2月13日16時、UACJは15時半に発表した25年度3Q決算を受けて、説明会を開催した。説明に使われた資料はこちら。

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⇒「非鉄各社26/3期の市況前提とのギャップについて(1/16):26/3期3Q以降の前提基準」
<サマリー>(資料2ページ)
今3Qは、当期理経が黒字となり、中間決算公表時に下方修正した通期見通しを上方修正する判断をした。
これは、銀価格の上昇や為替の動きなど外部環境の追い風に加えて、今年度から取り組んでいる事業再生政策の成果が着実に積み上がったことの反映。今期計画していた不採算事業からの撤退は完了し、今期の上期に発生した鉛銀精錬における操業不調も改善している。短期間に複数の改善が重なり、事業基盤が一段と強化されつつある。
一方で、外部環境の変動に影響を受けやすい事業特性は、引き続き認識している。短期の追い風に依存しない収益基盤を作ることを明確に優先し、事業構造の見直し、現場主導の改善、安定操業の徹底、人材育成と組織力の効果を今後も揺るがずに進める。
今回の黒字化と上方修正を出発点と捉え、持続的に利益を生み続ける体質への転換をさらに前へ進めていく。
〇3Q概要
売上高901億円、EBITDA40億円、当期利益17億円となり、収益は着実に改善し、当期理経は黒字化した。為替と資源相場の持ち直しがお追い風となり、想定を上回るスピードで業績改善が進行。とりわけ、銀価格が歴史的な高水準だったことが寄与した。
3Q単体では、売上高363億円、EBITDA39億円、当期利益31億円と回復し、資産売却による利益計上で事業再生にと伴う一時損失を打ち返した。
一方で、経営方針としては、短期の追い風に依存しない体質作りを重視する。
〇通期見通し
売上高1,230億円、EBITDA61億円、当期利益27億円へ上方修正。見直しの理由は、1つに銀相場、2つ目に全社変革の定着、3つ目に保有資産売却を含む再編し施策の顕在化。
一方で、特に足元の銀価格は大きく上下しているが、4Qの前提は銀64ドル、為替156円と保守的に計画。これに伴い、年間配当金見通しについても、前回から3円増額し、1株当たり45円に上方修正した。
〇27/3期以降
鉱石と2次原料の配合を機動的に調整する原料ミックスの最適化と販売プレミアムの見直しを継続し、今期に着手した施策の収益貢献を通期で取り組む。市況、為替の揺らぎを前提に、市況への依存度を下げ、再現性のある収益構造へ段階的に移行する。合わせて、安定操業、選択と集中、減価差額の減額管理を続ける。リスクは構造で吸収。TC/RCや市況変動のような外部要因は、原料補正、回収率、販売プレミアムの3点で平準化し、作り込んだ稼ぎ方を積み上げる運営を実施する。
〇その他
銀地金高騰による運転資金のぶれに備え、1月30日付で100億円のコミットラインと当座貸付けを新規締結した。既存額と合わせ、合計150億円の流動性を確保し、金属価格の変動にも落ち着いて対応できる構え。
また、東証プライムの上場維持基準である流通時価総額100億円については適合見込みと判断している。
<25年度3Q実績>
〇概要(同4ページ)
売上高では、廃炉の撤退、再編事業の減少により、973億円から901億円へ減収となったが、水色(ひらりの棒グラフ)の基盤成長事業では平均価格の上昇などにより164億円増収の824億円となった。
EBITDA、撤退、再編事業による減少に加えて、右下に記載の上半期までの操業不調やTC/RCの条件悪化、あるいは環境リサイクルの国内販売価格の下落や上期に発生した火災による減販などで減益ながら40億円、当期利益は亜鉛製錬の撤退に伴う減損がなくなった反動で17億円という結果になった。
事業別の変動要因はAppendix(同27ページ)に記載している。
