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(概況)
2月のニッケルスクラップ輸出は、LMEニッケル軟調による価格圧力が続く一方、ハイブリッド車向けニッケル水素電池需要やアジアの再資源化需要が下支えし、数量面では底堅さを維持した。市況安と実需堅調が併存する展開となっている。
為替相場推移 TTS 3か月
■財務省貿易統計によると、2月単月数量は849トンと、前月470トンから大幅増加し、前月比181%と急反発した。前年同月比でも170%と大きく上回り、1月の落ち込みから一転して高水準を回復した。
国別動向
韓国向けは59トンで、前月比169%と増加したが、前年同月比では45%にとどまった。
中国向けは39トンで、前月比126%と続伸。前年同月は実績ゼロで、足元では回復基調がみられる。
台湾向けはゼロとなり、1月の16トンから再び途絶えた。
タイ向けは359トンと最大仕向け地を維持し、前月比135%、前年同月比718%と突出した伸びを示した。全体増加の最大要因である。
マレーシア向けは74トンで、前月16トンから急増(前月比463%)。前年同月比でも264%と大幅増。
米国向けは223トンで、前月比378%と急回復。前年同月比164%と高水準で、タイ向けと並ぶ全体押し上げ要因となった。
英国向けは49トンで、前月比327%と増加したが、前年同月比では74%。
ドイツ向けは2トンで小幅再開。
フィリピン向けは1トンと限定的。
シンガポール向けは15トンで、1月ゼロから再開。
「その他」は28トンで、前月比85%とやや減少し、前年同月比34%。
総じて、2月はタイ・米国・マレーシア向けの急増が全体数量を押し上げ、1月の反動減をほぼ打ち消す回復月となった。仕向け先の分散も進み、年初としては強い立ち上がりと整理できる。
■1-2月累計数量では、1,319トンとなり、前年同期比151%と大幅増加した。前年を大きく上回るペースで推移している。
累計ベースでは、
・タイ向け624トン(前年同期比452%)が圧倒的主力。
・米国向け282トン(同130%)も高水準。
・韓国向け94トン(同61%)は前年割れ。
・中国向け70トン(同412%)は急回復。
・マレーシア向け90トン(同167%)と増勢。
・英国向け64トン(同42%)は低調。
このため、2026年序盤は従来の韓国・欧州偏重から、タイ・北米・ASEAN向け中心へと輸出構造がシフトしている点が最大の特徴といえる。
(表―1、グラフ―1)。


■数量構成比を月別に見ると、2026年1月から2月にかけて総数量そのものが470トンから849トンへ増加(前月比181%)する中で、仕向け地構成も大きく変化した。単なる構成比の変動ではなく、実数量ベースでも主要向け先の増減が鮮明となった。
1月は、タイ向けが265トンで全体の56%を占める圧倒的主力先となり、次いで米国向け59トン(13%)、韓国向け35トン(7%)、中国向け31トン(7%)、その他33トン(7%)が続いた。マレーシア向け16トン、英国向け15トン、台湾向け16トンなどは補完的な位置付けにとどまった。
2月は総数量が849トンへ急増する中、タイ向けは359トンと数量自体は増加(前月比135%)したものの、全体の伸び率に届かず、構成比は56%→42%へ低下した。主力先の座は維持したが、一極集中度はやや後退した。
これに対し、米国向けは59トン→223トン(前月比378%)と急増し、構成比も13%→26%へ上昇。2月全体増加の最大要因の一つとなり、第2位の仕向け地へ浮上した。
マレーシア向けも16トン→74トン(同463%)と大幅増となり、構成比は3%→9%へ拡大。英国向けも15トン→49トン(同327%)と増加し、欧州向けも持ち直した。中国向けは31トン→39トンと数量増ながら、全体増加に対して伸びが限定的で、構成比は7%→5%へ低下した。韓国向けは35トン→59トンと増加しつつ、構成比は7%で横ばい圏となった。
一方、台湾向けは16トンからゼロ、チリ向けも16トンからゼロとなり、スポット案件の剥落がうかがえる。その他も33トン→28トンと減少し、構成比は7%→3%へ低下した。
結果として、1月のタイ偏重型の構図から、2月はタイ向け数量も増えながら、米国・マレーシア・英国向けの急増がそれを上回り、仕向け先の分散が進んだ。足元では、タイ主軸は維持しつつも、北米・ASEAN向けの拡大によって輸出構造が多極化しつつある点が最大の特徴といえる。
(グラフ―2)。

■金額面では、2月単月は9億09百万円と、1月3億56百万円から大幅増加(前月比255%)となり、前年同月比でも161%と大きく前年水準を上回った。1月にみられた年初の落ち込みから一転し、2月は数量急増(470トン→849トン、前月比181%)を伴って金額面でも急回復する展開となった。
1-2月累計では12億65百万円となり、前年同期比129%と前年を上回って推移している。数量累計も1,319トン(前年同期比151%)へ増加しており、年初は単価よりも出荷数量主導で総額が押し上げられている構図がうかがえる。
2月の仕向け地別では、米国向け3億95百万円(前月比394%、前年同月比192%)が最大で、数量も59トン→223トンへ急増しており、当月全体増加の最大要因となった。単価水準も比較的高く、数量・金額の両面で存在感を強めた。
続いて、マレーシア向け95百万円(同291%、同8,796%)、タイ向け92百万円(同230%、前年同月比1,201%)、英国向け94百万円(同489%、同83%)が続いた。マレーシア、タイは数量増加がそのまま金額拡大につながった格好で、ASEAN向け需要の強さが目立つ。
韓国向けは83百万円(同170%、前年同月比64%)と前月比では増加、中国向けも39百万円(同135%)と堅調だった。一方、台湾向けは1月33百万円からゼロとなり、スポット案件の剥落がみられた。ドイツ向け4百万円、フィリピン向け3百万円、シンガポール向け19百万円は小口ながら再開した。
累計ベースでは、米国向け4億96百万円(前年同期比149%)が最大で、全体の中核市場としての地位を維持。次いで、その他1億39百万円(同136%)、タイ向け1億32百万円(同304%)、韓国向け1億31百万円(同78%)、マレーシア向け1億28百万円(同852%)となり、アジア向けの伸長が鮮明となっている。
総じて2月は、1月の弱含み局面から一転し、米国向け大型回復とASEAN向け増勢が全体金額を押し上げた月と整理できる。数量急増が主因であり、輸出構造は従来の米国偏重から、北米とアジアを両輪とする分散型へ移行しつつある。
(表―2、グラフ―3)。


