ生産ラインを稼働させており、産業規模での導入が技術的・経済的に可能であることを実証しています。

当社独自のプロセスでは、有害な化学薬品や高温処理を必要としません。水ベースの処理と機械的分離技術を組み合わせることで、リサイクル工程でCO₂排出を増やすことなく材料回収を可能にしています。

これまで欧州や米国で発生した使用済みバッテリーの多くはアジアに輸送されて処理されてきましたが、その過程では輸送コストや追加的な炭素排出が発生していました。当社の技術は、発生地点でのリサイクルと再製造を可能にし、輸送コストを削減するとともにカーボンフットプリントの低減にも貢献します。

私たちは、このアプローチが持続可能なサプライチェーンを構築しようとするバッテリーメーカーにとって、最もコスト効率が高く環境負荷の少ないリサイクルソリューションの一つであると考えています。

Q3. バッテリーのダイレクトリサイクルは技術的に難しいとされています。ABRが商業化に自信を持つ理由は何でしょうか。

ダイレクトリサイクルが難しいとされる理由の一つは、処理対象となる材料の多様性にあります。多くの企業は使用済みバッテリーや混合スクラップなど、組成がばらばらな原料を処理しようとするため、プロセスが複雑になり、コストやスケールアップの課題が生じます。

ABRでは異なるアプローチを取っており、主にバッテリー製造工程で発生する製造スクラップを対象にしています。使用済みバッテリーと比べて組成が安定しており品質のばらつきが少なく、トレーサビリティも高いため、ダイレクトリサイクルに適した原料です。

このように原料を戦略的に限定することで、プロセス設計をシンプルにし、運用効率や製品品質の安定性を高めることができます。その結果、技術的な不確実性を低減し、パイロット段階から本格的な商業化へとスムーズに移行することが可能になります。

ダイレクトリサイクルのスケールアップは単なる技術力だけでなく、プロセス戦略の設計にも大きく左右されます。そこがABRの強みであり、他社との差別化ポイントでもあります。

Q4. 韓国や海外でのパートナーシップ戦略について教えてください。日本企業にはどのような役割を期待していますか。

韓国では現在、大手バッテリーメーカーと概念実証(PoC)を進めています。また、インドでもPoCプロジェクトを進めています。日本では、当社のダイレクトリサイクル技術に強い関心を示している複数の企業と協議を行っています。

さらに、日本での合弁会社設立も検討しています。今回のサミットでは当社技術を紹介するとともに、日本のバッテリーおよび材料メーカーとのさらなる協業の可能性を探りたいと考えています。

Q5. Tokyo Battery Summitに向けて、メッセージをお願いします。

バッテリー産業は現在、大きな転換点を迎えています。製造能力の拡大だけでは、長期的な競争力や持続可能性を確保することはできません。次の段階では、真の循環型エコシステムを構築することが求められています。

各国や各地域が、バッテリーの製造とリサイクルの両方を自国内で完結できる体制を整えることは、資源安全保障の強化やCO₂排出削減の観点からも重要です。

Tokyo Battery Summitでは商業規模で展開可能なダイレクトリサイクル技術を紹介するとともに、より持続可能で強靭かつコスト効率の高い世界のバッテリー産業の構築につながる戦略的パートナーシップを築けることを期待しています。

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(IRuniverse Midori Fushimi)

 

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