図表1、25年度3Q実績(百万円)

出所:会社発表資料よりIRU作成
〇EBITDA(同5ページ)
今年度の四半期単体ごとの推移をEBITDAで説明する。図の上段、全社合計では、1Qの▲5億円の赤字から2Qで+5億円の黒字へ、さらに今3Q+39億円と大幅に改善した。
製錬では、1Qに発生した在庫評価損失が2Qの製品売却により縮小し、さらに3Qでは、1Qから2Qで対応中であった操業トラブルが解消したことによる増販や銀価格の上昇により+25億円となり、下の金属リサイクルでは、亜鉛撤退費用の軽減を主因に1Qにゼロに改善し、3Qでは亜鉛撤退に関する資産売却、こちら銀が含まれているということから価格上昇による恩恵を受けた。こういったことにより✛15億円と改善した。
〇四半期ごとの損益推移(6ページ)
EBITDAも当期利益ともにブレがあるが、当期利益では、特に23年度では資源による特別損失、24年度では亜鉛製錬の撤退に伴う減少により2期連続の赤字となった。今年度は、1Qでは当期利益は、製錬の操業トラブルなどにより赤字スタートではあったが、3Qではプラス31億円、大きく改善した。
〇資源価格の推移(同7ページ)
為替相場、ドル円相場は、前年度対比では円安傾向のやや横ばいという結果だった。同じく3Qの資源価格、この前年同期は、上段の鉛がドル建てで2,006ドルから1,971ドルとほぼ横ばいながら下落、円建て額はやや下落の30.4万円という結果だった。
下段の銀は、赤丸の通り、ドル建て、円建て価格ともに大幅に上昇した。銀価格の推移については、以降で、さらに詳しく説明する。
●金価格の推移(同8ページ)
24年1月からのドル建ての月次平均の価格推移を示している。昨年の6月以降徐々に上昇し、9月からは上げ幅が大きくなり、12月末には一旦下落したが、今年の1月29日には118.45ドルまで急上昇したのち、2月2日には81.98ドルまで下落し、現在もなお80ドル台もしくは70ドル台半ばで推移している。日中変動額も非常に大きく、将来の価格予想が極めて困難な状況となっている。
〇業績推移の想定(同9ページ)
上段の継続事業の環境はTC/RCの条件悪化や2次原料である素鉛の価格上昇が続き、2-3Qまでは、操業トラブルや火災などネガティブな要因と合わせて亜鉛製錬事業の財務処理費用が発生した。これに伴い、昨年11月に通期見通しを修正したが、3Q単体では、鉛・銀事業の操業安定化、製錬事業の操業安定化や、亜鉛製錬の被災、資産売却または銀価格の上昇による挽回のもと、事業政策の遂行による効果も引き続き見込んでおり、見通しを上方修正した。
<26/3期業績見通し>
〇26/3期の見通し(同11ページ)
3Qの進捗を踏まえた修正は、売上高1,230億円、EBITDA61億円、経常利益35億円、当期利益27億円。11月との公表差は右側の数値のとおりで、経常利益、当期利益で90%以上の改善を見込む。
図表2、26/3期業績見通し(百万円、円/株)

出所:会社発表資料よりIRU作成
〇事業利益分析(前回vs今回)(同12ページ)
市況要因として、主に銀価格の上昇と円安により+11億円。亜鉛製錬、金属リサイクル事業への再編に伴い売却する保有資産に含まれる銀の価格上昇による影響で14億円の増益があり、減益影響の▲5億円を打ち返し、結果として61億円と見込む。
〇資源価格及び為替の想定と感応度(同13ページ)
銀価格とドルレートを修正。銀価格については、先に説明した通り、過去にない値動きが継続していることから、12月平均の64ドルとした。感応度は、前回公表からの変更はない。また、為替の方も、円安をやや見込み、156円とした。鉛相場、銀相場の上昇は、同社にとっては上振れの要因となる。
〇資源価格上昇時のBS(バランスシート)影響(同14ページ)
