1月15日付の外電によると、米国の電気自動車メーカーおよびクリーンエネルギー企業であるテスラ社が手掛ける電動セミトレイラーの「テスラ・セミ(Tesla Semi)」への期待が高まる中で、マサチューセッツ州に拠点を置く総合物流企業であるRoadOne IntermodaLogistics社が最近「テスラ・セミ」を購入、以前からあったテスラとの連携を強化するものと伝えられている。
テスラ・セミとフォード「F-Line E」の棲み分け
RoadOne IntermodaLogistics社に限らず、現在、全米で走行中のテスラ・セミの正確な台数は公表されていないが、業界専門誌によると昨年4月、ペプシコ、DHL、ウォルマートなどの顧客に約200台のセミが納入されたと報じられている。今後2026年は同モデルが大量生産されるにつれ、価格面も含めて大きな流れを起こすのは間違いないようだ。
欧州や中国の企業に若干出遅れている米国勢だが、フォードも「F-Line E」投入でこの市場に参入した。以下は筆者がまとめた2モデルの比較である。
電動セミトレーラーの仕様比較
| Tesla Semi (テスラ・セミ) | Ford F-Line E(Fライン E)
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| 許容総重量 | 32トン
| 19トン |
| 標準航続距離 | 約520km | 250-300㎞ |
| バッテリー | タブレス構造の新型4680 | ニッケルマンガンコバルト(NMC) |
| パワートレイン | 後車軸に3つの独立モーター | 後者軸にモーター(415hp) |
| 駆動出力 | 最大800kW | 290kW |
| 車両重量 | 約9トン | 7.9トン
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上記の表でも分かるように、フォードの「Fライン E」は、テスラ・セミと同じく大型の電動EVトラックだが、以下のような違いがあるようだ。
- 用途
航続距離が500㎞以上と「テスラ・セミ」の大陸横断的な「長距離幹線輸送」を目指しているのに対し、「FラインE」 は「地域配送」、自治体によるゴミ収集などの都市型というか近距離輸送に焦点を当てている。 - 主な市場
FラインEがトルコのFord Otosanが開発を行ったことから、ターゲットとする市場は欧州・中東であるのに対して、テスラ・セミはそのセンターシートの未来的デザインからしても北米がターゲットだ。 - 信頼性
既存のフォードの商用車ネットワーク(修理・保守)がそのまま使えるのが「FラインE」の最大のメリットであり、新興メーカーであるテスラへの不安を持つ保守的な運送会社からはフォードの方が支持されやすいだろう。 - 今すぐ使える
多くの運送会社が1日の走行距離は200km程度であるため、充電設備であるメガチャージャーネットワークの確立等のインフラ整備が追いつかない長距離用のSemiよりも「今すぐ導入できる現実的なEV」として欧州の物流業者から高く評価されているようである。
以上の様に、「FラインE」は、街の中や近隣都市を走る、働き者の大型電動トラックとして、欧州を中心に非常に堅実な評価を得ている一方、「テスラ・セミ」は国を横断するような長距離輸送を期待されており、両者はうまく住み分けが進んでいるかのような状態だ。
日本での導入を考えると、サイズや用途的に「FラインE」の方が、日本の都市部配送にはマッチしやすいかもしれない。もちろん、日本のトラックメーカーも鋭意、実戦配備にむけて開発を行っているが。
電動セミトレイラーの市場
本分野での世界的な主要企業であるダイムラー、ボルボ等は戦略的パートナーシップの確立、合併、買収等を通して主要的立場の維持に努めており、電動パワートレインや充電インフラ等の研究開発に多額の投資を行っており、製品のパフォーマンスと効率に努めている。
電動セミトレイラー市場は、環境への懸念の高まりや政府の規制、技術の進歩により、大幅な成長を遂げようとしています。市場は、2023年に十億米ドル(約1千5百50億円)と推定されており、2032年までに300億米ドル(約4兆5千5百億円)に成長するものと予想されている。市場の年平均成長率(CAGR)は約39.94%と予想されており、2024年から2032年までの成長が特に期待されているようである。
今後の見通し
市場の成長要因には、燃料費の上昇や厳格化された排出ガス規制が含まれ、政府の奨励金や補助金の提供も市場の成長を促進している。さらに、様々な問題を抱えながらも電動セミトレイラーへの自動運転技術の導入が間近に迫っている事実も市場の成長に寄与している。
今後においても持続可能なロジスティクスの実現に向けて、またバッテリー技術の進歩により、さらなる成長が期待される。
さらに、今後克服しないといけない大きな問題としては、大量生産の拡大、メガチャージャーネットワークの確立、そして何より価格を市場の期待に合わせることではないだろうか。
(IRuniverse H.Nagai)
世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。