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【インタビュー】Battery Summit登壇者 Volodymyr (Vol) Berezhniy氏「ウクライナのレアアースを日本へ」―強靭なレアアース磁石サプライチェーンの構築に向けて

2026/02/17 10:50 FREE
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【インタビュー】Battery Summit登壇者 Volodymyr (Vol) Berezhniy氏「ウクライナのレアアースを日本へ」―強靭なレアアース磁石サプライチェーンの構築に向けて

Tokyo Battery & Critical Materials Summit開催まであと1か月。本シリーズでは登壇者への事前インタビューをお届けします。第1回は、K66プロジェクト創設者であるVolodymyr (Vol) Berezhniy氏です。本インタビューでは、同氏のこれまでの歩み、K66プロジェクト誕生の背景、そして日本が果たし得る重要な役割について伺いました。

Q1. まずはご自身のご経歴について教えてください。

私はVolodymyr (Vol) Berezhniy、通称Volです。ウクライナ出身で、現在は米国を拠点に活動しています。過去4年間は米国に在住しており、それ以前はヨーロッパ各地やシンガポールでも生活・仕事をしてきました。

ウクライナのハルキウ国立工科大学で学び、その後ハーバード・ビジネス・スクールに進学しました。これまでのキャリアは、投資、不動産テクノロジー、コンシューマー分野にわたります。これまでに複数の企業を立ち上げ、売却(エグジット)も経験してきました。また、家族が製造業に携わっていたことから、幼少期より産業オペレーションに触れる環境で育ちました。

私にとって重要なのは「より大きな使命」を持つことです。使命があるからこそ、情熱とエネルギーが生まれます。ハーバードで学んだ最も大きなことの一つは、「長期的に、大きく考える」という姿勢でした。それがK66構想(関連記事)にもつながっています。

Q2. レアアース・磁石分野に関わるようになったきっかけは何ですか?

米国滞在中、私は自身が立ち上げたベンチャープラットフォームを通じて、著名な起業家や投資家の方々と仕事をしてきました。その中にはレアアース分野で事業を展開するクライアントもおり、米国の大手企業を含む戦略的な産業対話の促進を支援してきました。

同時期に、米国とウクライナの間で重要鉱物に関する協力の動きが活発化していました。さらに、私自身の故郷周辺にレアアース鉱床が存在することも知っていました。

そして何より、戦時下でのウクライナの急速な技術革新が決定的なきっかけとなりました。

Q3. ウクライナを「ディフェンス・バレー(Defense Valley)」と表現されていますが、それはどういう意味ですか?

強い圧力下に置かれたウクライナは、ドローン、ロボティクス、電子戦分野において、非常にスピード感のあるイノベーション環境へと変化しました。業界関係者の中には、この急速な開発と反復のペースを「ディフェンス・バレー(Defense Valley)」と表現する人もいます。これは、技術改良のサイクルが極めて速いことを示しています。  生産規模については情報源によって差がありますが、『The Economist』の報道によれば、ウクライナは2024年に約150万機のドローンを生産したとされています。また、2025年にはさらに大幅な増産を目指し、約400万~500万機規模の生産目標が議論されていると報じられています。  私たちの取り組みにおいて重要なのは、このようなドローンおよびロボティクスの大規模生産が、高性能かつ信頼性の高い磁石に対する需要を大きく押し上げている点です。同時に、強靭でトレーサビリティの確保されたサプライチェーンの構築が、これまで以上に重要な課題となっています。

Q4. なぜ磁石がそれほど重要なのですか?

高性能NdFeB(ネオジム鉄ホウ素)磁石は、以下の用途に不可欠です。

  • ドローン
  • ロボティクス
  • EVモーター
  • 航空宇宙システム

これらの磁石は、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、ジスプロシウム(Dy)といった主要なレアアース原料に依存しており、さらに性能仕様を満たすためには高度なプロセス管理が不可欠です。

現在、これらの材料および完成磁石のグローバル・サプライチェーンは高度に集中しています。中国以外では、生産能力の再構築が進められている段階です。米国や欧州ではいくつかのプロジェクトがパイロット生産や初期出荷に到達していますが、高品質な磁石を本格的に量産するには、時間、顧客認証(クオリフィケーション)、そして厳格なプロセス管理が必要です。

磁石は、現在の防衛需要のみならず、将来の電動化やロボティクスの発展にとっても基盤となる重要技術です。この分野におけるサプライチェーンの脆弱性は、多くの国にとって戦略的課題となっています。

Q5. K66プロジェクトの構想について教えてください。

当プロジェクトは、原料アクセスから産業顧客向けの認証済み・トレーサブルなNdFeB磁石の供給に至るまで、強靭な同盟国中心のサプライチェーン構築を進めています。

私たちはこれを「分散型モデル」として構想しています。

  • 上流(Upstream):実現可能な範囲で、ウクライナにおける原料供給および産業パートナーシップの構築
  • 中流(Midstream):米国におけるパイロット生産および認証プロセスの実施。信頼できるパートナーと連携し、プロセス検証、仕様策定、QA/QC体制の構築を行います。
  • 下流(Downstream):欧州において、産業需要および物流に近接した立地での磁石製造のスケールアップを計画しています。

K66プロジェクトは米国で法人登録しており、最初の顧客ターゲットはウクライナ国内の産業需要に紐づいています。すでにウクライナの主要ドローンエンジンメーカー2社と初期段階の契約を締結しており、具体的な初期市場を確保しています。

Q6. これは主に防衛主導のプロジェクトなのでしょうか?

