トルコの鉄鋼業界は、新たな戦略調整の段階に入っている。世界的な価格下落圧力、貿易障壁の強化、遠隔市場での需要減速といった環境の中で、輸出企業は近隣地域への注力を強めると同時に、付加価値の高い製品への転換を進めている。
トルコ鉄鋼輸出者協会(ÇİB)によると、2025年の鉄鋼輸出量は1,943万トン、輸出額は165億ドルであった。輸出数量は増加した一方、平均輸出単価は1トン当たり851ドルにとどまり、世界的な価格低迷が続いていることを示している。単価が下落する中でも数量を伸ばした点は、厳しい国際環境への適応力を示すものである。
ÇİBのアドナン・アスラン会長は、この動きを一時的ではなく構造的な転換であると位置づける。「鉄鋼産業はますます地域化している。物流面で優位性があり、迅速な納入が可能な近隣市場に重点を置く」と述べた。また、中期的には高付加価値製品の比率を高めることが持続的成長の鍵になるとしている。
近隣市場戦略の中心は欧州
欧州は引き続きトルコ鉄鋼輸出の中核市場である。2025年のEU向け輸出は790万トン、EU域外の欧州向けは370万トンに達した。両者を合わせると、欧州はトルコ全体の輸出の約60%を占める。
2026年には欧州市場の回復が期待されている。EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)を巡る不透明感により、2025年前半は買い控えが見られた。しかし欧州委員会は、CBAMの移行期間が2025年末まで続き、実際の課金開始は2026年からであることを確認している。制度の詳細が明確になるにつれ、2026年第2四半期以降は受注環境の改善が見込まれる。
地域重視の戦略は、世界的な供給過剰という現実も反映している。OECDの報告によれば、2024年時点で世界の鉄鋼過剰生産能力は5億5,000万トンを超えている。過剰能力は輸出競争を激化させ、各国の保護措置を誘発している。トルコにとっては、遠隔市場を追うよりも近隣市場で安定的なシェアを確保する方が現実的である。
輸入増加と競争圧力
一方で、トルコ国内では輸入の増加も続いている。2025年の鉄鋼輸入量は1,890万トンと前年比8.6%増となり、過去最高を記録した。金額は微減したが、数量ベースでは大幅な増加である。主な供給国はロシアと中国である。
制裁の影響で欧州市場へのアクセスが制限されたロシア産スラブやビレットがトルコに流入している。また、中国は国内の過剰生産を背景に積極的な輸出価格を提示している。世界鉄鋼協会の統計によれば、2025年の中国の粗鋼生産は9億6,080万トンに達しており、国際価格の下押し圧力が続いている。
こうした環境はトルコ国内の生産構造にも影響を与えている。エネルギーコストの上昇により、スクラップを溶解する電炉メーカーよりも、輸入半製品を圧延するリロールメーカーの競争力が相対的に高まっている。
2026年の見通し:地域安定と構造転換
業界は2026年の輸出目標を2,000万トン、輸出額170億ドルと設定している。目標達成には、近隣市場でのさらなる深耕と、高付加価値製品への転換が不可欠である。
同時に、イスタンブールは国際的な業界対話の拠点としての役割を強めている。2026年10月25日から27日に開催予定のSteel Networking Summits 2026には、80カ国以上から500人超の業界関係者が参加する見込みである。市場動向だけでなく、政策や規制を含む広範な議論の場となることが期待されている。
トルコ鉄鋼業界の方向性は明確である。今後の成長は遠隔市場での数量拡大ではなく、近隣市場への集中と製品高度化によって実現される。地域的な近接性、物流の柔軟性、そして製品の付加価値向上が、長期的な競争力の基盤となるのである。
出典:トルコ鉄鋼輸出者協会(ÇİB)発表: https://www.cib.org.tr/tr/haberler-celikciler-yakin-pazarlara-odaklandi-ihracat-katma-degerli-urunlerle-buyuyecek.html
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ゴヌルタス メーメット
トルコ・イスタンブールを拠点とするフリーランスジャーナリスト。国際関係および外交を中心に執筆しており、特に日土関係、軍事問題、民主的ガバナンスを主なテーマとしている。趣味はランニング、語学学習、旅行。
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