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【市況】ステンレススクラップ:LMEニッケル反落でNi系の上げ期待しぼむ、インドネシア情勢が今後の鍵に

2026/02/20 15:36
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【市況】ステンレススクラップ:LMEニッケル反落でNi系の上げ期待しぼむ、インドネシア情勢が今後の鍵に

最近のステンレススクラップ市場は、乱高下するLME(ロンドン金属取引所)ニッケル相場に翻弄される展開となっている。Ni系(304系)は一時高まった値上げ期待が急速にしぼむ一方、Cr系(400系)は国内メーカーの荷受け制限により弱含みで推移している。仕入高・販売安の構造的な利益圧迫もあり、ヤードディーラーの経営環境は一段と厳しさを増している。

Ni系(304系):幻に終わった「5円上げ」、相場下落でメーカーは慎重姿勢に転じる

1月下旬、LMEニッケル相場がトン当たり19,000ドル前後まで上昇したことを受け、市場ではNi系ステンレススクラップの価格引き上げへの期待が大きく膨らんだ。国内ステンレス最大手の日本製鉄も、1月末の時点では304系スクラップの購入単価について「キロ当たり5~10円程度の引き上げが必要」との見方を示唆しており、市場は本格的な値上げ局面への突入を織り込み始めていた。

(最近3か月のlmeニッケル相場と304系スクラップ相場の推移)

 

こうした流れを受け、北関東の大手ステンレススクラップディーラーは2月12日、先陣を切る形で304系スクラップの買値を5円引き上げる旨をアナウンスした。しかし、時を同じくしてLMEニッケル相場が下落基調に転じたことで風向きは急変する。メーカー側は直前までの引き上げ姿勢から一転、相場下落を理由に「下げ」さえ示唆する状況となり、結果として大手ディーラーのフライング気味の値上げアナウンスにメーカーが追随することはなく、値上げは不発に終わった。

メーカー側の上げ示唆を信じ、強気の価格で集荷営業に励んでいたスクラップディーラーにとっては梯子を外された格好だ。ディーラー筋からは「なんとしても5円の上げを実現してもらいたい」と切実な声が漏れる。現在、304系スクラップの市中実勢価格はキロ当たり185~190円で推移しているが、ディーラー側は採算確保に向けてプラスアルファの価格転嫁を強く求めているのが実情だ。

輸出市場に目を向けると、動きは一進一退となっている。輸出大手の親和スチールは、主要向け先である韓国・浦項ポスコの炉修(高炉改修等)による影響を受け、出荷が伸び悩んでいる様子が見受けられる。一方で、同じく韓国のセバンスチールはCrスクラップに対してキロ当たり80円前後の強気の買い付け価格を提示している模様で、輸出先の事情によって引き合いに温度差が生じている。

インド向けは304、400系ともに買いは弱い。というよりもフレートコストが高いことで日本からの輸出はさほど積極的ではない様子。

 

【相場展望】インドネシアの供給制限が握るLMEニッケルの行方

ディーラーが切望する「スクラップ価格の引き上げ」を実現するためには、LMEニッケル相場が再び19,000ドル近辺まで回復することが絶対条件となる。

そもそも今回のニッケル相場上昇の起点は、世界最大の生産国であるインドネシアからの供給制限報道であった。同国政府による鉱業生産枠(RKAB)の承認遅延などが警戒され、先行きの供給不安から1月末にかけて相場が押し上げられた経緯がある。しかし、その後はパニック的な買いが一巡し、需給の実態を冷静に見極めるフェーズに入ったことで足元は反落を余儀なくされている。

今後の相場動向について市場関係者の間では、「インドネシアの供給不安が完全に払拭されたわけではなく、下値は限定的」との見方が大勢を占める。しかし、直近で19,000ドル台を再び明確に上抜けるには、追加的な供給制約のニュースや、中国を中心とする実需(ステンレス生産やEV向け電池需要)の持ち直しといった新たな買い材料が必要となる。当面はインドネシアの政策動向と中国の経済指標をにらみながら、上値を探る神経質なレンジ相場が続くと予想される。

Cr系(400系):国内メーカーの荷受け制限で弱気配、輸出は一進一退

一方、ニッケル相場と直接連動しないCr系(400系)スクラップ市場も、国内向けの需要が振るわない。日本冶金工業や大同特殊鋼といった主要メーカーが荷受け制限を実施している影響が大きく、市中実勢価格はキロ当たり60~65円(MIX品)で推移している。一部の流通段階では「荷余り感」を指摘する声も聞かれるが、Ni系と同様に市中からの発生量自体が低水準にとどまっているため、結果として全体の需給バランスは保たれているのが実態だ。

 

ディーラーの苦悩:「仕入れ高・販売安」で極小化するマージン

需要家の買い腰が定まらず、相場も方向感を欠くなか、集荷の最前線に立つヤードディーラーの疲弊は隠せない。関西地区の中堅ステンレススクラップディーラーは、「毎度のことではあるが、発生難で同業他社との集荷競争が激しく『仕入れ高』になる一方、メーカーへの『販売安』が響き、最終的な利益がキロ当たりわずか1~2円にとどまるケースもまま聞かれる。ヤードディーラーの経営は、かつてなく大変厳しい時代になった」と深い溜息をもらす。

発生減による集荷競争と利益率の低下という構造的課題に直面するスクラップディーラーにとって、ニッケル相場が再び上昇トレンドを描くまでは、じっと耐える時期が続くことになりそうだ。

 

(IRUNIVERSE YT)

 

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