銀などの金属価格上昇は、利益の上方修正の要因、同社の利益にプラスになるが、この時のバランスシートの影響としては、ページの真ん中、在庫の含み益に記載している通り、同社在庫の時価も上昇するので、評価益、いわゆる含みが発生する。ただし、この評価益は会計上認識されない。一方で、同社は、金属の価格変動リスクを抑制するため、原材料である鉱石などを購入したタイミングでヘッジ取引を行っている。こちらの方は在庫と逆の動きをするので、金属価格の上昇の時には評価損となり、かつ期末のバランスシートには繰延ヘッジ損失として会計上認識をされる。
このため、純資産の影響と記載の通り、在庫の含み益と相殺されるはずの含み繰延ヘッジ損失が先行して純資産の低下要因となる。一方で、在庫の評価益は多額に存在しているので、販売されるときに会計上、この評価益が利益として実現し、ヘッジ評価損と相殺されて純資産が回復することが見込まれる。
<27/3期以降の見通し>
〇再生計画の数値(同16ページ)
30/3期に経常利益74億円の達成を目指すとしており、今年度は、先述の通りだが、来年度については、為替、銀の変動を踏まえて、経常利益52億円以上達成するよう精査を進めている。
〇今後の変動要因(同17ページ)
今後の想定される変動要因ということで、基盤事業の鉛・銀においては、市況相場変動要因は予測困難なものの、金価格の水準は切り上がっているという状況。中国企業の旺盛な鉱石需要によりTC/RCが歴史的に低位な水準で推移しているが、ボラティリティが高いものの、希少金属や銀など貴金属の価格上昇の機を捉えた製品のベストミックスによる収益性向上に取り込むことによって収益構造を最適化することによって再生計画をやり遂げる。
〇事業再生計画の全体像(同18ページ)
計画期期間は5年、来年度は2年目となる。基盤成長事業の収益成長のために、全社レベルで取り組みを進め早期刈り取りを進めている。
●それぞれの事業の進捗について(同19ページ)
鉛は上期の生産不調から回復しており、2月の定期修繕で設備確認を行い、再発防止と安定的生産を続けていく。バッテリーなどの2次原料の比率を上げるなど、原料構成の最適化による収益性向上も目指しており、適切な販売プレミアムの設定などに取り組んでいる。
銀は、原材料鉱石のグローバルな需要は大きいものの、おおむね順調に確保、原料の確保は進んでおり、鉛及び銀ともに収益の柱として、製品は製造・販売の拡大に取り組み、基盤事業として安定的な収益基盤をさらに確立していく。
環境リサイクルでは、主力製品である酸化亜鉛原料コストの適正化や100%原料をリサイクル由来の製品として、ブランド向上による収益性向上に取り組む。
金属リサイクルでは、亜鉛製錬からの撤退は順調に進んでおり、溶融炉の導入については鋭意検討中。
電子部品は製品の値上げを順次進めており、機能材料では、販売チャンネルを増やしてマーケットへのアクセス拡大を取り組み中で、全体として収益拡大を目指す。
<その他>
〇運転資金について(同22ページ)
1月30日に公表した通り。銀価格の上昇により鉱石代金も上昇していることから、この運転枠の拡大というのを完了している。
表のとおり50億円から150億円へ100億円の増額に合意しており、安定的な事業運営に向けての資金枠を確保している。
〇プライム市場維持に向けて(同23ページ)
上場維持基準に関しては、25/3期末基準で流通株式時価総額100億円のプライム維持基準に抵触し、同社は改善期間入りとなっている。6月に公表した改善計画の通り、IR体制、また情報発信などの強化に取り組んでいる。
時価総額は、9月末時点の流通時価総額として80億円だが、26年に入り2月10日までの平均価格では資料下の通り197億円と適合している。今後も上場維持に向けてあらゆる施策に対応していく。
<参考>
図表3、四半期別業績推移(億円、%)

出所:会社発表資料よりIRU作成
(IRuniverse 井上 康)