アジアの合成樹脂市況は4月第3週に入り軟調な展開となった。米国・イランの和平交渉の進展に向けての市場の前のめりの期待から原油・ナフサ市況が下落、それに連れ樹脂原料のエチレンなどの市況が下落したことが背景にある。またアジア樹脂市況は原料高以上に加熱した市況水準にあったことも影響する。これに伴い、国内合成樹脂や石化製品の価格是正の動きへの影響は限定的であり依然、二次値上げが必要な状況にある。
アジア合成樹脂市況はマイルドな上昇から軟化へ
アジア合成樹脂市況は4月第2週に上昇ペースはマイルドとなり、第3週に入ると軟調な動きに転じている。米国とイランの一回目の直接交渉は不良に終わったが、その後の米国のホルムズ海峡の逆封鎖の効果による和平交渉への進展期待から原油価格が軟化し、樹脂市況が原料価格以上に上昇していたこともあり需要の減退による消化不良状態に陥ったことも背景にある。
4月第2週から3週にかけては、低密度ポリエチレンが2.5%前後の下落となり、ポリプロピレンが同1.5%前後の下落とオレフィン系樹脂が揃って下落。それでも4月初めの高値からは2%台の下落にとどまっており、今後の在庫調整の進展度合いにもよるが引き続き軟調な市況展開が続く可能性が高い。ポリスチレンの市況は4月第3週にかけて0.5%前後の下落となったが、4月初めの高値からは横ばいとオレフィン系樹脂よりは堅調な動きにあるが、今後は軟化基調が予想される。
こうした中で、塩ビ樹脂は前週比、高値比とも横ばいにある。アジア大手の台湾のFPCがエチレン調達難からインド向け輸出価格を提示できない状態にあり、中国のコストの安価な石炭法による製品の台頭による市場の混乱により強含みも横ばいとなる。また北米でシェールオイル・ガスから製造する信越化学のシンテックが能力増強を完了しており、米国の住宅市場の動向次第ではアジアへの輸出を増やす可能性もあり、今後の市況の変動要因となる点を考慮する必要がある。
(注) IRUではアジアの合成樹脂市況インデックスは、多様なグレード取引形態や地域で異なるため、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂の価格を2020年の年初の平均価格を100として指数化している。2020年12月までを毎月末近辺の市況を対象に指数化し、2021年以降は週間ベースの市況を対象に指数化している。新型コロナウイルスの蔓延の前と後での樹脂市況の違いを示すために基準時を2020年1月としている。なお、直近値は2026年4月第3週(4月17日まで)の市況となっています。
海外ナフサ市況は2週連続の下落で、樹脂市況を上回る下落に
合成樹脂の原料となる海外市況はオープンスペック市況が4月第2週に11週ぶりに前週比で下落に転じ、第3週には3月中旬以来のトン1,000ドル割れの990ドル前後となった。前週比では6%強の下落となり、4月初めのピークからは20%強の下落となっている。オレフィン系の樹脂に比べ下落率が大きく、アジアのポリオオレフィンの市況の過熱感が高かったとも言えよう。今後の樹脂原料の市況は原油市況の動向にもよるが、それも米国とイランの2回目の交渉の動向によるところが大きく予断を許さない状況である。原油市況がNY原油ベースでバレル85ドル程度まで下落したが、この水準を和平後の状況を前のめりで先取りした水準とすると、ナフサ市況は当面、軟調も大きくは下げそうにはない。
樹脂原料ベースでみるとエチレンのアジア市況は4月第2週から3週にかけ7%弱と大きく下げ、スチレンモノマーは1%の下落にとどまり、プロピレンは3%の上昇と需給動向により動きが異なる。市況の下落は低密度ポリエチレン、塩ビ樹脂の市況に影響している。スチレンモノマーはポリスチレンの市況に、プロピレンはポリプロピレンの市況に影響を与えるが、スチレンモノマーとプロピレンはモノマーの需給がエチレンに比べ堅調となる見通しから、今後のこれら樹脂市況もマイルドな動きとなる可能性が高い。
国内ではナフサ・エチレン調達の目途が立ち、目詰まり解消も市況は上昇継続となろう
国内のエチレンプラントは原料ナフサの調達難から定期修理に入っていたプラント(26年はほぼ半分が2~4年に一回の定期修理に入る年に当たる)の稼働延期や稼働ブラントでの稼働調整にあったが、政府の備蓄放出や中東以外からの調達拡大支援などで5月~6月のエチレンプラントの稼働維持が可能な状況になってきた。東ソーは定期修理に入っていた四日市のエチレンプラントの再稼働(従来は4月20日の予定)を4月末の再稼働を決定。三菱ケミカルと旭化成が共同運営する水島コンビナートは6月中旬までの稼働維持に目途が付き、今後も安定操業のための原料調達に注力する構えだ。一方、三菱ケミカルグループの鹿嶋コンビナートは5月から予定通りに定期修理に入るが、定期修理前に在庫を積み増す必要があるがその量はある程度は確保したとするが、製品により通常通りに確保できていない可能性もある。ナフサ不足による石化製品の目詰まり解消は綱渡りの状況が秋口までは続く可能性が高い。
国内合成樹脂市況は3月17日以降、原燃料高に伴う緊急価格是正の公表が相次ぎ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン(4月1日から)などのサーチャージ制に基づく値上げを皮切りに値上げの公表が多方面で日々相次いでいる。アジアの合成樹脂市況、ナフサやエチレンなどの石化基礎製品の市況は軟化しているが、これにより国内市況の値上げが打ち止めになることは無く、追加値上げの可能性が残る状況となろう。国産ナフサ価格は5月以降、キロリットル10万円台に上昇し、7月以降の海外ナフサ価格がトン1,000ドル、1ドル158.5円を前提にすると7月以降の国産ナフサ価格はキロリットル11万円台前半に上昇することになる。仮に海外ナフサがトン900ドル程度に下落したとしても円高にならない限り国産ナフサ価格はキロリットル10万円前後となり、これまでの値上げの前提となる国産ナフサ価格の推定値がキロリットル8.5万円程度からか高値での推移になる。
(出所) 実績値(実践)は貿易統計から、予想値(点線)はオープンスペックナフサ、円/ドルの日々の動きからIRUが算出した数値であり、実数値とは違いが生じる可能性があります。
(IRuniverse 叶 一真)