取材に応じてくれたJAERAの阿部専務(左)と京野新達氏
経済産業省や環境省で議論が進む「自動車リサイクル資源回収インセンティブ制度」。国内自動車業界の資源循環確立に向けた大きな一歩とされる一方、様々な課題も指摘されている。日本自動車リサイクル機構(JAERA)の阿部知和専務に、制度への要望や違法業者対策などについてインタビューを行った。
――資源回収インセンティブ制度の開始に向けた課題は
一番の問題は「需要がまだない」こと。一生懸命、ASRから樹脂やガラスを回収しても買取価格が見合わない。採算が見えない以上、積極的に参入しようという事業者は少ない。特にプラスチックに関しては制度開始前から回収を実施している会社か、採算度外視で資源循環に取り組む会社に限られてしまう恐れがある。
欧州でELV指令(廃自動車指令)の見直しにより再生材利用の義務化が進み、日本の自動車メーカーも2029年頃から本格的に対応が進むと見られるが、それまでは需要の立ち上がりも緩やかだと思われる。制度は2026年4月から始まるが、当初の参加者は多くないとみている。
――制度設計上の課題も
現時点の想定では申請手続きや監査が非常に煩雑で、特に中小事業者には負担が重い。また、どれぐらいのプラ回収が見込めるかを示す「みなし重量」を計45台分提示する必要がある。大型乗用車と中小型車、軽自動車の区分で15 台ずつデータを取る必要があるため、会社によっては不足している車両をオークションで高額落札しなければならないケースも出てくる。中小規模の事業者にとってはかなり高いハードルといえる。
また、現在の仕組みではTHとARTの2チーム制を採用しているが、申請や報告、問い合わせをそれぞれに行わなければならず、実務負担が大きい。各チームでは料金の支払い方法も異なるため価格差が生じてしまう恐れもある。そのため、JAERAは国の審議会等で将来的には一元化を進めるべきだと要望している。競争原理を働かせるという当初の目的は達成されており、今後は効率化のほうが重要だと考える。
さらには、解体業者や破砕業者を束ね、申請や輸送、資金管理を担う管理会社が極めて少ないことも大きな問題といえる。商社の参入も期待しているが、現状ではリサイクル材単体で収益を上げるのは難しく、どの会社も手が出しにくい状況にある。
将来的には、リサイクル材を扱わないとビジネスができない時代が来ると思う。ただ、現段階では収益性が見えにくく、参入のインセンティブが弱い。管理会社が一定の収益やメリットを確保できる仕組みづくりが不可欠といえる。
「自動車リサイクル士」のノウハウ生かした違法業者対策を
――省庁主催の有識者会議では不適正事業者対策も議論されている
国内での適正処理を確保することが第一。現在、解体台数は減少傾向にあり、一部は輸出や不適正業者に流れている可能性が高い。JAERAでは解体業の許可要件に知識・技能を組み込み、資格制度を導入すべきだと以前から提案してきた。
当然のことだが、外国人の事業者だから問題というわけでなく、新規の事業者に適切な実務能力があるかを把握することが大前提となる。
JAERAが運営している自動車リサイクル士認定制度を知識・技能要件の土台として採用する案も多くの委員から支持されており、公益財団法人である自動車リサイクル促進センターが運営主体となり、国が認定する形で制度化する方針で議論が進んでいる。JAERAとしては、テキスト作成のサポートなどに努めていく考えだ。
また、いわゆる「非認定全部利用」や「装備変更」などを通じて、不透明な形で車両や部品が海外に流れている可能性がある。ただ、行政単独では調査や取り締まりが難しい場面もあるため、警察との連携も含めた体制構築を検討してもらいたい。税関でのX線検査を全国的に徹底することも必要だと考えている。
――その他、JAERAとして注力している取り組みは
ワイヤーハーネスの国内資源循環に取り組んでいる。現在、ナゲット処理後の銅の多くが中国に輸出されているが、銅は日本にとっても重要な戦略物資。国内で高純度に再資源化する仕組みを構築するため、精錬業者と連携してトライアルを実施しているところ。
回収方法や品質のばらつきなど課題はあったが、ようやく、こういう形式で統一していこうという方向性がまとまってきた。今年の4月以降に共同出荷事業として、本格展開を目指している。
(IRuniverse K.Kuribara)