■輸出FOB価格の推移(円建て、四捨五入)
2026年1月から2月にかけての輸出FOB価格(円建て)を見ると、総数量が470トンから849トンへ急増する中で、単価面も前月の調整局面から持ち直した。全体平均は758円→1,070円へ上昇し、前月比141%と反発した。1月は低単価のタイ向け案件比率上昇が平均を押し下げたが、2月は高単価仕向け地の増加が平均単価を押し上げた格好である。
国別では、韓国向けが1,384円→1,399円と高値圏を維持し、中国向けも934円→1,002円へ上昇。アジア向けの一部で単価持ち直しがみられた。タイ向けも150円→255円へ上昇したが、依然として主要仕向け地の中では低単価圏にとどまる。数量は265トン→359トンへ増えており、数量拡大を優先した価格設定が続いているとみられる。
1月に高単価で出現した台湾向け(2,056円)は2月ゼロとなった。一方、マレーシア向けは2,052円→1,290円へ大幅低下したが、数量は16トン→74トンへ急増しており、単価を引き下げて案件量を拡大した可能性が高い。
米国向けは1,701円→1,773円へ続伸し、数量も59トン→223トンへ急増。高単価かつ大口数量で、2月全体平均押し上げの最大要因となった。英国向けも1,277円→1,912円へ急反発し、数量も15トン→49トンへ増加しており、欧米向け採算案件の回復がうかがえる。ドイツ向けは新たに1,836円、フィリピン向けは3,249円と高単価ながら小口案件、シンガポール向けも1,288円で再開した。
なお、LMEニッケルは17,844ドル→17,133ドルへ反落した一方、日本円は2月にかけて1月比でやや円高方向へ振れた。それにもかかわらず円建てFOB平均が上昇していることから、為替要因以上に輸出品自体のドル建て価格上昇、あるいは高付加価値案件比率の上昇が強く作用したとみられる。
総じて2月は、LME調整・円高気味という外部環境下でも、米国・英国向け高単価案件の増加とタイ向け単価修正によって平均FOB価格が反発した月と整理できる。数量急増と単価上昇が同時進行しており、需給改善を映した力強い戻り局面といえる。
(グラフ―4)。

主要税関数量・FOB(JPY/Kg)実績 ( )内は前月実績
主要国別税関別数量・FOB(JPY/Kg)実績 ( )内は前月実績
■今後の展望(ニッケルスクラップ輸出)
・需要面:ニッケル水素電池向けが下支え要因
ニッケルスクラップの主要需要先の一つであるニッケル水素電池(NiMH)は、EV一辺倒の流れの中でもハイブリッド車(HEV)用途を中心に一定の需要が維持されている。世界のNiMH市場は今後も緩やかな成長見通しとされており、車載向け補修需要や新興国でのHEV需要がスクラップ需要の下支えとなる可能性が高い。(TechSci Research)
・数量面:輸出は電池向け再資源化需要次第で底堅い
日本発のニッケルスクラップ輸出は、ステンレス原料向けに加え、電池材料リサイクル用途の需要が増す局面では数量が持ち直しやすい。とくに韓国・中国・東南アジアでは二次電池材料サプライチェーンが集積しており、日本産高品位スクラップへの需要は継続しやすい。単月ベースでは仕向け地構成の変動が大きいが、基調としては底堅い推移が想定される。
・価格面:LMEニッケル安とプレミアム需要の綱引き
世界ニッケル市場はインドネシア増産を背景に供給過剰が続くとの見方が強く、LMEニッケル価格には上値抑制圧力が残る。これによりスクラップ輸出FOB価格もベースメタル連動では伸びにくい。一方で、電池向けに求められる高ニッケル・低不純物スクラップは選別プレミアムが付きやすく、品位格差による二極化が進む可能性がある。(Reuters)
・構造面:EVシフトよりHEV残存需要が鍵
EV向け主流電池ではLFP拡大により一次ニッケル需要は鈍化しているが、逆にHEV向けNiMHはトヨタ系を中心に粘着的需要が残る。このためニッケルスクラップ市場は「EV向け急成長」ではなく、「HEV向け安定需要+再資源化需要」で支えられる構図になりやすい。
・地域面:北米政策とアジアリサイクル網に注目
米国の自動車関税・サプライチェーン政策次第ではHEV生産地の再編が起こり、NiMH向け需要地も変動し得る。一方、韓国・中国・ASEANでは電池リサイクル能力増強が進めば、日本からのスクラップ受け入れ余地は拡大する可能性がある。
→総じて、ニッケルスクラップ輸出はLME市況だけでは測れず、ニッケル水素電池向け需要の持続性が重要な価格・数量決定要因となる。当面は「市況は軟調、実需は底堅い」というねじれた相場環境が続く公算が大きい。
(IRUNIVERSE S. Aoyama)