短期的な需要としては、ドローンやその他の高性能用途が含まれていますが、本プロジェクトの長期的な使命はそれよりもはるかに広範です。磁石は、EV(電気自動車)、ロボティクス、再生可能エネルギーシステム、さらには各種産業用途において不可欠な基幹部材です。

本プロジェクトの長期的な目的は、同盟国市場における先端製造業の将来を支える、安全で強靭なサプライチェーンを構築することにあります。

Q7. 日本にとって、このプロジェクトはどのような意味がありますか?

日本は私たちにとって極めて重要な存在です。

日本は、世界トップクラスの製造規律、品質管理体制、そして長期的なパートナーシップ文化を体現しています。これらの強みこそが、強靭で持続可能なサプライチェーンを構築するうえで不可欠な要素です。

参考までに申し上げますと、The Economist』は、欧州は主要な重要資源について日本に次いで高い輸入依存度にあると指摘しています。この事実は、供給源の多様化がいかに重要であるかを示しています。

日本が持つQA/QC(品質保証・品質管理)、プロセス制御、仕様策定、高度な設備技術、そして長期オフテイク契約の枠組みに関する専門性は、非常に大きな価値を持っています。特に長期オフテイク契約は、プロジェクトの資金調達を可能にし、事業をスケールさせるための基盤となる点で重要です。

さらに重要なポイントとして、安全性があります。レアアース事業では、自然起源放射性物質(NORM)が含まれる可能性があります。そのため、最初に適切な測定を行い、その結果に基づいて初期段階から法令遵守に沿った取り扱いおよび残渣管理の設計を行うことが極めて重要です。

Q8. 日本からの投資を期待していますか?

現時点での最優先事項は、投資そのものではなく、対話とパートナーシップの構築です。

日本企業の皆様にとって、最もレバレッジの高い参入方法は、まず技術面および商業面でのアライメントを図ることだと考えています。具体的には、製品仕様のすり合わせ、QA/QC(品質保証・品質管理)、認証・評価プロセス、そしてオフテイク(長期購入枠組み)の設計などです。

性能や品質を段階的に検証し、信頼関係を積み重ねていくことで、将来的に投資の議論は自然な流れとして生まれてくると考えています。

現在、私たちはパイロット認証およびパートナーシップ実行を推進するための小規模な戦略ラウンドを進めておりますが、これはあくまで事業基盤を強化するためのものです。

Q9. 東京サミットに向けてメッセージをお願いします。

現在、グローバル・サプライチェーンは再編の局面にあります。レアアース磁石は、電動化、ロボティクス、そして先端産業を支える不可欠な基盤技術です。

ウクライナは、資源ポテンシャルと急速に拡大する産業需要について公に議論を進めています。米国は技術的・金融的インフラを提供し、欧州は生産拠点としての地理的近接性を有しています。そして日本は、卓越した製造技術と高い信頼性を備えています。

これらの強みを結集することができれば、多様化され、強靭で、高い産業基準に適合したサプライチェーンを構築することが可能です。

私は、このビジョンについて東京バッテリー&クリティカルマテリアルズ・サミットにおいて、さらに議論できることを楽しみにしています。

基調講演について: Day 1 -3月17日

Vol氏は基調講演において、日本、米国、欧州、ウクライナを横断する強靭なレアアース磁石サプライチェーン構築のための実践的フレームワークを提示する予定です。特に「信頼」「認証(Qualification)」「産業実装」を軸に議論を展開します。

主なテーマは以下の通りです:

  • ウクライナにおける公表済みレアアース資源ポテンシャルの全体像と、それが産業需要とどのように結びつくか
  • 国境を越えるサプライチェーンにおいて、「信頼」「認証」「QA/QC(品質保証・品質管理)」がリスクを低減し、事業化までの時間を短縮する仕組み
  • 日本が主導できる分野 — 製造規律、品質管理体制、仕様設計、プロセス管理、そしてプロジェクトをファイナンス可能かつ拡張可能にする長期オフテイク枠組み

※なお、プログラムおよび最終的な講演構成の確定に伴い、テーマ内容は若干変更される可能性があります。

(IRuniverse, Risa & YT)

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